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人気マンガ「アオアシ」対談企画!中村憲剛と小林有吾がサッカーの指導者や日本代表への思いを語り尽くす【後編】

2022.09.20

累計1500万部突破、第65回小学館漫画賞一般向け部門を受賞、日本サッカー界とも多くのコラボレーションを続ける“いまもっともアツいサッカー漫画”といえば『アオアシ』。 アニメもNHK Eテレにて毎週土曜日午後6時25分~で好評放送中だ。

今回はワールドカップを直前に控えた今、かねてより親交のある元・Jリーガー/日本代表の中村憲剛と『アオアシ』作者の小林有吾による対談が実現!

後編ではサッカーの指導者について、ワールドカップを目前に控えた日本代表に対する思いなどをお話いただきました!

※本インタビューは、週刊ビッグコミックスピリッツ39号(8月29日発売、発行/小学館)に掲載されたものを再編集したものとなります。

前編はコチラ

『アオアシ』とは?

サッカーJリーグのユースチームを舞台に、プロを目指す高校生たちの熱き姿を描いた人気コミック。

「世界へ、連れていってやる。」
愛媛に暮らす中学生・青井葦人(あおいアシト)は弱小サッカー部のエース。
中学最後の大会で負けた日、悔しさをぶつけるように海辺で走り込んでいたアシトは、試合を見ていた一人の男と出会う。
その男――福田達也は、Jリーグ有数のクラブ「東京シティ・エスペリオンFC」で、高校生年代を育成する組織「ユースチーム」の監督だった。
荒削りだが、ある特別な才能を持つアシトに無限の可能性を見出した福田は、自らの野望を語り始める。
「俺には野望がある。俺の作り上げたクラブで、世界を掌中に収める。世界への踏み台じゃない。我がクラブこそが世界だと。その野望のすべてを担うもの、育成<ユース>だ。」
福田の誘いを受け、入団試験<セレクション>を受けに上京することを決意するアシトだったが──挫折、成長、友情—青春の全てがここにある!

『アオアシ』
著:小林有吾
小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて連載中!既刊1~29巻 好評発売中!

公式HP:https://bigcomicbros.net/work/6196
公式Twitter:https://twitter.com/aoashiofficial
アニメ公式HPhttps://aoashi-pr.com
アニメ公式Twitter:https://twitter.com/aoashi_pr
https://www.shogakukan.co.jp/books/volume/43180

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ドラマとして漫画を描く

――小林先生の中で、漫画としての面白さとサッカーのリアリティーを追求する線引きやバランス意識ってどうなんですか

小林「サッカー漫画である前に、まず漫画として面白くなくてはならないと僕は思っています。サッカーを漫画で描くといっても、現実のサッカーのほうが面白いじゃないですか。僕は漫画家なので、やはり漫画を描かないといけない。そこが大前提ですね。漫画としてのサッカーがあって、そこにキャラクターやドラマがあって進行していくという考えです。単にサッカーシーンだけを描いて載せても、漫画としてそれを純粋に読める人が何人いるのかなっていう思いがあります。選手の心理状態を表すのがうまいと憲剛さんはおっしゃってくれたんですが、自分はピッチ上の心理状態を見ているのがものすごく好きなんですよ。戦術どうこうより、そっちのほうが想像力が掻き立てられる。ピッチって人間と人間のぶつかり合いだから、そこに本性が出るし、最高のスポーツだなって思います。そういう意味で、ドラマとして漫画を描くということを一番に考えています」

福田のような指導者になりたい

小林「憲剛さんが母校である東久留米高校サッカー部に教えにいくという動画(https://www.youtube.com/watch?v=r1APIfPJLhs)があるじゃないですか」

中村「行きましたね」

小林「あれを見たら、『これは絶対にうまくなる!』と思いました。熱量もあるし、言葉も巧みでした。あの後輩たちは幸せですね」

中村「あの企画はルヴァンカップのアンバサダーとして受けた仕事だったのですが、依頼されたみなさんも僕があそこまで本気でやるとは思っていなかったかもしれないですね(笑)。母校があまり成績が良くないのは知っていたので、事前に彼らの練習動画を見ていて伝えたいことを整理しておきました。戦術やシステムではなく、まず一人一人が個を磨くことにこだわるところから意識させないとダメだと思ったんです」

小林「見終わった後に気になったのは、憲剛さんの体は一つしかないじゃないですか。あの場で教えられた時間は2時間ぐらい。その後のことをどこまで考えて役割に徹していたのかな、というのが気になっているんです」

中村「あの2時間の中で、何か難しいことをやったわけじゃないんです。僕の最大の目的は彼らの「日常の基準」を変えるきっかけを作ることでした。自分が毎日行かなくても、生徒たちでこちらが提示した基準に向かって、もっとやろうぜ!という空気感を作ってあげたかった。そうなるための基準を彼らに残さないといけないと思ってやっていました。本気で強くなってほしいので」

小林「すごく真剣に聞いていましたよね。あの2時間で変えてやろうというのが彼らにも伝わったのだと思います」

中村「自分が適当だったら選手も適当な姿勢になると思います。あの日は本気で彼らの指導者になった気概で接していました。印象的だったのは僕が話している時の彼らの目の力が凄かったこと。ものすごい集中力でした。アオアシで福田監督が『お前ら、なんでプレー中にベンチを見るんだ?』と言うシーンがあるじゃないですか。でも監督としての引力はあれぐらいが理想なのかなと思っています。それぐらい選手たちから欲してもらえるような存在になりたい。だから僕は福田監督のような引力のある指導者を目指したいです。あの時に指導したのは、特殊なことではなく基本的なことです。パススピードやボールを操ること、体の向きや立ち位置…彼らの頭の中にそういうセンテンスが入っていくように伝えたつもりです。後日、監督に選手たちの様子を尋ねたら、今も目の色を変えてやっていると聞いて嬉しく思います」

小林「適当にやると憲剛さんが面白くないですよね」

中村「そうなんですよ。彼らの変化を見て、自分も楽しみたかった。そうじゃないと、自分が行く意味がないですから」

▲言葉で選手たちを「変化」させていく福田監督。

知らない世界を見せる

――日常の基準を変えるというのは成長のヒントになりそうです。

中村「基準が変わると、やっぱり変わるんです。それは育成年代もそうだし、川崎フロンターレも一緒でした。自分たちで『ボールは止まってます』、『パススピードは速いです』と思っている集団の基準を『いや、それじゃボールが止まってないよ?』とか『そのパススピードは遅いよ?』と指摘してあげて、『ボールが止まるとはこういうこと』、『パススピードが速いというのはこういうこと』と彼らの知らない世界を見せてあげること。あの短い時間でも、ボール回しやゲームで変わってきました。その基準を伝えることが大事ですね」

小林「憲剛さんがそれを言うなら導けますね」

中村「選手としてもJリーグでMVPをいただいて、チームもJリーグで優勝しました。結果がついてきたことで説得力が増しているし、自分も堂々と言えるんです。もちろんサッカー界の進化のスピードは速いので、僕も当時のことだけを伝えるのはすでに時代遅れだと思っています。でも、サッカーは足でボールを扱う以上、そこの技術を突き詰めていくのが本質なのは変わらないと僕は思っています。栗林がヒーローインタビューで『フィジカルという言葉は、テクニックのない人間の言い訳だと思っています』と言うシーンがあるじゃないですか」

小林「ありますね」

中村「そう思っていた自分にとって、あのセリフはしびれましたね。足でボールを操るスポーツなので、やっぱり自分の狙った場所に蹴れるかどうか。そこにこだわりを持つことから目を逸らしてはいけないと思っています。そこから目をそらして、戦術やシステムに傾くことはちょっと違うんじゃないかなという思いもあります。もちろん、そういう戦い方次第で勝つこともあるのがサッカーの面白さなのですが、選手として長くプレーをしたいのなら、技術は突き詰めないといけないんじゃないかと思っています」

二人にとってのW杯

――今年は11月にカタールW杯があります。お二人にとってW杯はどういったものか、聞かせてください。

中村「僕の小さい頃はテレビで観るものでした。86年のW杯のビデオテープを持っていて、マラドーナのプレーを擦り切れるぐらいまで見ましたから。その大会に自分が出場したというのは、不思議なものです。あの時のことは実体験として頭にも体にも残っているのですが、思い出すといまだにフワフワしています(笑)」

小林「僕もサッカーを観るようになったきっかけはW杯ですね。日本が勝つとこんな嬉しいことはないし、それを味わえる特別な大会。憲剛さんが2010年の南アフリカ大会に出た時の話を訊きたいのですが、あのピッチは特別でしたか?」

中村「言い方は難しいんですけど、サッカーはサッカーでした」

小林「…えっ、マジですか!?」

中村「極限まで集中した時はピッチで何をするか、そこしか頭にないんだなと思いました。自分はパラグアイ戦後半途中から出場しましたが、タッチラインをまたいで入る時も、緊張感や不安感は全くなくて、とにかくチームの勝利のことだけを考えて入りました。それこそ高校、大学、Jリーグでやってきたことと何も変わらなかったです」

小林「感慨深いとか感傷に浸る瞬間もなかったんですか?」

中村「ないです、ないです。そもそも南アフリカでは現場がかなりコントロールされていてお祭り感があまりなかったんですよ。試合当日のホテルからスタジアムに行くまでの導線でサポーターが賑わっているのを感じるぐらい。台風の目の中心にいる感じ…無風に近かったですね(笑)」

小林「へぇ―――」

中村「日本にいるほうがW杯の盛り上がりは感じられたかもしれないですね。日本だとニュースやワイドショーでも取り上げられますが、現地では日本の番組が観れないですから」

小林「それも貴重な話ですよね」

中村「一つあるとすれば、勝利後のロッカールームの爆発はとてつもなくすごかったこと。チームみんなで腹をくくって臨み、勝利を目指し全員で戦って掴み取った1勝で、あそこまで劇的に雰囲気が変わるのかと。そこまでのネガティブな雰囲気があの1勝で全部取っ払われてチームが飛躍的に上昇していったあの感覚はサッカー人生でもあの時だけ。そういう意味では、これがW杯なんだと思いましたね」

▲日本代表としては68試合に出場、6得点をあげている。
※写真:撮影/スタジオ・アウパ

まだ達成感はない

――サッカー選手のW杯に出場した達成感にちなんで訊いてみたいのですが、小林先生は自分の作品が大ヒットしていることの実感や達成感はあるんでしょうか?

中村「それは訊いてみたい。今のアオアシ現象を先生はどう捉えているんですか?」

小林「すごく可愛げのないことを言ってしまうと、まだ達成感はないんです。むしろ、こんなもんじゃないよなというのがあります。まだまだ全然足りないな、という思いです。アオアシだけではなくて漫画家のキャリアを考えた時に、まだ自分の想像の範疇のことなのかなと思っています。もちろん、アニメ化が決まったり素晴らしい賞をもらうと、とてもありがたい気持ちになります。だから、自分のやるべきことを積み上げたことが結果になって、『じゃあ、次』という感じなんですよね。自分の想像を超えるようなことが、もっともっと起こればいいと期待しています」

――毎週1話を描きあげることのプレッシャーもないんですか。

小林「もう300話ぐらい描いてきたので、そこには一喜一憂しないです(笑)。それに漫画は描き上げて完成ではなく読者が読んで完成だと思っています。読者の感想を得られて初めて描いてよかったと思えるものなので、1話1話を描き上げての達成感はないですね」

中村「フロンターレの選手が、試合に勝っても負けても一喜一憂しないとか、1試合にどれだけ質を求めるかを追求することと同じかもしれないですね。目指すところがあって、そこに向かって一歩一歩、自分で自分に妥協せずにやり続ける」

小林「だから、無感動なんですよ」

中村「逆に『やったー!』と小林先生に言われたら、アオアシがこれ以上は面白くならないかもしれない(笑)。もっとやらなきゃというのは、もっと面白くなるからですよね。サッカーも満足したら、それ以上は出ないんです。その瞬間は満足しても、次の練習からもっといいプレーができる、もっとやらなきゃと思えるかどうか。そうやって成長していくんですよね。先生の言葉を聞いてホッとしました。アオアシ、まだまだ行きますね(笑)。思えば僕も現役の時には、優勝すると、もう一回優勝したいと思う欲しがりでした。それはサッカー選手だけではなく、どんな職業でも一緒なんですね」

プライドは必要?

小林「選手の成長に関して訊いてみたいのですが、プライドの高さって関係すると思いますか?」

中村「関係あると思います。プライドはあっていいと思いますが、ありすぎるのは邪魔になると思います。たとえば日本代表だと、みんな勉強熱心で、吸収したいという個人事業主の集まりでした。『自分はこうだ!』という芯の部分は持っていていいと思いますが、それでいてしっかりと周りのアドバイスを受け入れ理解できるかどうか。そのアンテナがずば抜けて高い個の集まりが日本代表という場所でしたし、そうではないタイプの選手は淘汰されるし、人としての器が大きくないといられない場所だと僕は7年いて感じました」

小林「そもそも椅子が少ないですからね」

中村「代表にずっといる選手は、パーソナリティーが素晴らしいですし、成長もしていきます。実際に、性格のいい選手が多いですよ。阿久津のマインドも、初めのほうはダメでしたよね。ほかの人に目線が行って、自分がおろそかになると難しい。ただ彼も、周りではなく自分にフォーカスしたことでU-18日本代表で爪痕を残しました。市村いちむら監督もそんな阿久津を試合で使ったのがいいですよね。違う監督なら、もう呼ばれなかったかもしれないですから。やはり代表に行ったら、たくさんのことをもらって帰ってこれるんです。今後、もしアシトが代表に入ったらどんどん伸びていくと思いますよ。彼はスポンジみたいですから」

▲U-18日本代表監督・市村の言葉で迷いを振り切ることができた阿久津。

――ちなみに中村さんからアシトにアドバイスするとしたら何を伝えますか?

中村「なんだろう…『勉強はしよう』ですね(笑)」

小林「(笑)」

中村「きっとアシトはプロになるのだろうけど、あまりにもサッカーだけになるとちょっと困るかな。たとえば、言語化する作業は本人も少し苦労していますよね。頭を働かせる作業は日常的にやらないといけない。学業に触れて頭を回転させると、そこの引き出しも増えてくるので、そこそこで構わないので、勉強はしっかり励んでほしいかな。サッカー的なところは問題ないですよ。放っといても伸びておく素養があるタイプです」

日本代表へのメッセージ

――最後に。カタールW杯で、日本代表に期待したいところは?

小林「やっぱりW杯って1勝にかかる重みが大きすぎる大会ですよね。勝ったらサッカー人気が上がって子供たちはサッカーを始めて、Jリーグにも人が増える。でも惨敗してしまうと日本が弱いということを4年間は取り戻せずに過ごさなくてはいけない。今の日本代表は川崎フロンターレに所属していた選手が多いですし、ほかの選手よりも土台というか、しっかりしている部分がある気がするんですよね。感覚的なところですが、やってくれると思っています!」

中村「いまだかつてないクラスの強豪国とグループステージで同居してますからね。臆することなく日本の力を出し尽くしても、勝てるかどうかわからない相手ばかり。だからこそ、今持っているものを後悔のないように出し尽くしてほしいと思っています。今、やろうとしていることがどれだけできるのか。そして、どう勝つのか。その、『どう』の部分はこだわってほしい。そこをこだわって戦うことが日本の未来につながると思っています。そして、目標であるベスト8以上に勝ち進んでほしいです!」


中村憲剛プロフィール

元・Jリーガー/日本代表で、現在は日本サッカー協会ロールモデルコーチやテレビ解説、中央大学サッカー部テクニカルアドバイザーなど、幅広く活躍中。

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小林有吾プロフィール

愛媛出身。『HOUSE OF BLUE LIGHT』でデビュー。主な作品に『ショート・ピース』『フェルマーの料理』。『アオアシ』で第65回 小学館漫画賞一般向け部門受賞。

 

インタビュー・文/いしかわごう 写真/スタジオ・アウパ ©ケンプランニング


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