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身体の不自由な人のために既製服をお直しするサービス「キヤスク」が目指す未来

2022.09.12

お直し依頼から服の受け取りまでオンライン完結!

「アダプティブウェア(Adaptive Wear)」という言葉をご存知だろうか?これは障がい者のニーズに応え、着脱しやすい機能を備えた新しいスタイルの衣服のこと。

ユナイテッドアローズやトミー・ヒルフィガーなどの大手もアダプティブアパレルブランドを立ち上げ、障がい者に寄り添ったウェアの開発に取り組んでいる。

以前@DIMEでも紹介した「男性でも気軽に穿けるスカート・ボトモール」も障がいの有無や性別に関わらず誰もが心躍るファッションとして誕生したもの。

少ない選択肢の中で生活していた日々から、可能性無限大の世界へ飛び出せる、そんな感覚を味わえる社会が徐々にやってきているのかもしれない。

800人以上の障がい者の声から生まれた日本初のサービス 

そんな中、2022年3月、身体の不自由な方に寄り添った新たなサービスが誕生した。「着たい服を着る日常を、すべての人に。」をスローガンに身体の不自由に合わせて「既製服のお直し」を気軽に依頼できる、日本初のオンラインサービス・キヤスクだ。

お直し依頼から服の受け取りまでオンライン完結。自宅にいながら理想の服が手に入るシステムが一番の特徴だ。

立ち上げたのは、あらゆる人を満足させる服作りをやりたいと心に秘めていた、元ユニクロ社員。彼の元に集まったお直しスタッフ12名のうち8名は障がいのあるお子さんを持つ親御さんたち。

それぞれが人生で得た経験と技術、そして想いを胸に他にはない一着を生み出し、多くの人に笑顔を届けている。

今回、キヤスク代表の前田哲平さん(47歳)にサービスを立ち上げたきっかけ、他社ではできないキヤスクならではのお直しメニューまで話を聞いた。

ーーキヤスクを立ち上げたきっかけから教えてください。

「すべての始まりはユニクロ在籍中だった2018年春、聴覚障がい者の同僚と知り合ったことがきっかけでした。障がい者の服事情を知るうちに少しでも役に立ちたいと思うようになったんです」

ーー障がい者の悩みや意見をヒヤリングし、参考にされたそうですね?

「800人を超える方々から悩みや苦労をお聞きしました。するとほとんどの方が普段着る服を『自分の好み』ではなく『着やすさ』を優先していたんです。つまり、服の選択肢が極端に少ないということ。身体が不自由というだけで好きな服を選べず、社会からも抜本的な解決策を示されないまま放置されている。それはあまりにも不公平だと感じ、既製服のお直しサービスを作ろうと決意しました」

身体の不自由な方、病気を患う方は、今まで「着られる服」から選んでいた。しかしそこに「着たい服」という新たな選択肢が追加されるだけで人生は大きく変わる。

前田さんが目指す未来は多くの人が待ち望んでいたものだった。

今年3月、サービスを始めるとたちまち話題となり、リピーターも急増。医療現場や特別支援学校からの問い合わせも増えているという。

そんな「キヤスク」の優れた技術とは?ここで、キヤスクならではのお直しメニューをご覧いただこう!

◆医療的ケアが必要な方、腕が曲がりにくい方のための「Tシャツの前開き」

よりスッキリ見せたい方におススメのお直し箇所が見えない仕様は料金1980円。

◆股関節や膝が曲がりにくい方などにおススメの「パンツの横開き」(3960円)

他にも、ウエストゴムを太くしたり、ファスナー位置を横に変更できるメニューもあり。

◆車椅子ユーザーなどにおススメの「パンツの褥瘡(床ずれ)対策」

座っている時間がとても長い方などにおススメのお直しは4400円。さらに股上を深くして座っているときに背中を見えにくくするお直しも!

一般的なお直しサービスでは簡単に受けてもらえないメニューがズラリ。どれもお手頃な料金ということもあり、オープンから5か月で50件以上の注文が舞い込み利用者が絶えないという。

お直しスタッフの半数以上は障がいのある子どもを育てる親御さん

お客さんのニーズに合わせ、約80種類のメニューを用意しているキヤスク。それらのメニューを形にしているのが12名のスタッフ。そのうち8名は障がいのある子どもを育てている。その人選について前田代表はこう語る。

「一般的ではないニーズを抱えたお客様にきちんと寄り添えるサービスにするためには、お客様の困りごとを具体的にイメージできる人に接客とお直しを担当していただくのが一番だと思いました。身体の不自由なご家族を支え、共に過ごしてきた実体験は困りごとをはっきりイメージできますし、キヤスクのスタッフにとても適していると考えています」

我が子に注いできた愛と同じぐらいの愛でお客様に寄り添う。さまざまな要望に応え、技術と心の両面で利用者の人生を支える。そこにはキヤスクの強さと優しさが溢れている。

利用者の日常生活を豊かにしてきたキヤスクには日々感謝の言葉が届いている。

「想像していた以上に子どもの着替えが楽になった。服の見た目も変わらないのが良い」(制服シャツのボタンのジッパー留めへの変更をご注文のお客様)

「半身麻痺になった親に、着てもらいたい服をプレゼントすることができて嬉しい」(Tシャツの前開きをご注文のお客様)

「健常児の長男に着せていた思い入れのある服が着やすくなって、障害児の次男にも着せてあげられることがとても嬉しい。出来上がりも丁寧で心がこもっていて、何だか新品を買うより嬉しい。温かい気持ちになりました。ありがとうございます」(パンツの横開きなどをご注文のお客様)

数年前、前田代表は大手企業の安定した収入を捨ててまでキヤスクを立ち上げた。当時の思いを「心から挑戦したいことがあるならそれに全力で挑戦する人生の方が絶対に豊かな人生になる。その気持ちが最終的に勝ったんです」と話してくれた。

今、キヤスクを運営する上で一番大切にしていることとは?

「お客様一人一人の困りごとを主役にすることを一番大切にしています。着やすさは人によって全く違うため、共通の着やすさを追求するのではなく、目の前のお客様にとっての着やすさを追求するサービスを目指しています」

そして未来、キヤスクが目指すものとは?

「目の前のお客様一人一人の要望にしっかりと応えながら、着実に実績と信頼を積み上げ、認知拡大・受注数増・サービス力向上に努める。その上で地域のニーズにより深く入り込んでいきたいですね」

「具体的には学校制服や体操服、もしくは入院着などを着やすくするお直しを定期的に受注できる仕組みを作っていきたい。また、地域のクリーニング店や移動スーパーなどと連携して、そこでお直しの受注と服の受け渡しをできるようにもしていきたいですね」

「キヤスクのサービスを世の中に普及させていくことで、身体の不自由の有無に関係無く、すべての人が平等に自分の着たい服を着て心豊かに毎日を過ごせる社会作りに貢献していきたいと思っています」

取材協力:
キヤスク
https://kiyasuku.com

文/太田ポーシャ

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