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存置すべきか、廃止すべきか?死刑制度に関する日本の現在地

2022.09.03

「死刑制度を存置すべきか、廃止すべきか」という論点は、長年にわたって刑事実務における一大テーマであり続けています。

死刑存置論者は犯罪抑止の観点から必要性を主張する一方で、死刑廃止論者は国家による不当な殺人だと糾弾し、両者の溝は深まるばかりです。

ご存知のとおり、日本では死刑制度が存置されていますが、諸外国では異なる様相を呈しています。

今回は、死刑制度に関する世界・日本の現在地を読み取るため、関連するデータや最高裁判例の立場などをまとめました。

1. 死刑制度に関する世界の状況

世界全体を見渡すと、死刑廃止の流れが死刑存置よりも優勢となっています。

死刑廃止国は存置国よりも圧倒的に多数であり、また国連でも死刑に反対する決議が採択されています。

1-1. 世界の死刑廃止国・存置国

アムネスティ・インターナショナルが集計したデータによると、2020年末時点での死刑廃止国・存置国の数は、以下のように分布しています。

すべての犯罪に対して廃止

(刑罰として死刑がない)

108か国

通常犯罪のみ廃止

(軍法化の犯罪や、特異な状況における犯罪のような例外的な犯罪にのみ、法律で死刑を規定)

8か国

事実上廃止

(法律上は死刑制度が存置されているが、過去10年間執行がなされておらず、死刑執行をしない政策・確立した慣例を持っていると思われる国)

28か国

存置

55か国

参考:死刑廃止国・存置国<2020年12月31日現在>|公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

1-2. 国連決議による死刑モラトリアムの採択

国際連合(国連)の総会では、これまで再三にわたり、死刑の執行停止(死刑モラトリアム)を呼びかける決議案が採択されています。

直近では2021年11月17日に、120加盟国の賛成によって、死刑モラトリアムに関する決議案が採択されました。その際、反対したのは39か国で、死刑制度を存置する日本は反対票を投じています。

2. 日本における死刑制度の状況

日本では絞首刑による死刑制度が存置されており、平均すると毎年数人の死刑が執行されている状況です。

最高裁も、絞首刑による死刑制度について合憲の判断を示しています。

2-1. 日本における死刑執行の状況

2012年から2021年までの年間死刑執行数は、以下のように推移しています。

 

年間死刑執行数

2012

7

2013

8

2014

3

2015

3

2016

3

2017

4

2018

15

2019

3

2020

0

2021

3

2012年~2021年(合計)

49

※検察統計統計表を基に作成

参考:検察統計統計表|法務省

2-2. 最高裁の死刑制度の合憲性に関する判断

最高裁は、死刑そのものおよび死刑の執行方法である絞首刑のいずれについても、日本国憲法36条で禁止されている「残虐な刑罰」に当たらず、合憲であるとの立場を堅持しています。

最高裁昭和23年3月12日判決の事案において、上告人は、死刑という刑罰そのものが「残虐な刑罰」に当たり違憲であるとの主張を展開しました。

これに対して、最高裁は以下の理由を挙げ、死刑そのものが直ちに残虐な刑罰に当たるのではないとして、上告人の主張を退けました。

・生命に対する国民の権利は最大の尊重を必要とするが、「公共の福祉に反しない限り」という厳格な枠をはめられている(日本国憲法13条)。
・法律の定める手続きによれば、生命を奪う刑罰を科すことができると憲法上明記されている(日本国憲法31条の反対解釈)。

ただし最高裁は、執行の方法等が人道上の見地から一般に残虐性を有すると認められる場合、「残虐な刑罰」として違憲になるとの見解を示しています。

残虐な刑罰の例として、最高裁は火あぶり・はりつけ・さらし首・釜ゆでの4つを挙げています。

また、最高裁昭和30年4月6日判決の事案では、上告人が、日本における死刑の執行方法とされている「絞首刑」について、「残虐な刑罰」に当たり違憲であると主張しました。

これに対して最高裁は、諸外国において採用している死刑執行方法(絞殺・惨殺・銃殺・電気殺・瓦斯殺など)に比べて、絞首刑が特に人道上残虐とは認められないとして、上告人の主張を退けました。

2-3. 最高裁が示す死刑選択の基準

最高裁昭和58年7月8日判決において、最高裁は死刑を「人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去る冷厳な極刑であり、誠にやむを得ない場合における窮極の刑罰である」として、その適用は慎重に行われるべき旨を指摘しています。

そのうえで、以下の情状を併せ考察したとき、その在籍が誠に重大であって、罪刑の均衡・一般予防のいずれの見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択が許されると判示しています。

・犯行の罪質、動機、態様(特に殺害の手段方法の執拗性、残虐性)
・結果の重大性(特に殺害された被害者の数)
・遺族の被害感情
・社会的影響
・犯人の年齢、前科、犯行後の情状等

2-4. 日本弁護士連合会の宣言・要請書

日本弁護士連合会は、一貫して死刑廃止を求める立場を堅持しています。

2016年10月7日には、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を公表しました。

参考:死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言|日本弁護士連合会

また最近では、2021年12月2日に、古川法務大臣(当時)に対して「死刑制度の廃止を求める要請書」を提出しています。

参考:死刑制度の廃止を求める要請書|日本弁護士連合会

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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