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円安と政府の支援でチャンス到来、国内と越境の「ハイブリッドEC」をすぐにでも始めるべき理由

2022.08.16

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

コロナ禍で拡大するも国内EC 市場は競争が激化

コロナ禍の巣ごもり消費により国内EC市場は拡大しているが、プレーヤーが増加したことで、これまで以上にショップの認知度を上げることが求められている。EC はもともと薄利での展開が多く、ショップの増加で価格競争も激しくなり、利益を確保することが厳しい状況になっているのが国内ECの現状ともいえる。

激化するEC市場への新規参入で注目されているのが「越境EC」。越境ECとは国境を越えてボーダレスに取引されるECサイトを指す。日本製品を海外に向けて販売する越境ECは、コロナ禍で来日ができない外国人の「日本ロス消費」による販路拡大で注目を集めている。

越境ECで注目されている日本製品として、衛生面や安全面から信頼のおける「紙おむつ」「粉ミルク」「化粧品」が人気で、インバウンド消費でも人気の高い家電や、日本の伝統工芸品も越境ECで売れている商品だ。

経産省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、世界の越境ECの市場規模は約105兆円で、2026年には500兆円を超える見込み。海外への渡航が制限される中、新たに越境ECに参入する事業者が増加しつつあり、今後もさらなる市場の成長が予想されている。

日本貿易振興機構が発表した「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書2021年2月」では、ECの活用実績がある企業のうち、45.5%が日本国内から海外向けの越境ECを活用していると回答。また、海外販売でEC活用実績のある企業は65.0%に上った。

越境ECの利用率は、大企業(34.8%)に比べ、中小企業(47.0%)が10%ポイント以上高い結果となっており、全体的に中小企業が越境ECに意欲的な姿勢が伺える。

こうした傾向から、海外をターゲットとする越境ECと合わせて国内販売もシームレスに強化する「ハイブリッド EC」の形態をとる事業者が増えると考えられ、国内のみならず海外に目を向けることが、日本のECビジネス成長のカギを握ると予想されている。

越境ECのノウハウやメリット・デメリット、さらに中小・地方企業の新たなビジネスチャンスになり得る可能性を秘めた「ハイブリッド EC」について、越境ECプラットフォーム運営企業「CAFE24 JAPAN」代表取締役社長の正代誠氏に話を伺った。

【正代誠氏プロフィール】
1984年九州佐川急便に入社、顧客対応、営業開発、IT システム等幅広い業務に携わる。1999 年には大型ショッピングセンターとの共同配送のビジネスモデルを構築。佐川コンピューターシステム(現 SG システム)取締役、佐川グローバルロジスティックス取締役、SGH グローバルジャパン代表取締役、佐川フィナンシャル代表取締役を歴任。国内・国際物流に関わり、海外ビジネス戦略構築の経験を活かし、EC事業のエキスパートとして2021年にCAFE24 JAPAN代表取締役社長に就任 。

国内と海外への販売をシームレスに行う「ハイブリッドEC」を今始めるべき理由

「国内、海外を分けずに販売できるのがインターネット上で行う商取引のECであり、国を分けた形で販売をすることは、完全なECとは言えません。物流や翻訳の課題を取り除けば、同じマーケットとして販売でき同一システムで管理できるものがあれば『ハイブリッドEC』と言えるでしょう。

ボーダレスな電子商取引を今始めるべき理由のひとつが円安です。円安の影響で海外の消費者が日本製品に興味を持ち始め、海外向け販売を行う大きなチャンスが到来しています。ターゲットを海外に広げる越境ECと、国内と海外の両方で販売するハイブリッドECを始めるチャンスが今である理由を4つ挙げてみます」(正代氏)

〇円安と政府からの補助金で越境ECに踏み出すチャンスが

昨年から円安が進行し、8月12日時点で1ドル=133円台後半と1998年10月以来の約24年ぶりの円安水準に。円安になると日本から輸出する製品の価格が安くなるため、海外への商品販売が有利になり、円安は越境ECに好影響を及ぼす。

さらに、政府は「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金」の公募を実施。これは優れたコンセプトや魅力的な地域資源を保有しているにも関わらず、輸出販路が弱く十分に海外需要を取り込めていない中小事業者などを対象にした補助金で、コロナ禍により変化する海外需要を取り込むことが目的。こうした背景から、国内ECに加えて、越境ECに踏み出すことが事業者の成長につながるとされる。

〇コロナ禍で来日できない外国人の日本ロス消費で日本製品のニーズが高い

観光庁の「令和3年版観光白書について」によると、2019年に日本を訪れた外国人は過去最高の3188万人だったが、コロナ禍の2020年には412万人と約2776万人の減少。国別では、中国、韓国、台湾で約6割を占めており、訪日者の中には日本の商品を積極的に購入していた人も多い。コロナの収束が未だ見えていない状況下で、外国人をターゲットとするならばコロナ禍の今こそが越境ECに参入する絶好のタイミング。越境ECは競が激する国内ECよりも成功の可能性は高いと考えられる。

〇今から越境ECを行うことで、コロナ後のプロモーション活動が有効に

来日できない外国人をターゲットにした越境ECでは、商品販売はもとよりサイトの認知度向上をこれまで以上に強化する必要がある。インバウンドに制限がある今は、越境ECを通してショップのオーナー、店長、生産者の顔やコメント、その地域や商品の魅力などを紹介し、ショップに親しみを持ってもらいファンを増やしておくことが大切。

プロモーションとしての越境ECの活用や、アフターコロナを見据えた越境ECも重要。一例として、越境ECのサイトで購入した外国人に、コロナ収束後に来日した際に使えるクーポンを発行して、越境ECの購入者が自動的に実店舗に来るようなシステムで顧客を誘導する。

越境ECでは物流コストなどの中間流通コストが発生するが、実店舗への来店ならこの経費は不要となり利益率が向上する。さらに帰国してからの越境ECサイトで使えるクーポンを来店時に発行することで、継続した売上向上やリピーターの獲得が見込める。

コロナ収束後、訪日外国人が増えてからの誘導や宣伝では、競争も激しくなり大きな経費も必要となるため、今から越境ECを行うことで、コロナ後のプロモーション活動が有効になる。

〇コロナ禍で観光客が減った地方企業、自治体の活性化や地方創生につながる

コロナの影響で訪日外国人観光客が減り、地方の観光地、企業、自治体は外国人観光客のニーズに応える対策が必要となっている。その点、越境ECを使った観光展開をすれば、地方の観光地、企業、自治体の活性化につながる可能性がある。

越境ECを通じて地域の特産品や観光地の魅力を海外に発信できれば、コロナ収束後にその地域に訪問したい外国人も増えると考えられ、今後はECサイトをインバウンドの窓口にする自治体も増えていくと予想している。

すでに実施されている例としては、越境ECにより中国で“爆売れ”した鳥取県境港市の「きざみ昆布」や、台湾向けの県産品特設ページを代理購入サービス「Buyee」で開設した青森県庁など、地方自治体が越境ECにて展開することで、商品だけでなく地元の情報発信にもつながっている。

越境EC出店に関する基礎知識

「越境ECへの参入を検討する企業も増えていますが、国際物流、翻訳、海外での決済や顧客満足度などの課題から、越境ECに踏み出せない企業は多くあります。越境ECを始めるには、在庫の確保、出店方法、販促計画、発送方法といった基本的な情報を把握する必要があるでしょう」(正代氏)

〇商品の在庫を確保する

越境ECで販売する商品を用意する際、輸出に制限のあるアイテムではないことを、入念にチェックする必要がある。危険物、ワシントン条約の対象となるもの、植物検疫の輸出条件で認められていないものなどは、誤って輸出してしまうと問題が生じる可能性がある。

〇出店方法を決める

越境ECの出店方法については、各出店方法の固定費、変動費、リスクなどをまとめて比較し、中長期的な目標も視野に入れて検討しながら最適な出店方法を採用する。支払い方法についてもこの段階で定める。

〇販促計画を立てる

越境ECを導入したからといって、自動的に売り上げが増加するわけではなく、適切な販促計画を立て、集客する必要がある。まずは、海外のターゲットを詳細に設定するのが肝要で、販促の手法を定めるためには、販売先のターゲットを明確にすることが必須となる。

次にターゲットの購買意欲を喚起するよう意識して施策を実施。例えば、スマートフォンを利用する若年層に対しては、SNSで動画を配信してアイテムの魅力を伝える手法が有効と考えられる。

〇発送方法を決める

海外への発送方法を検討する際は、商品の総量や、現地の顧客への利便性、安全性などを考慮する。国際発送では破損リスクを想定する必要があり、日本国内の輸送品質は世界でもトップクラスのため、同じ輸送品質は望めないと考えた方がよい。商品の紛失も想定されるため、追跡サービスが利用できる発送方法を採用すると安心。また、税関のホームページに掲載されている代表的な品目の関税率の把握も必要となる。

「越境ECの大きなメリットは売上向上に加え、競争の激しい国内より利益を確保できる点です。世界の顧客へグローバルにアプローチすることで客数を増やすことができ、品質面での評価が高い日本製品を、海外への販路を設置することで有利に働きます。

実店舗を構えて販路を拡大する方法もありますが、この場合は出店コストが発生し少なからずリスクが伴うため、コストやリスクを低く抑えられるのも越境ECのメリットです。また、インバウンドとの抱き合わせで実店舗の拡大も見込めます。

デメリットとしては出店準備に手間がかかる点が挙げられます。販売する国の基準に合わせて体制を整備する必要があり、具体的には現地言語へのWebサイトの翻訳や、決済方法、発送方法などの調整が求められます。加えて、国内ECより認知されるまでに時間が掛かるため、プロモーションの難しさもあります。

支払いを受ける際のリスクもデメリットのひとつで、海外クレジットカードの不正利用、為替変動による損失などが挙げられます。為替変動には日本円建て決済の導入、クレジットカードの不正利用はセキュリティの整備などで対処します。正しいインボイスの発行方法も押さえておく必要があるでしょう。

輸出入に関しても注意点があり、発送時の輸送コストは日本国内への輸送と比較して割高で、輸送ルートの問題から紛失のリスクもあります」(正代氏)

【AJの読み】国内でECサイトを持つ卸売、小売業は海外での販路開拓に意欲的

国内販売も維持しながら、海外に向けて販路を広げていく「ハイブリットEC」。ビジネス拡大のチャンスでありメリットも多いが、正代社長が挙げていたように、ハードルも数多く存在する。

こうした不安を解消しサポートするのが越境ECプラットフォーム「Cafe24」。2021年の導入数は前年比5.5倍、流通総額も前年比1.4倍と順調に成長。初期費用・月額費用・販売手数料が無料、8言語で自社サイト制作が可能、支援ツール等拡張機能を提供するアプリストアなど、初めての越境EC出店でも不安を解消するシステムやコンサルティングの充実が、利用者からの支持を得ている。

東南アジア・台湾のEコマースプラットフォーム「Shopee」の日本法人「ショッピージャパン」が実施した、ECサイトを持つ卸売・小売業の中小企業経営者、役員101名を対象にした海外販路開拓に関する意識調査では、海外での販路開拓に意欲的な理由として「事業規模の拡大」が63.4%で最多となった。

国内ECの競争が激化し、コロナ収束の見通しが立たない中、販路を海外に向ける傾向は今後ますます強くなっていくと思われる。円安、政府の支援という追い風もあり、国内×越境の「ハイブリッド EC」にさらなる注目が集まると予想される。

文/阿部純子

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