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耳を温める!?現代人の睡眠課題にアプローチしヒットした小林製薬「ナイトミン 耳ほぐタイム」の開発秘話

2022.09.18

Voicy連動企画DIMEヒット商品総研 vol.3「ナイトミン耳ほぐタイム」

「あったらいいなをカタチにする」でお馴染みの小林製薬から、2021年10月に睡眠領域の新商品が発売された。その名は「ナイトミン 耳ほぐタイム」。同製品はイヤホンのような形状をした耳栓で、およそ40℃の温度で約20分間、耳を温めてくれる。発売以来、出荷数量132万個を誇る大ヒット商品だ。

今回は同製品の開発担当者、小林製薬株式会社 日用品事業部 サーモ&ウェルネスケアカテゴリー マーケティングブランド管理グループ ブランドマネジャー 北口 淳(きたぐちあつし)さんに、開発に至った経緯や開発秘話、今後の展望についてお話を伺った。

*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

「ナイトミン耳ほぐタイム」は〝耳を温める耳栓〟

「ナイトミン 耳ほぐタイム」は、本体とイヤーピース(SとMの二種類)、1円玉サイズほどの小型発熱体5回分がセットになっている。利用シーンについて、北口さんは次のように話す。

「主に寝る前に使用していただくことを想定しておりまして、温かい耳栓が耳を温め、寝る前に安らぎを与えてくれます。感覚としては、お腹がいっぱいで体が温かくぼーっと眠たい時、美容室でホットタオルを首の後ろに置いてもらった時のような気持ち良さが近しいかもしれません。ストレスとか心配性で色々と考えてしまったり、仕事でプレッシャーを感じたりしている方、もしくは寝付く際に周囲の音などが気になり寝付きが悪い方におすすめの商品です。世の中に耳栓はたくさんありますが、温めるという点においては、当社の商品が初めてかなと思います」(北口さん)。

開発のきっかけは現代人が抱える睡眠に関する課題

開発のきっかけは、日本人の多くが抱える睡眠課題を解決することにあったと、北口さんは次のように続ける。

「2017年に同ブランドの『ナイトミン 鼻呼吸テープ』を発売し、それがヒットしていたのが大元にあります。チームができ、会社として睡眠領域の商品開発に取り組んでいきました。当時の調査では、男性は3人に2人、女性は4人に3人が睡眠のプロブレムを抱えており、そのターゲットのボリュームも大きいことから、睡眠市場にも成長性を感じていたんです」(北口さん)。

会議中の何気ない会話から「耳を温める」ことに着想

では、なぜ「耳を温める」という発想に至ったのだろうか。その経緯は、アイデア会議における何気ない会話がきっかけだったという。

「医師や有識者へのヒアリングを重ねていく中で、睡眠にとって副交感神経が深く関わっていること、そして体の中でも耳には多くの副交感神経が存在していることを知り、まず耳に着目しました。その後、アイデア会議の中で『赤ちゃんは眠たい時、耳まで温かくなっているよね』という日常生活の話が出て、そこから〝耳を温める〟というアイデアに着想したんです」(北口さん)。

社長プレゼンが製品開発の第一関門

世の中にない商品を市場に出し、それを拡げていくビジネスモデルを取る同社では、まず社長へのプレゼンを突破することが第一関門になっているという。

「当社ではまず、社長へアイデアをプレゼンし、開発を進めて良いか承認をもらう必要があります。面白いアイデアが好まれるところもありつつ、本当に世の中に対して寄与できる商品かという視点も社長は持っているので、そこを越えるのも難しい部分の一つでした。現在の仕様は『打錠カイロ』という発熱体を使っていますが、最初のアイデアプレゼン時はレンジでチンをする仕様で、持続時間も5分と非常に短かったんです。手間な割に持続時間が短いという点で、社長の決裁取れずにいました」(北口さん)。

その後、3回の社長プレゼンを経て、ようやく製品開発のスタートラインに立った北口さんのチームは、まずコスト面での壁に悩まされる。手に取りやすい価格で販売するために、何度も試行錯誤を繰り返したそうだ。

「開発当初、社長から『お客様が手に取りやすい価格に設定するように』と指示がありました。ただ、そこのハードルをクリアするのがなかなか難しく、製造工程や原材料の見直しを何回も繰り返しましたね」(北口さん)。

「40度で20分」の壁

さらに、耳にフィットするサイズに調整すること、適正な温度を維持する点にも並々ならぬ努力があったという。アンケート調査から、『人が寝付くまでの平均時間が約20分』と分かったことから、目標値をそこに定めたと北口さんは話す。

「耳全体ではなく耳の穴の手前『耳甲介腔』を温めるために、最終的に現在のサイズに落ち着きました。発熱体の約40℃の温度で約20分間というパフォーマンスを出せる打錠カイロにする部分が、特に難しかったですね。そもそもカイロは、水と鉄粉と酸素で発熱するんですが、大きさの問題から鉄粉量と水はそれ以上コントロールができません。そのため、イヤーピースの仕様とセットで問題解決を図ることにしたんです。イヤーピースの発熱体と酸素を供給する面を覆う部分、酸素の供給量を制限することで発熱が持続する工夫を施しています。開発の段階では温度、時間を担保するために0.1℃刻みで試し、ちょうど良い温度を探し出すために、たくさん試作を繰り返しました」(北口さん)。

発熱体(打錠カイロ)だけでなく、イヤーピースも現在の形に至るまで試行錯誤があったという。

「イヤーピースの開発も非常に難しく、発熱体を直接耳に触れさせるわけにはいなかいので、火傷しないように程よく熱が伝わるような形を模索しました。耳の形にフィットできること、そして痛くないこと、というようなさまざまなポイントがあり、イヤーピースの開発も苦労がありました。できるだけ多くの人に、平均的にフィットするような形状を試行錯誤する必要もありましたね。社員100名ほどの耳をメジャーで計測して、3Dプリンターや簡易の金型を作って、20回ほどの試作を行いました」(北口さん)。

また、「耳ほぐタイム」というネーミングにも、同社のこだわりが詰まっていると北口さんは話す。

「『ブルーレット』『熱さまシート』のように、これまで世の中になかったカテゴリーを生み出し、お客様の生活に定着させる必要があるので、ネーミングには非常にこだわっています。ポイントは、製品のコンセプトをわかりやすく、そして何のための製品かが聞いてすぐわかることです。『耳ほぐタイム』については、製品の仕様がある程度固まった段階で、パッケージデザインと共に考えました。はじめは、温かい耳栓とすぐわかるものにしたかったんですが、そうすると耳栓に対してネガティブな反応をする人を獲得できない点と、耳栓をあまり押し出しすぎると『温める』という新規性が伝わりにくいという理由から、耳栓の名前は避けました。社長も含めてみんなで試行錯誤をしながら、最終的に今のネーミングに決まったんです」(北口さん)。

発売以来、累計132万個を出荷の大ヒット商品へ

さまざまな壁を乗り越え、およそ4年もの期間を要して生まれた『ナイトミン 耳ほぐタイム』。30〜40代の女性を中心に話題を呼び、2021年10月の発売以来、2022年の7月末までで、出荷数量は本体と詰め替えを合わせて累計132万個に達した。

「想定していたよりも大きく売り上げており、SNS等での反響も大きく、睡眠に対する需要、関心の高さを改めて感じているとことです。耳栓を温めるという発想自体が世の中になかったので『試してみたい』とか『小林製薬らしくて面白い』と、お客様に興味を持っていただけたのかなと思っております。特に若い方は、就寝前にスマホを見るため、寝付きづらさを感じているようです。また、一部ではありますがSNSでチェックしてみると、低気圧などによる不調、ストレスを感じる際のリラックスで利用さている方もいらっしゃいますね」(北口さん)。

同製品を開発する過程では、チーム内で諦めムードが漂ったこともあったという。それでも、世の中に今までにない新しい製品を届けたいという強い想いから、製品化を成し遂げた。

「社長へのアイデアプレゼンの時、そして製品開発試作を重ねていく上でいくつも高い壁があり、一時はチーム内でも諦めムードもあったんです。ただ、この製品が世の中の『あったらいいな』に必ずなると思っておりましたので、チーム全体を鼓舞しながら進めてきました。使い古された言葉ですけど『諦めない』とか『できるまでやればできる』という精神が大事だと実感し、私含めチームとしても成長できた部分かなと考えております」(北口さん)。

睡眠トラブルの解決は社会課題の解決

発売から132万個以上出荷しているということもあり、社内の中でも〝異例のヒット〟として扱われているという。しかし、北口さんは「話題の商品」で終わらせず、「睡眠をサポートする商品としての定着」を目標にしていると話す。

「担当としては『話題の商品』ではなく、『安眠をサポートする商品』としてもっと認知を拡大していきたいと思っています。2021年の秋には、同ブランドから機能性表示食品の『ナイトミン眠る力』を発売しており、こちらも好調に販売できている状況です。また、昨今『昼寝』が推奨されていることもあり、『仮眠』の領域も一つ、睡眠という意味でターゲットにしていきたいと考えています。お客様の睡眠のトラブルは多岐にわたりますので、ナイトミンとしてできるアプローチで、良質な睡眠に繋がるような製品を今後も開発していきたいと考えています」(北口さん)。

「ナイトミン 耳ほぐタイム」公式サイト

取材・文/久我裕紀

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