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電動化、高級スポーツカー、旧車、コロナ禍で変わったクルマの楽しみ方

2022.08.21

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 ちょっと前の話になるが、今年4月に幕張メッセで開催されたクルマのイベント「オートモビルカウンシル 2022」を訪れた。今回で7回目を迎える同イベントだが、「我が国に成熟した自動車文化を創成する」というコンセプトのもと、自動車メーカー、インポーター、クラシックカー販売店、自動車関連部品やグッズ販売店やギャラリーなどが多数出展していた。

 その時に、印象に残っている展示を紹介したい。幕張メッセのホール10の渡り廊下から展示場に降りていき、パネルや大きなオブジェなどを使って見応えのある訴求していたのが、ホンダ「シビック」の50周年展示だ。1972年型の初代「シビック」と1984年のレースに出場していたチームヤマト・シビック。以前、ツインリンクもてぎにあるホンダ・コレクションホールに展示されていたのは、モスグリーンの4ドア「シビック」だったが、今回、幕張に展示されたのは白の2ドア。2ドアのほうがシンプルだし「シビック」らしくてカッコいい。

 その隣のブースにずらりと並んでいたのが歴代の日産「フェアレディZ」。いよいよ今年、日本でも発売が開始される新型「フェアレディZ」を筆頭に、歴代の「Z」が並ぶ様子は圧巻だった。オレンジと黒の新型「Z」は、歴代「Z」の特徴を取り込みながら、モダンな雰囲気を出すことに成功しているように感じた。しかし、4台を並べただけで他に何の演出や飾り付けなどがなかったのが、あまりに素っ気なくて、もったいなかった。その隣で、ポルシェがうまく展示しながらテーマを伝えていたから尚更そう感じたのかもしれない。

 ポルシェは、手前から最新のEV(電気自動車)の「タイカン」、「911カレラ4GTS」、1980年代型「911SC」、1973年型「911カレラRS2.7」と4台を展示。「タイカン」の手前にコンセプトカーを1台展示して、「過去から現代、そして未来へ」と時間軸を追って、歴代ポルシェを表現する予定だったらしい。また、背後のガラスケースにはクラシックカーのパーツも展示されていて、近年、活発化しているポルシェのクラシックカーへの対応の充実ぶりをアピールしていた。

 ポルシェの右隣はマツダだ。マツダは例年、このイベントで積極的な展示を行なっている。今年は、モータースポーツへの取り組みを展示していた。1968年のマラソン・デ・ラ・ルート仕様の「コスモスポーツ」、1969年のレース仕様の「ファミリア・プレスト・ロータリークーペ」、そして、初公開の「マツダスピリット・レーシング・ロードスター」などが注目を集めていた。

 マツダの右隣りはプジョー。発表したての「308」が主役で、「308」に連なるプジョーコンパクトの「306 S16」や昔懐かしい「205GTI」なども並べられていた。

 トヨタは新型車ではなくて、今秋にオープン予定の富士スピードウェイのホテル&ミュージアムの説明だった。ミュージアム屋上テラスからは最終コーナーを見下ろせるのでスピードウェイに入場しなくても観戦できるというマル秘情報を関係者から教わった。ミュージアムはレーシングカーを常時40台ほど展示し、それとは別に企画展も行うというから今から楽しみだ。

 マクラーレンは「ウチはみなさんと違って新しいメーカーですから(歴史を展示せずに)」(代表者氏)と、最新の「720Sスパイダー」と日本初公開となる「アルトゥーラ」を出展した。

 フェラーリも日本初公開の「296GTB」と「488」を展示。「296GTB」は3.0ℓ、V6エンジン+モーターのPHEV(プラグインハイブリッド)なので、展示でもコードをつないでそれを明らかにしていた。「アルトゥーラ」もV6エンジン+モーターのPHEVだが、スーパーカーの世界にも電動化の波が押し寄せてきているのを肌で感じる。

 電動化と言えば、日本に再上陸した韓国のヒョンデのEV(電気自動車)「IONIQ 5」も人気を集め、人だかりが絶えなかった。また、マセラティは1970年代のスーパーカー「ボーラ」と最新の「MC20」を出展した。

 クラシックカーへ意欲的に取り組んでいる自動車メーカーやインポーターなど少しづつ増えてきているように受け止められた。“新車を販売することが使命なのだけれども、その新車というのはかつてのクラシックカーの延長線上にあるものなのだ”と主張しているように見えた。それがヘリテージというものだし、ブランドということだろう。

 多くのクラシックカー販売業者も売り物であるクルマを持ち込んでいた。どれも魅力的だけれども、プライスタグを見ると、昨今の価格高騰を如実に示していた。

 特別な例かもしれないが象徴的だったのは、「アルヴィス」だ。アルヴィスというのは、かつて同名のクルマの製造を終了したイギリスの自動車メーカーだったが、新車として製造販売される“コンティニュエーションシリーズ”は、当時のデザインのままに新たに組み上げ、現代の排ガス規制などにも適合されている。

 同じ考え方によるコンティニュエーションシリーズは、ベントレーやジャガーなどでも作られており、今後、追随するメーカーが現れるかもしれない。

 主催者による展示では、1976年の日本のスーパーカーブームの頃に花形だった、ランボルギーニ「カウンタック」「ミウラ」、フェラーリ「356GTB4」、デトマソ・パンテーラなどと、1980年代後半から90年代前半にかけてのDTM(ドイツツーリングカー選手権)のレーシングカーが披露されていた。

 会場ではクラシック音楽の生演奏が聴けるのも特徴を出して成功している。クルマのイベントというと、どうしても派手なEDM系のものを大音量で流したりする(それはそれで良いけれども)ものがあったりするけれども、落ち着いたクラシックを流すのはイベントに合っているし、心地良い。ジャズも良いだろう。

 現代アートのギャラリーやテーラー、書籍、アパレルなども多数出展していた。毎年出展している業者もあり、来場者に定着しているのだろう。

 オートモビルカウンシルは、昨年、コロナで中止となった東京モーターショーを筆頭とする従来型のクルマのイベントの良いアンチテーゼになっている。クルマのイベントだからといって、新車ばかり並んでいるわけではないし、クルマしか楽しめないわけでもない。楽しみ方の幅が広く、大人っぽい。

 電動化や自動化などで、クルマというものが大きく変わっていこうとしている時代だからこそ、楽しみのためのクルマやクルマと一緒に楽しみたいものを提示してくれている。これからのクルマのイベントの可能性を示していて、会場にいるとあっという間に時間が過ぎていった。

■関連情報
https://automobile-council.com/events/ac2022/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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