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Microsoftとコクヨの最新事例から考える「メタバース×ワーク」の可能性

2022.08.22

3次元の仮想空間やサービスを指す「メタバース」の領域が、どんどんと広がりを見せている。ゲーム、エンタメ、ショッピング、教育などのほか、ワークの領域においても技術やサービスが注目されている。先駆的に取り組んでいるMicrosoftとコクヨの事例を紹介し、「メタバース×ワーク」のあり方と可能性を探った。

Microsoft―メタバースでハイブリッドワークを成功させる秘訣とは

Microsoftは、メタバースとワークを掛け合わせたソリューションを数多く展開している。

●「Mesh for Microsoft Teams」

Microsoftは、昨年コラボレーティブ コンピューティングの概念「Microsoft Mesh」を発表。Meshでは、さまざまなアプリケーションが稼働するが、その一つに、ビジネスコミュニケーションツール「Microsoft Teams」上でメタバース空間内の業務を可能にする「Mesh for Microsoft Teams」がある。2022年中にプレビューを開始予定という。

Microsoft Teams上で、音声会議やビデオ会議と同様の手軽さで、自身のアバターを使った会議や、メタバース空間における他のアバター参加者とのコミュニケーションやコラボレーションが行える。

新たにアプリをインストールしたり、複数アプリを使い分けたりする必要がなく、チャットやファイル共有・共同編集等で日々使われているTeamsから直接使えるのが大きな特徴となっている。

●「Mesh App for HoloLens」

「Microsoft HoloLens(ホロレンズ)」は、頭に装着するタイプのコンピューティングデバイスで、ディスプレイ越しに見える現実世界に重ね合わせる「MR(Mixed Reality、複合現実)」を体験できるものだ。このHoloLens とMeshアプリと組み合わせたプレビュー版を提供している。

例えば、別の場所にいるメンバー同士が、それぞれHoloLens 2を装着し、Microsoft Mesh サービス上に作成したスペースでコラボレーションが可能。それぞれ別の場所で作業していても同じ部屋にいるような感覚で、より自然で生産性の高い共同作業が行えるという。

●「AltspaceVR」

バーチャル空間で様々な人と交流できるソーシャルVRサービス「AltspaceVR」は、ビジネス用途での活用も可能だ。例えば、プレミアムなバーチャルイベント会場をAltspaceVR上で構築し、会議やイベントなどが開催できる。

●「メタバース×ワーク」に関する基本的な考え方

Microsoftは、「メタバース×ワーク」について、さまざまな場所やタイムゾーンにいる人と人が、一つの同じ場所に集まっているかのようにディスカッションや共同作業できる、コラボレーティブ コンピューティングを実現する方法の一つをメタバースが担うと考えているという。

●「メタバース×ワーク」のメリット

では、「メタバース×ワーク」によって、業務にどのようなメリットが生まれるだろうか。

・快適に心地よく会議に参加できる環境へ

Microsoftによれば、このたび大きく変化したコロナ禍の働き方において、業務効率や生産性と同程度に、従業員のウェルビーイングを重視しているという。例えば、ビデオ会議で従業員が、カメラオンを心理的に強いられるようなことなく、快適に心地よく会議に参加できる環境を用意する必要がある。またビデオ会議を休憩なしで連続して行うと、ストレスが大きいという同社の研究結果もあることから、それをメタバースが解決できる可能性があるとする。

上記のイラストは、同社がコラボレーティブコンピューティングの可能性を示したものだが、HoloLensを被った人が目立っているものの、会議室にいる人やアバターで登場している人も混在している。従来、ビデオをオンにして身振り手振りを交えて話すか、ビデオ(カメラ)をオフにするかの2つの選択肢しかなかったが、自身のアバターでメタバース的な参加をすることで、ビデオ会議に近い参加ができるようになる。

このように、メタバースを活用することで、参加者が、会議参加時に置かれている状況を鑑みて、自分自身にとって最も心地よい最適な手法として、ビデオオンやアバターを選択でき、同じ場所に集まっているかのような臨場感ある会議を実現できる。

・リレーション創出により新たな価値を生む可能性も

メタバース上のアバターは、新たな価値を生む可能性もある。直接、対面では話しづらいという場合も、メタバース空間でアバター同士であれば、話しかけやすくなるだろう。

また、スタートアップ企業がリレーションや人脈を作りたいといったときに、リアルイベントに参加するのは物理的・時間的に限界があるが、AltspaceVRのようにメタバース空間で行われるイベントには、オフィスから1日に何度も参加できることから、効率的に人脈を広げることができる。

●「メタバース×ワーク」の課題

一方で、「メタバース×ワーク」にはまだ課題も多いといわれる。

Microsoftは、メタバースに限らず、新しいテクノロジを許容する企業(組織)のカルチャーや考え方が大事だという考え方を持っている。新しい技術を、誰もが違和感なく日々の業務でフル活用し、メリットを最大限に享受するためには、新しいやり方を許容できる組織文化が根付いているかどうかがカギになるという。特にメタバースのような、他者とのコラボレーションやコミュニケーションのための技術は、より多くの人、できれば組織の全員が活用することで、その効果を最大化できるとしている。

例えばオンライン会議に、ビデオオンで実写の同僚・部下が登場するのではなく、アバターの同僚・部下が登場しても何の懸念や違和感を持つことなく、同じ空間でコミュニケーションしているかのようにディスカッションや共同作業できる、そうした文化・風土を今後は醸成する必要がある。

コクヨ「バーチャルオフィスとバーチャルショップ」の取り組み

文房具やオフィス家具、事務機器を製造・販売するコクヨは、自社オフィス内で多数の企業とコラボレーションしながら、新しい働き方の実証実験を行っている。

先日、同社主催で開催された「働くのミライ会議 vol.3」という働き方の多様性を議論するイベントでは、メタバースに関する内容も紹介された。そのセッションに登壇していた同社の経営企画本部 イノベーションセンターに在籍するオープンラボグループグループリーダー 嶋倉幸平氏は、「メタバースは新たな経済活動のフィールドとして、そしてコミュニケーションツールとしても注目されている」と述べ、コクヨ社内で行っているバーチャルオフィスとバーチャルショップの取り組みを紹介した。

コクヨ 経営企画本部 イノベーションセンター オープンラボグループグループリーダー 嶋倉幸平氏

同社のパーパスは「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする」。これをもとに、コクヨ自身が実験のために、東京・品川オフィスを働き方の実験場「THE CAMPUS」として大規模リニューアルし、生まれ変わらせたのが2021年2月のこと。社会課題に取り組むための企業横断型の実験・実証の場となった。

●最新の取り組み バーチャルオフィス・メタバース関連

その新オフィスで、今年から始めたという取り組みの一つが、「バーチャルオフィス」だ。

コクヨ社内のオフィスをバーチャルの世界に再現。アバターが点在しており、互いに近づくと声が聞こえ、離れると聞こえなくなるといったシンプルな作りになっているそうだ。

全社的に導入し、設計部を中心に利用しており、リモートワークと出社勤務のハイブリッドワークの可能性を試しているという。

バーチャルオフィスでの取り組みについて嶋倉氏に尋ねたところ、次のように回答する。

「バーチャルオフィスでは、Zoomなどではできない、ふとしたコミュニケーションの実現を目指しています。通常、オンラインツールを使用した会議は、カレンダーなどと連携し、常に計画されているものですが、バーチャルオフィスにおいては、常時接続による計画外の打ち合わせが発生し、軽いホウレンソウなど、リモートワークで失われがちな心理的な安心感を醸成させることがわかってきました」(嶋倉氏)

【3Dバーチャルオフィス メタバースの可能性】

メタバースも活用している。Meta社の「HORIZON WORKROOMS」とHTC社の「VIVE SYNC BUSINESS」を用いて業務における3Dバーチャルオフィスの導入も一部すすめているという。

●メタバース時代の新たな生活様式を追う実験店舗「コクヨショップ@メタパ」

一方で、嶋倉氏は「メタバース×ワーク」には課題があると述べる。

「ゲームならまだいいですが、会議で2時間、ゴーグルはかけられません。眼鏡がめりこんできますし、外したくなってしまいます。そこで、ゴーグルに頼らないメタバースがないかと探していたときに、凸版印刷さんから紹介されたのが『メタパ』でした」(嶋倉氏)

「メタパ」は、凸版印刷のメタバース上でショッピングを実現するサービスだ。これを用いてコクヨの文具などをメタバース上で買い物できる「コクヨショップ@メタパ」を構築した。

「コクヨショップ@メタパ」

店舗は、コクヨのテープのり製品「ドットライナー」の形状がモチーフになっている。つまりメタバース上のコクヨショップに訪れたアバターは、ドットライナーの中に入って買い物をすることになる。2階建てで、1階はドットライナーのほか、スマホポーチややる気ペンなどを販売する店舗、2階はコクヨが手がけるオウンドメディアを紹介するスペースにしている。

「コクヨショップ@メタパは、パソコン上でもスマートフォン上でも閲覧・利用できるため、重たいゴーグルから脱することができました」と嶋倉氏は述べる。

今後の活用法について尋ねたところ、「デバイス一つで、完全に異空間に入れるというのは魅力的でした。あえて現実ではありえない空間に入り込むことにより、例えば社員研修などで、有効性を見い出せることもあると考えています。実際、アバター同士が触れ合い、会話できるというのはコミュニケーションとしては通常のオンラインツールより優位性があると考えています」とコメントした。

●メタバースのその他の課題

嶋倉氏によれば、「メタバース×ワーク」は大きな可能性があるものの、ゴーグル装着などのほか、課題は多いという。

「メタバースでは、伝えられるものと、伝えられないものがあり、特に『雰囲気』を伝えられたら、もっと楽しくなってくるのかなと感じています。一方で、リアルな世界だからこそ、場の空気感がより大事に感じられるようになるとも考えます」(嶋倉氏)

「当社はGoogle Meetというツールを使って社員同士のビデオ会議を行っていますが、それをバーチャルオフィスの会議にしましょうと強制的にするルールを作りました。結果、バーチャルオフィス会議に入ってくる比率が高まりました。切り替えにはルールが必要だと思っています」(嶋倉氏)

今後、メタバースを実務に取り入れていくに当たって、どのような計画があるのだろうか。追加で尋ねたところ、嶋倉氏は次のように回答した。

「今後の用途として、『合宿』などで有効かもしれないと考えています。働くシーンでは期間の定められたプロジェクトワークが増加の一途をたどっています。ここでは、キックオフや打ち上げなどの『節目』が重要になってきます。遠方の研修センターだと、非日常は体験できるかもしれませんが、移動に時間がかかります。一方、メタバースは、先述の通り、事前設定の手間や装着に時間がかかりますが、移動のそれと比べるとさすがに短いです。さらに、その圧倒的な『没入感」は他では得られない体験価値があります」(嶋倉氏)

今回紹介した内容は、コクヨ「働くのミライ会議 vol.3」の「【SESSION8】メタバースの世界もやってくる オフィスだけじゃない、働く場所のミライ」で無料閲覧できる。アーカイブ配信は2022年8月31日まで行われているので、ぜひ確認したい。

「メタバース×ワーク」の可能性は、着実に広がっている。しかし、実務となると限られた人のみの利用やゴーグル装着の不便さなどの課題もある。今後、技術の発展と共に、実務レベルでメタバースが有効活用できるような工夫が必要になりそうだ。

【参考】
Microsoft「Mesh for Microsoft Teams が目指す、「メタバース」空間でのより楽しく、よりパーソナルなコラボレーション」
コクヨ「働くのミライ会議 vol.3」アーカイブ配信(2022年8月31日まで)

取材・文/石原亜香利

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