コロナ禍で自炊の回数が増えたが、何か自分の料理は、ひと味足りない気がする。もちろん外食でプロが作るのとは、食材も調理器具も違うとはいえ、なにか今一つ、手放しで「美味しい」と言えない料理になってしまうのだ。
イマイチ決め手に欠けていたお家の味が、ワンランクアップするコツを教えてくれるのがYouTuberでフォロアー数30万人の「食事処さくら」さんだ。「ごはん作りが最短で上達する 魔法のコツレシピ」(KADOKAWA発刊、定価1400円+税)を発刊した。
今回は「食事処さくら」さんに、「やっぱり家で食べるのが一番」と言われるレシピについて教えてもらおう!
思い出深い結婚式のメニュー
――料理系YouTuberとして大人気の食事処さくらさん、最初に料理に興味を持ったきっかけについて教えてください。
さくらさん 本格的に料理人になりたいと思ったきっかけは『食戟のソーマ』という料理バトル漫画です!漫画の中の料理人達が料理に対してものすごく熱い想いを持っていて、料理人ってこんなに格好良いんだ!と読んですぐに影響されました。笑
祖父母が中華料理店を経営していた事もあり、料理人になろうと思う事に抵抗が無かったのも大きいです。
――プロの料理人として今までにたくさんの料理を提供されてきたと思いますが、思い出深い料理はありますか?
さくらさん 思い出深い料理はたくさんありますが、その中でも一番は自分の結婚式のメニューです。自分でメニューを考えて結婚式当日も厨房の仲間や先輩と一緒に仕込みをしてから結婚式に参加しました。その時のメニューの最後に真鯛で出汁を取ったお茶漬けを提供したのですが、それを目の前で幸せそうに食べてもらってる友人や恩師の顔が今でも忘れられません。
――素敵ですね!プロの料理人として、美味しい料理を提供されていたさくらさんが、なぜYouTuberになったのでしょうか?
さくらさん 「自炊をしたいけどよくわからない」こんな相談を友人から受けて、最初は本当に軽い気持ちで、友人などに料理のコツを教えるつもりで配信を始めました。
続けていくうちに友人以外も見てくれるようになり、だんだんと「料理の楽しさをもっと伝えたい」そんな風に気持ちが変わっていきました。
家庭料理の美味しさアップの3つのポイント
――家庭料理とお店の料理の違いについて教えてください。家でプロの味を再現したいのですが、どうしてもできません。やっぱり家庭料理とプロの料理は別モノなのでしょうか?
さくらさん 食材はそこまで大きく影響しないです(ステーキなどは別ですが)。一番は手間です。例えば鳥のもも肉を普段の料理で下処理をする事ってあまりないと思います。でも、お店の鳥もも肉の下処理にはすごく手間がかかっています。臭みを取り除く為に血合いや脂、筋や軟骨は食感が悪くなるので丁寧に取り除きます。
point1:手間をかける
どこまで料理に手間をかけるかが、お店と家庭料理の1番の違いだと思います。
なので、私のレシピでは「苦にならない程度のひと手間」を家庭料理にも取り入れて、それを魔法のコツとして紹介しています。
――なるほど!家の料理だと、「塩分控えめに」とか「なるべく低カロリーに」と身体を気遣って、思い切った味付けができません。健康に配慮していても、プロ並みに美味しい料理を作ることはできますか?
さくらさん 「塩分は多いから美味しい」とはなりません。
point2:家庭料理は3口食べてちょうどいい塩分に
人にはちょうど美味しいと思う塩分があるので、家庭料理では3口食べてちょうどいいと思う塩分を目指します。
それと、私はよく「うま味」という表現を動画でもよく使います。うま味は塩味や甘味と違ってどんな味がうま味なのか分かりにくいと思います。
point3:うま味があると美味しく感じる
うま味は食べた後に口に残る余韻の事です(ちょっと難しいですよね!感覚的にはコクがあるとか深みがあるに近いです)うま味がしっかりあると塩分が少なめでも美味しく感じます。
家庭料理では塩分とうま味のバランスが一番大事です。
分かりやすいのがお味噌汁です。お湯に味噌を溶いただけよりも、昆布や鰹のうま味が入った出汁に味噌を溶いた方が、味噌の分量が少ないのに美味しく感じます。
うま味を加える事は手間なので省きがちですが、家庭料理には大事なポイントなんです。
絶品卵スープとポテトサラダは試す価値アリ
――新刊「魔法のコツ レシピ」では、簡単なポイントをおさえることで、料理の味がぐんとアップするワザを紹介しています。今回は68品紹介していますが、この中で一番YouTube(Twitterなどでも)で反響のあったレシピを教えてください。
さくらさん 一番といえば卵スープですね。よくコメントでも「卵スープでさくらを知りました!」とか「生まれて初めて卵スープが綺麗に作れました!」など、嬉しいコメントたくさん頂いて、卵スープの人って覚えてもらってたりします。
――書籍化にあたって、すべてのレシピをもう一度見直されたと書いていました。見直して修正を加えたレシピはありますか?どの部分をどう変化させたか教えてください。
さくらさん 調味料の分量や材料、ガラッと作り方を変えたレシピは書籍化に合わせて動画も作り直しています。
一番ガラッと変えたのはポテトサラダです。
ポテトサラダのじゃがいもって一度火を通す必要があるんですが、その火の通し方を何通りもテストをして家庭で作る最高のポテサラができました。
私はレンチンしたじゃがいもってカスカスですごい苦手だったんです。でも、レンジを上手く活用したいと思って色々試行錯誤していくうちに余熱調理をすると甘味も出てホクホクになる事に気付いたんです。
お湯で茹でこぼすより楽チンで美味しいのでガラッと作り方を変えたんです。
食材ごとに炒めて最後に合わせると美味しくできる炒め物
――少しのコツなのに、ぐんと味がアップするとは、料理は本当に不思議ですね!最後に@DIMEの読者のみなさんにお薦めのレシピを一つ教えてください。
さくらさん 忙しい時こそ炒め物です!炒め物は慣れちゃえば手軽に作れて栄養バランスも良く、最高の家庭料理です!
具材は同じでもタレを変えたり、タレは同じでも具材を変えたり。調理の手順は一緒なので慣れちゃえば失敗する事もないです。
食材ごとに炒めて最後にフライパンで合わせるサラダの感覚で作ると気軽に作れると思いますよ!
――ありがとうございました!美味しい料理は幸せの近道。毎日の献立に役立てようと思います。
新刊書では、ひと味アップさせるコツがレシピとともにコラムで紹介されている。なぜ美味しくなるのか、その理由もきちんと解説されているので、家庭でも取り入れやすいのがポイント。「お家の料理が一番」としみじみ味わいながら食べる、幸せな時間をぜひ、体験して欲しい。
著者紹介
食事処さくら さん
グルメ漫画の主人公に憧れ、プロの料理人に。フレンチレストランなどで勤務した後、2021年に専業の料理YouTuberに転向。「美味しくてもみんなが作れないと意味がない」と、変わった材料や難しい技術を使わずに、いつもの家庭料理を美味しくするレシピを追究している。
文/柿川鮎子
編集/inox.