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賃金が伸び悩む時代に取り組むべき企業人事のあり方

2022.09.17

■連載/あるあるビジネス処方箋

 3回(その1その2その3)にわたり、ウエディングプロデュース・レストラン運営のノバレーゼの「奨学金返済支援制度」を取り上げた。その前は、3回連続(その1その2その3)で人材紹介会社・パーソルキャリアの副業を紹介した。

 これら6本の記事は、私としては共通した意味をもつと考えている。賃金が伸び悩む時代においての企業の人事のあり方として企業社会全体で考えるべき取り組み、と思えるのだ。低成長が続く現在において、大多数の企業がぶつかる賃金の問題に一石を投じる事例ではないだろうか、と読者に投げかけたい。

 日本の大企業、中堅、中小、ベンチャーは1990年代後半以降、正社員の賃金が現在に至るまで慢性的に伸び悩む。2度の石油危機に見舞われ、高度成長が終わった1970年代半ばから後半にいわゆる年功カーブは変わり始める。40代前半からカーブはしだいに折れ曲がり、40代後半~50代前半をピークに、その後は賃金が下がるようになった。

1991年にバブル経済が崩壊してから、40~50代の賃金を抑え込む傾向はさらに顕著になる。金融不況が深刻化した97~98年前後から成果主義の導入が本格化し、40~50代の賃金は一段と抑え込まれる。この頃、リストラも広がり、職を失う人が増えてきた。契約や派遣の社員も増加する。

ここが、問題なのだ。多くの日本企業は人件費を抑え込むことや社員を減らすことには力を注ぎ込む。それは、ある程度はやむを得ない。ところが、そこから先は具体的には考えない。例えば、高校や専門学校、短期大学、大学に通う子どもがいる親の世代、つまり、40~50代の賃金を抑制すると、その子はどうなるのか。リストラにして、収入源を奪えばどうなるか。学費や生活費は、誰がどのようにして捻出するのか。

こういうことを踏まえ、「奨学金返済支援制度」のような取り組みをしている企業は依然として少ない。シビアなとらえ方かもしれないが、1970年代よりも前の時代感覚で、つまり、賃金が定年退職まで一定のペースで上がる時代の意識のままの経営者や役員、管理職が多いのではないだろうか。ただ単に賃下げやリストラをするならば、無責任ではないかと思う。

中には、「今は実力主義。賃下げもリストラもやむを得ない」と言う経営者や学者、研究者、有識者がいる。私は、この主張は論点をすり替えていると思う。私が問いたいのは、次のことだ。

「高校や専門学校、短期大学、大学に通う子どもがいる親の世代、つまり、40~50代の賃金を抑制すると、その子はどうなるのか。リストラにして、収入源を奪えばどうなるか。学費や生活費は、誰がどのようにして捻出するのか」

「今は実力主義。賃下げもリストラもやむを得ない」では、回答になっていない。社員間で実力を競い合うことはもちろん必要で、場合によってはその敗者には賃金抑制や賃下げ、リストラ、解雇は必要かもしれない。大切なのは、そこに人を雇う側の順法意識や責任、モラルがあるのか否か、だ。怖いのは、日本のこの手の議論には欧米では当たり前のセーフティーネットの発想や意識がまったくないことだ。

40~50代の賃金を抑制しながらも、「奨学金返済支援制度」のような取り組みを設けることができないならば、せめて副業を認めるべきと私は思う。「奨学金返済支援はしない。副業はしてはならない。今の賃金のままで生活をするように」では、40~50代の社員は家族を養うことは困難になる可能性がある。奨学金を受給する学生が増えている背景の1つには、このような実態があると思われる。

新聞やテレビ、雑誌、ネットニュースなどのメディアにも、大いに問題はある。思い出したかのように奨学金返済支援制度や副業を報じることは時々しても、その背景にある賃金の慢性的な伸び悩みをきちんと扱わない場合が多い。前述の「今は実力主義。賃下げもリストラもやむを得ない」といった論調を無批判に受け入れ、報道している場合すらある。

今回、6回にわたり、2つの取り組みを紹介したのはメディアのあり方に私なりに疑問を呈する意味もあった。ノバレーゼの社員が、記事(その2)でこんなことを語っていた。

「(奨学金の)返済に苦しむ人が増えているのはその方だけでなく、社会や経済のあり方にも何らかの問題があるように思います。」

読者諸氏にもぜひ、考えてもらいたい。

文/吉田典史


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