インテリアのネクストトレンド『JAPANDI style』の実例やポイントを徹底解説
『JAPANDI style』という言葉を聞いたことはありますか?
今、インテリアのネクストトレンドとして注目されているスタイルです。
今回は、この『JAPANDI style』を掘り下げてご紹介。元インテリアショップ店員の筆者がコーディネートのポイントや実例を徹底解説します。
『JAPANDI』(ジャパンディ)は海外発のインテリアスタイル!
『JAPANDI style』(以下、『ジャパンディスタイル』)は、2017年頃から海外でブームになっている新しいインテリアトレンドです。
「ジャパノルディック」や「スカンデニーズ」などと呼ばれることもあり、ジャパニーズスタイルと北欧スタイルどちらの特徴も兼ね備えたものです。Japanese(日本)とScandinavian(北欧)を組み合わせた造語で、シンプルかつ自然体で、洗練されたミニマルなデザインや機能美などに焦点が当てられています。
日本古来の和風なインテリアと、デンマーク・ノルウェー・スウェーデンなどに代表される北欧インテリアと聞くと、かけ離れたインテリアスタイルのように感じる人も多いかもしれません。しかし実は2つのスタイルは本質的な特徴がよく似ているんです!
【ジャパニーズインテリアの特徴】
- ミニマルでコンパクト
- 自然素材
- 機能性
- 余白を残す
- ロースタイル
- 伝統的な技法
- 規則性のあるデザイン
【北欧インテリアの特徴】
- シンプル
- 無垢材や自然素材
- 実用性
- 温かみ
- 明るい差し色
- 長く使える品質
- 自然モチーフのデザイン
何より共通のテーマになっているのは、自然との調和を大切にしたデザインや素材感を大切にしている点です。基本的にはどちらもごちゃごちゃとした華美すぎるデザインは好まず、暮らしのなかでの「心地よさ」や「快適さ」を重視したコーディネートをしています。
日本で和風インテリアというと古臭い印象を持たれてしまうことも多いですが、海外でジャパニーズスタイルというと洗練されたミニマルデザインや、伝統的で趣のある家具、品の良い暮らし、といったイメージが強いといいます。日本でいう「和モダン」のイメージに近いかもしれませんね。
ジャパンディスタイルは、そんな和モダンスタイルをベースに北欧インテリアの温かみやデザイン性を加えたようなイメージです。
海外で先行して流行しているジャパンディスタイルは、インスタグラムで「#japandistyle」と検索すると8.9万件の投稿がヒットする人気ぶり。定番の人気を誇る北欧スタイルを取り入れていることもあり、日本でも近年注目度が急上昇しているんです。
キーワードは「わび・さび」と「ヒュッゲ」
ジャパンディスタイルを作るのに欠かせないキーワードが、日本の「わび・さび」と北欧の「ヒュッゲ」です。
【わび・さび】
日本特有の美意識のひとつ。「わび」とは、質素なものや完璧ではないもののなかに奥深さや豊かさを見出す心。「さび」とは、時間の経過により朽ち果てていく様や閑寂にこそある趣を表す。
【ヒュッゲ】
「心地よい空間」や「幸福な時間」を表すデンマーク語(およびノルウェー語)。デンマークの人々にとって大切な価値観・ライフテーマのひとつ。
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普段からわび・さびを意識して暮らしている日本人は少ないかもしれませんが、古民家を改築したカフェに不思議と懐かしさを感じたり、木製家具の経年変化を美しいと思う気持ちなどはきっとこれに通じる感覚でしょう。
一方、ヒュッゲは、幸福度ランキング2位のデンマークならではのテーマと言えるかもしれません。デンマークの人々の間では「それはヒュッゲな時間だったね」など日常的に使われる言葉で、生活の中でヒュッゲを感じるかどうかは重要な判断基準なのだとか。
日本人に馴染みのある言葉だと、「まったり」や「ほっこり」などが近いといわれます。例えば夜、テレビを消して飼い猫とまったり過ごす時間は筆者にとって何よりヒュッゲです。
日本のわび・さびも、デンマークのヒュッゲも、単なる言葉ではなく暮らしている人々の思想を表すもの。ジャパンディスタイルは論理的に計算されたインテリアではないので、あまり固く考えずに日本のわび・さびやデンマークのヒュッゲを意識してコーディネートするのがおすすめです。
ジャパンディスタイルをコーディネートする5つのポイント
ジャパンディスタイルを取り入れるときの具体的なポイントを、実例と一緒にご紹介します。コーディネートにおすすめの家具や雑貨も併せてまとめているので参考にしてくださいね。
①自然素材や品質にこだわる
ジャパンディスタイルを目指すなら、家具や雑貨に自然で温かみのある素材を取り入れましょう。昔から日本の家では畳や障子、竹や綿など素材のままの性質を活かしたアイテムがたくさん使われてきました。
なかでも木材は重要なポイント。ダイニングテーブルやカウンターデスク、カップボードなど、面積の広い家具を木製にするとグッとナチュラルな雰囲気になります。
このとき気をつけたいのが、木製家具の選び方です。家具に使われている木材の種類は色々ありますが、ダークなものより木目や節が活きる柔らかい色味のものがおすすめです。特にダイニングテーブルはリビングの顔になるので、少し値が張っても品質の良い無垢材を選ぶと部屋のインテリアをランクアップしてくれますよ。
全て木製で揃えてしまうと野暮ったく感じる場合は、要所要所にスタイリッシュな素材を取り入れるとモダンになります。例えばチェアの脚にはアイアン素材を選んだり、真鍮素材のペンダントライトを選ぶなど、小さな面積で異素材を取り入れるのがコツです。
他にも、ブラインドをアルミではなくウッドにしたり、ベッドリネンに綿を選んだり、ガラスではなく木製のコーヒーテーブルを選ぶなど。ジャパンディスタイルには都会的で無機質な素材より、少し素朴な素材の方がよく合うのです。
②ベースはニュートラルカラー/アースカラー+差し色で
ジャパンディスタイルの基本はニュートラルカラーとアースカラーです。
ニュートラルカラーとは白・黒・グレーといった無彩色のことですが、ファッションやインテリア業界だと淡いベージュ(エクリュ)やカーキ、グレージュ、モカ、ラテ、アイボリーなども含めてニュートラルカラーと呼ぶことが多いです。近頃流行りのくすみカラーにも共通していますね。
一方アースカラーとは、自然をイメージした色のこと。カーキやモスグリーン、ブラウン、ネイビー、テラコッタなどは代表的なアースカラーです。
インテリアを考えるとき、部屋全体を100として<70:25:5>の割合で構成するとまとまりやすいといわれます。
この黄金比で考えると、ベースとなる壁や天井、フローリングにはニュートラルカラーを、アソートになるソファやダイニングテーブルにはアースカラーを配置するとジャパンディスタイルらしくなります。
アクセント(差し色)はお好みですが、あまり彩度の高いものはおすすめしません。ジャパンディスタイルの雰囲気に合わないことがあるので、初心者にはくすみカラーやネイビーなどがおすすめです。北欧らしいオレンジや黄色も小物だけに使うならアリですが、使いすぎると一気にごちゃついてしまうので気をつけましょう。
差し色を入れるならマグカップや時計、花やクッションカバーなど、小さな面積に数か所だけ使うのがポイントです。
③モノを減らして(または隠して)ミニマルな空間に
ジャパンディスタイルの美学は、ミニマルな暮らしにあります。量よりも質、大は小をかねない、を意識してものを減らす工夫をしましょう。
断捨離が難しい場合は、できるだけ目につくところに細かいものを置かない方がすっきりとして上品に見えます。見せる収納に自信がない人は、リネンや収納ボックスなどを使って隠す収納に切り替えてみてください。
品質とセンスの良い家具や雑貨があれば、過剰に飾り立てなくても十分おしゃれに見えます。最低限のお気に入りのものに囲まれた充実した暮らしを目指しましょう。
④ロースタイルの家具を取り入れてみる
ジャパンディスタイルが北欧スタイルやナチュラルモダンと違うのは、ロースタイルの家具を取り入れるところです。
空間が広く見えるロースタイルのテレビボードやローベッドは、海外に比べて狭い家が多い日本らしい文化です。茶の間で床に座ってくつろいでいた名残ともいえますね。
もともと北欧風の部屋でも、家具をロースタイルに変えると一気にジャパンディっぽくなるので試してみてください。その際、竹や籐などの和モダンな素材や格子の扉など、日本風のデザインを選ぶとより雰囲気が出ますよ。
⑤ディスプレイは引き算を意識して余白を作る
ジャパンディスタイルのディスプレイは、とにかく「引き算」を意識しましょう。
壁付けの飾り棚があるとついおしゃれな雑貨をたくさん並べたくなりますが、そこをグッと我慢してください!空間をモノで埋めきるのではなく、余白を残すのがジャパンディスタイルのコツです。
飾り棚の上は1つのマグカップとアートボード、小さな観葉植物くらいにしておいて「余裕」を感じられる空間づくりを心掛けましょう。
家具の配置も同様に、びっしり並んでいるよりも壁や床が見える方が上品にまとまります。そのためにも③の「モノを減らす」ことは大事なポイントです。
懐かしくも新しいジャパンディスタイルを取り入れよう
日本と北欧とミックスさせたジャパンディスタイル。日本での知名度はまだそこまでではありませんが、インテリア好きの間では早くもネクストトレンドとして注目を集めています。
懐かしくも新しいジャパンディスタイルを取り入れて、ヒュッゲな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.