連載/ボディビル世界チャンピオン山岸秀匡の「筋!言」
山岸秀匡氏の「筋!言」は2021年12月に@DIMEに初登場してから、今回で9回目を迎える。これまで、ビジネスパーソンに気づきを与える言葉と、歴史上の偉人たちの名言を紹介してきた。
今回は趣向を変えて、ボディビル競技の審査員として帰国中の山岸氏へ、ビジネスに関するインタビューを試みた。
――今回の帰国はイベントへの参加が目的ですか?
山岸 渋谷で行われる総合フィットネスイベントのFWJ×FITNESS WORLD EXPO Vol.5に合わせて帰国しました。FWJ主催の世界最大級のフィットネスコンテストで審査員を務めるほか、プロデュースしているSTIMIRONの展示・販売も行っています。
私は大学2年の時にアルバイトをしていたジムで誘われ、アイアンマンプロを見学するツアーに参加して、初めて渡米しました。当時、日本ではジムに通う人はプロ選手など少数で、フィットネスという言葉すらあまり一般的でなかった時代でした。しかし、アメリカではごく普通のビジネスパーソンが、日常的にジムに通って身体を鍛えていました。今、日本もそうなってきています。
老若男女問わず、多くの方々が健康や美しいボディを目指して、フィットネスジムに通っていらっしゃいます。大会開催の資料ではフィットネスにおける日本市場は、約600万人、約5,000億円とも言われているそうで、大きなマーケットになっています。
オリジナルブランドも今年からスタート
――STIMIRONについて簡単に教えてください。
山岸 今年2022年、山岸秀匡のオリジナルブランドとしてスタートしました。ロゴマークは、信条にしている「無限/No Limits」の無限∞の形をモチーフにし、愛用してきたダンベルの形をイメージしています。STIMは和訳すると「刺激」、IRONは「鉄」で、最高の刺激を筋肉に与え、鋼鉄のような肉体を作り上げる。そんなフィットネスウェアにしたい、という思いを込めました。
素材や縫製などは、国内産にこだわりました。また、SDGs(持続可能な開発目標)を重視したブランドとするために、サスティナブル素材も積極的に活用して行きます。
――トッププロを育成する教育者としての一面とともに、実業家としても一歩を踏み出されましたが、ビジネスパーソンに仕事やマネジメントの極意を教えてください!
山岸 私のビジネスパーソンとしての経歴は、早稲田を卒業してサプリメントブランドのKENTAI(株式会社健康体力研究所)に入社した時の3年間だけです。
それも営業とは名ばかりで、トレーニング中心の生活で、3年後には渡米してしまいました。今思うと、とんでもない不良社員で(笑)、社長にも迷惑をかけてしまいましたが、でも、その時に教えてもらった社会人の基礎的なことは、アメリカでも活きていたと思います。
まずは自分で買って自分で試すところからスタート
山岸 アメリカでのボディビルダーの収入源は、優勝賞金と同時に、スポンサー契約です。私も米国トップのサプリメントメーカーと契約しましたが、最初は自分でそのメーカーの商品をお店で買って試しました。
もちろん、頼めば無料でくれたのかもしれないのですが、まずは自分のお金で商品を買って、お店の人にどんな商品かとか、どういった人が買っているのか、などをリアルに聞きました。それですごく評判が良かったので、契約の時にそのことを言ったら、ものすごく喜ばれたし、感動されました。
スポンサー契約なので、その会社や商品について知らなくても、お金は入ってくるわけですが、それでも私はその会社の商品を自分で買って、試して、体験することから始めたのです。そういう小さなところが、意外と大きなところに繋がる気がします。
マネジメントの極意や成功事例など「こうすれば営業に勝つ」的なことは、全然言えないのですが、自分でやってみる小さな一歩が意外と大事だと私は信じています。だから、実際にお店に行って買ってみるとか、使ってみるとか、そうした細かなことをおろそかにしないことが重要かもしれません。
売り上げが伸びないとか、社員が動いてくれないなど、文句を言ったり諦めたりする前に、自分でできる小さなことをやってみる。それが意外と大きなところへ到達する第一歩だったりするので、@DIMEのみなさんも頑張って欲しいと思います。
著者 山岸秀匡(ヤマギシヒデタダ)
1973年6月30日生まれ。北海道帯広市出身。早稲田大学で本格的にボディビルを始め、2002年にプロボディビルダーとなる。2007年からミスター・オリンピアに出場し、2015年には3位入賞。2016年、アーノルド・クラシック212で日本人初優勝を成し遂げた。
書籍紹介
定価: 1,540円(本体1,400円+税)
https://amzn.to/3EHUvOr
https://bit.ly/3vU0PiB
文/柿川鮎子
撮影/木村圭司
編集/inox.