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グローバル企業の担当者に聞いた、男性社員が育休を取りにくい社会を変えるヒント

2022.09.15

日本では、育児・介護休業法改正・施行により、男性社員が育休を取得しやすいよう、整備が行われた。一方で、現場ではまだまだ育休取得をためらう男性社員が多いともいわれる。

そこで今回は、グローバル企業のうち、先駆的な取り組みを行っている2社に、男性社員が育休を取りやすくするために、どのような取り組みを行っているのかを聞いた。

基本給80%保障の新有給育児休暇制度~ボルボ・カーズ

スウェーデン発の自動車メーカー、ボルボ・カーズは2021年4月から新有給育児休暇制度「ファミリーボンド・プログラム」を導入した。これは、全世界のすべての工場およびオフィスで働く4万人以上の、勤続1年以上の正社員を性別問わず対象とした制度。「ファミリーボンド」は「家族の絆」を意味する。

育休取得中は基本給の80%を上限額を設けずに保障し、合計24週間の休暇が当然の権利として与えられる。また子どもが生まれてからの3年間にいつでも6回まで分割して取得することが可能。

日本では、日本の育休業法を利用したうえで、さらにボルボの本制度も併用して利用することが可能になっている。

●制度制定の背景

同社がグローバルで新有給育児休暇制度を導入する目的や狙いについて、ボルボ・カー・ジャパン人事総務部 江藤美由季氏は次のように述べる。

「日本には、法律で定められた産休・育休制度があり、条件を満たせば社会保険から給付金が出ますが、世界にはそのような有給や育休制度がない国もあります。そのような中、この制度をグローバルで行うことの目的としては、女性・男性、養子をとった同性カップルなど多様な社員が、子どもを持つことによってキャリアを閉ざしてしまうのではなく、この制度を利用してさらなる活躍をしてもらうことで、社内の多様性が促進されるものと考えられるためです。

また、親が子どもと過ごす時間をより多く設けることで、子どもの健康へも良い影響を及ぼすといわれています。当社は常に家族志向で人間中心の会社です。ファミリーボンド・プログラムを通じて、多様で包括的な労働力が最高のイノベーションを推進し、業績を向上させ、ビジネスを強化すると信じています」

●育児休業取得率や社員の反応

今回の導入に先駆け、2019年からEMEA地域(ヨーロッパ、中近東、アフリカ)でパイロット制度を実施したという。その結果、地域全体で37人の従業員がこの制度を利用し、そのうち54%が母親で、46%が父親だった。

日本では、導入後約1年が経った今、男性1名、女性1名の合計2名が休暇を取得しているという。

「昨年より開始されたばかりなので、日本での取得率はまだ少ないです。また残念ながら、日本での社員の年齢構成が高いため、対象者が少なく取得率が低いのが現状です。

しかしファミリーボンド制度の説明会後の社員の反応はとても良く、特に最近では共働きの家庭も多いので、男性が長期に渡って育児休業を取得できる制度は画期的だという意見が多かったです。また会社全体で、休暇取得に対して理解が得られることで、若い世代の社員が気兼ねなく取得できるようになると思っています」

●育児休暇を取得しやすくするための、行動科学に基づくアプローチとは

ところで、同制度を実施するにあたり、育児休暇を取得しやすくするための「行動科学に基づくアプローチ」を取り入れているという。

「行動科学を応用して、組織全体に育児休暇制度を正しく伝え、従業員が与えられた育休を取得するように促す7つのアプローチを導入しました」

1.24週間の育児休暇を標準の選択肢として提示

行動科学上、デフォルト(初期値)に設定された選択肢が選ばれやすく、人は事前に提示された選択肢に固執する強い傾向があるため。

2.確実性を持たせることを重視

「~まで」や「~かもしれない」などの不確実さや曖昧さを含んだ言葉を使わない。人は確実性のあるメッセージと不確実性を含むメッセージを受け手は感情的に区別する。

3.育休取得は従業員たちの当然の権利であると提示

育休取得が必要だと感じる父親は少ないのが実情であるため、その必要性を認識させることが重要。

4.育休を取得した従業員の例を紹介し、従業員同士をつなげる

身近な人が育児休暇を取得していることを知れば、身近なこととして育児休暇を取得する可能性が高くなる。

5.メッセージを誰に届けるべきかを考慮し、適切なコミュニケーションを行う

上司や組織の意見も重要だが、従業員たちは仲間や同僚からも強い影響を受けるため。

6.育休取得のため、「いつ」「どこで」「どのように」という具体的な計画を早めに立てることをサポートする

人は計画が具体的であればあるほど、その通りに実行できる可能性が高くなる。

7.育休中に新しいスキルや価値観を学ぶ機会を大切にする

育児休暇は仕事上のアイデンティティーを脅かす可能性があるが、育児休暇を取得するのは「優秀な従業員」の証とする。

行動心理学のアプローチを取り入れた背景について。江藤氏は次のように述べる。

「行動経済学では、私たち人間が『デフォルト設定』に従う傾向が強くあることを証明しています。例えば『ファミリーボンドを利用することができる』ではなく、『ファミリーボンドを利用しないこともできる』とするのです。つまり『利用するのがスタンダードで取らない選択もすることができる』とするのです。実際にヨーロッパではこの行動科学に基づいたアプローチを取り入れ、ファミリーボンドの取得率が増えています。日本でも従来通りのやり方ではなく、様々なアプローチを取り入れ、取得率を高めていきたいと考えています」

●男性社員へ育休取得を促すためのポイント

男性社員に、育休取得を促すためには、どのようなコミュニケーションを心がけるといいだろうか。

「積極的にアピールし、女性だけでなく、男性社員も育児休業が取得できるということをお伝えしています。特に安心して取得いただくために、復職後も同じポジション、または同等のポジションに帰ってくることを保証している点を強調しています。

また日本の育休制度は少し複雑な制度なので、相談があればシミュレーションを作成し、会社を休む期間に取得できる給付金の説明や金額などを詳しく説明しています。また育児休業取得期間中、会社との接点がなくなり、不安を感じる社員もいるため、希望する場合は取得する前、取得中、復職前にそれぞれ面談を設け、不安を解消できるように心がけています」

男性育児休暇の取得率100%を実現~ロバート・ウォルターズ・ジャパン

ロバート・ウォルターズは、ロンドン発のグローバルな人材紹介会社。その日本オフィス、ロバート・ウォルターズ・ジャパンでは、男性育児休暇制度(パタニティリーブ)を制定。出産したパートナーがいる社員は、出産日から2ヶ月以内に1週間の有給休暇を取ることができる。法定の出生時育休制度とは異なる同社独自の制度だ。

●男性育児休暇の取得率100%の秘訣

この制度、取得率は100%という。その秘訣はどこにあるのか。同社の代表取締役社長ジェレミー・サンプソン氏に話を聞いた。

「パタニティリーブが、有給を取得するのと同様に、『当たり前』となる社風、雰囲気づくりを心がけています。例えば、管理職以上の男性社員が積極的に休暇を取得し、他の社員の先駆者的な存在となっています。わたしも子どもが産まれたときにはこの制度を積極的に活用しました」

●取得社員の声

実際に男性育児休暇を取得したマーケティングディレクター 柳沼茂樹氏は、次のように述べている。

「私には子どもが3人います。初めて男性育児休暇制度(パタニティリーブ)を使ったのは一番上の子が生まれたときでした」

「最終的にパタニティリーブの取得を申請する決定打になったのは、上司や同僚が『赤ちゃんが生まれるから、来週はきっとパタニティリーブだね』とパタニティリーブの活用を勧めてくれたこと。当たり前のことのように扱ってくれた会社と、その社風が取得を後押ししてくれました」

「3回とも子どもが生まれた日からパタニティリーブを取りました。母子の入院も産後5日ほどでしたので、1週間という日数も適当だと感じました。

もし1ヵ月、数ヵ月などの長期だったなら、業務調整などの準備に時間を要したり経済面の不安もあるなど、取りづらさを感じていたかもしれません。5営業日と比較的短いこと、無給ではなく有給なことも、懸念なく取得しやすい理由のひとつだと思います」

「一般的に2人目、3人目が生まれるときは、家のことや上の子どもたちのことも妻が入院中は全ておこなわなくてはなりません。休むことに対して周囲の協力が得られなければ、遠方や高齢でも両親・親族に頼るしかないのが一般的な核家族家庭の実情です。私の場合はパタニティリーブを活用できて、この点でも助かりました。」

●男性社員へ育休取得を促すためのポイント

男性社員に、育休取得を促すためには、どのようなコミュニケーションを心がけるといいだろうか。ロバート・ウォルターズ・ジャパンでは心がけていることとして、次の4つを挙げる。

1.認知拡大

「まずは制度の認知を広めることです。会社として、休暇の認知を促すために入社時に社員に配布する資料の中に制度についての詳細を入れたり、オフィス内やイントラネット上で制度をPRするポスターを掲示したりするなど、全員に制度の存在を認識してもらえるよう、周知に力を入れています」

2.取得が当たり前の環境づくり

「基本的に男性育休を取得しない従業員というのは、取得したくないのではなく、取得できない雰囲気や企業文化の中にいるのではないかと思います。先述の通り、当社ではパタニティリーブが当たり前のこととなるような会社の雰囲気づくり、社長をはじめ、管理職以上の男性社員が積極的に休暇を取得し、他の社員の先駆者的な存在となっています。そういう環境を作ることが大事だと考えています」

3.柔軟性

「休暇の長さも関係しているのではないかと思います。男性育休の目的は家族全員に対するケアだと考えていますので、すべての人が必ずしも続けて数か月間、必要なわけでもないと思います。家族によっては数か月間、毎週1日休んでほしいのかもしれませんし、最初の1週間続けて休んでほしいかもしれません。その家族に合った形の制度や、柔軟性を持たせることが大切かと思います」

4.勉強会の開催

「勉強会を開催し、社員一人ひとりが制度を身近に感じることができるようにしています。勉強会は資料だけでは足りない部分を補う役割を果たしているといえます。例えば、勉強会に参加し、より詳細な知識を得ることができたり、心配事を共有することにより、休暇取得対象者だけでなく、休暇の取得を予定していない人もパタニティリーブというものが、そこにある当たり前の制度であるとの認識が生まれています。そのことで双方がコミュニケーションを取りやすい環境を生み出し、取得につながっています」

男性が育休を積極的に取得することは、ただ母親側の負担が減り、子育てが促進されるだけでなく、さまざまな社会問題解決につながるといわれている。国の育休制度はもちろんのこと、企業独自の育休制度についても、今後、さらに増えていくだろう。

また、男性育休の浸透については、ちょっとしたコツがあるようだ。ぜひグローバル企業に学びたい。

取材・文/石原亜香利


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