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令和4年度ふるさと納税に関する現況調査(総務省)の結果を分析
総務省によると、ふるさと納税には3つの大きな意義があると記載されている。
第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になる。
第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になる。
第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながる。
ではどのような自治体がこの制度を活かし、多くの寄付を得られているのだろうか。
そこでふるさと納税総合研究所は、住民一人あたりの獲得寄付額を分析し、自治体の人口規模の大小に関わらず、効率的に寄付を受け付けている自治体とその取組を探り『ふるさと納税分析レポート』としてまとめた。
地域資源が豊富な北海道と、ふるさと納税への取り組みが熱心な九州の自治体が多くランクイン
自治体住民の一人あたり令和3年度ふるさと納税獲得寄付額を計算したところ、1位が和歌山県北山村、2位が北海道白糠町、3位が宮崎県都農町となり上位10自治体の半数は北海道の自治体が獲得。
1位の北山村は人口が427人、寄付額が897,378(千円)であったので、住民一人あたり寄付額は2,101,588(円)と2位の白糠町と約50万円の差があった。人口規模や生産規模とは単純に寄付額が比例しないふるさと納税制度の特徴が良く現れている結果に。
1位の和歌山県北山村は人口約450人の全国唯一の飛び地の村で、本州でも最も少ない人口の村だ。東西20km、南北8kmの小さな村は、面積の97%は山林。
伝統文化でもある「筏」を今に伝える「観光筏下り」や、全国唯一の特産品である柑橘類「じゃばら」も知られている。北山村のふるさと納税の取組の特徴は、村のじゃばら販売事業をスピンアウトさせて誕生した民間企業が中間事業者になっていること。
返礼品数は700を超えており、8つのサイトを運営している。名産のじゃばらや筏下り乗船券だけではなく、和歌山県の共通返礼品制度を活用し、サイトとして魅力がある見せ方をしている自治体だ。
和歌山県北山村の「じゃばら」と同じく、柑橘類の「ゆず」で有名な20位の高知県馬路村は、「日本で最も美しい村」連合にも加盟している。
昭和38年からゆず販売を始め、本当に粘り強く活動と地元愛で馬路村と「ゆず」をブランドとして育て上げてきた結果が、ふるさと納税寄付にも成果として現れているようだ。
「ゆず」はほぼ全商品が加工品であり、付加価値が創出され、差別化ができている。返礼品数は約100種類と多くはないが、馬路村が自信を持った返礼品だけが掲載されているのも魅力となっているよう。
22位の熊本県玉東町はポータルサイト上での返礼品の画像や特集、注意事項なども表現豊かなバナー等をふんだんに用いて、視認性を高めている。
27位の福岡県東峰村は小石原焼や髙取焼という2つの窯業も持つ自然豊かな地域で、「日本で最も美しい村」連合にも加盟している自治体だ。
まとめ
住民一人あたり獲得寄付額を基準に分析をすると、特徴的な自治体が多数現れてきた。エリア別では北海道が14自治体、九州は8自治体となり、約7割を占めている。
北海道はブランド力がある地域資源が豊富であり、九州は各自治体のふるさと納税への取組が熱心で競争も厳しい環境にある。
このエリア以外にある和歌山県北山村や高知県馬路村の事例からは、深い地元愛と戦略的思考を基軸に、独自の地域資源を粘り強く育て、自治体の前例主義を突破する創意工夫で、独自のポジションを確保していることがわかる。
深い地元愛と戦略的思考は小さな自治体だからこその「強み」と言えるかもしれない。
構成/Ara