宇宙天気予報士
太陽における爆発現象〝太陽フレア〟により生じた太陽嵐は地球に到達することで、人工衛星や電子機器を破壊したり発電所を操業停止させる大災害を引き起こすことがある。こうした現象は宇宙天気と呼ばれ、NICT(情報通信研究機構)では20年ほど前からフレアの発生予測につながる黒点の大きさの変化といった宇宙天気観測情報を発信している。だが、太陽嵐の到来を正確に予想する技術はまだ確立されておらず、宇宙の仕組みを知り、データを読み解く、宇宙版の天気予報士ともいえる専門能力が求められている。
太陽研究の第一人者である柴田一成博士は「世界的な宇宙ビジネスの加速により、太陽の活動を精度高く観測、予測する必要性が高まっているが、専門家の育成は追いついていない」と指摘。日本でいち早く太陽観測を行なってきた京都の花山天文台の研究をもとに、今春より宇宙天気予報を学ぶ講座を立ち上げた。入門編は定員を超える応募があり、関心度の高さがうかがえる。今後は秋に始まる応用編と並行して宇宙天気予報士の資格設立も検討しており、「できれば3年以内に日本から初の宇宙天気予報士を誕生させることを目指したい」としている。
宇宙ビジネスが本格化し、民間人による宇宙旅行が現実になる中で旅の安全にも関わる宇宙天気予報のニーズはこれから高まりそう。新たな仕事として注目されるかもしれない。
日本最古の現役望遠鏡がある京都の花山天文台では宇宙天気予報に不可欠な太陽フレアの観測が毎日行なわれており、観測結果はWebサイトに公開されている。
長年続けてきた観測活動に基づく太陽嵐の予測はシカゴの発電所を大停電の危機から救うことにもつながった。
取材・文・撮影/野々下裕子