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NECがアジア太平洋地域で初めてアジャイル開発の新しいツールキットを導入した理由

2022.08.15

近年、DXを推進する上で不可欠な要素の一つに、“ビジネスの環境変化に機敏に対応する能力”である「ビジネスアジリティ」があるといわれる。特にシステム開発の分野では、「アジャイル開発」で柔軟かつスピーディーに進めるプロジェクトマネジメントが重要視されている。

実際に、DXを推進し、ビジネスアジリティの強化を目指しながらアジャイル開発を積極的に採用している日本電気株式会社(以下、NEC)が、このほど海外発の新ツールキットを導入した。そのツールキットは、どのようなメリットをもたらすのか、ツールキットの内容やNECの取り組み内容から探る。

アジャイル開発のツールキットとは?

近年、多くのプロジェクトにおいて導入されている開発手法の一つである「アジャイル開発」。開発工程において、プロジェクト単位で全体的に進めていくのではなく、機能単位で「計画→設計→実装→テスト」といった小さいサイクルを繰り返して進めることから、柔軟な対応ができ、開発スピードも速いことで注目されている。

そんなアジャイル開発を取り入れているNECは、先日、PMI(Project Management Institute/プロジェクトマネジメント協会)という世界各国にプロジェクトマネジメントの認定資格を発行している組織が手がける「Disciplined Agile(ディシプリンド・アジャイル)(R)」というツールキットを導入。コンサルティングパートナーとして、PMIと戦略的パートナーシップを締結した。PMIにとって、アジア太平洋地域ではNECが初めての締結という。

PMI「ディシプリンド・アジャイル」公式サイトより

「ディシプリンド・アジャイル」とは、企業が自社の状況に最適なアジャイル開発の実践ノウハウを選ぶのに役立つツールキットだ。詳細について、PMIのアジア太平洋地域を担当しているマネージングディレクター ベン・ブリーン氏とカン・ソーヒュン氏にインタビューに応じてもらった。

写真(左)ベン・ブリーン氏、(右)カン・ソーヒュン氏

――「ディシプリンド・アジャイル」の開発経緯を教えてください。

「PMIはすでに50年以上、個人や組織をプロジェクト管理についての能力を強化するお手伝いをしてまいりました。私たちのビジョンとして『個人や組織の力を引き出すことで、アイデアを現実のものにしよう」というものがあり、それを実現するには企業のビジネスがアジリティ(ビジネスの環境変化に機敏に対応する能力)を持つ必要があると思い、2019年にディシプリンド・アジャイル社を買収するという決断をしました。

これまで、開発の現場におけるプロジェクト管理の手法は、ビジネスが置かれている環境によって変わってきました。かつてはウォーターフォール型といわれていたプロジェクト管理の手法から、アジャイル型、もしくはウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド型に変わってきています。アジャイル開発を進めるためのさまざまなフレームワーク、例えばスクラム、看板方式、リーンなども登場してきました。

PMIのディシプリンド・アジャイルは、それらのようなフレームワークではなく、ツールキット、すなわちプロジェクトマネージャーが、最終的に自分の担当プロジェクトを実行していくために最適なプロジェクトマネジメント手法をサポートするものです。どのフレームワークにも使える、非常に実務的で実践的でもあるというのが特徴です」

――「ディシプリンド・アジャイル」では具体的にどのようなことができるのですか?

「ブラウザ上で、プロジェクト開始時に、140を超えるプロジェクトルートの選択肢が示されるので、その中から最適なものを選んでいきます。例えばプロジェクトサイズ、契約のタイプ、公共事業なのか特殊な業界の仕事なのかなど加味して選択します。すると選択肢によってコンテクスト(文脈)が設定されていき、この先、どんなことが起こり得るのか、そしてそのトレードオフ(達成のために犠牲にする必要があるもの)が何であるかを示してくれます。たくさんの手法がある中で、今回担当しているプロジェクトに最適な進め方、働き方を選択するサポートがなされます」

――ヘルプが必要であるくらい、アジャイル開発プロジェクトは失敗しやすいということですか?

「デジタルドットAIという会社が出している報告によりますと、ソフトウェアの開発プロジェクトで90%がアジャイル手法を用いているというデータがある一方、アジャイルを使った変革をしようとしているプロジェクトのうち、91%が失敗に終わっているといいます。これでは投資の無駄になってしまいます。その点、ディシプリンド・アジャイルは、単なるITやソフトウェアという枠を超えて、エンタープライズレベル、つまり企業全体レベルで提供することを考えています。本当の意味でのビジネスアジリティを獲得し、蓄積することに貢献できると考えています」

――いまの時代、プロジェクトメンバーが遠隔地や他国にいることもあり得ますが、その辺りは加味されていますか?

「文化などのバックグラウンドが違う人がチームに居ても、ディシプリンド・アジャイルという共通言語でプロジェクト進められます。例えば、同じ国にチームメンバーがいるのか、そうでないのか。あるいは同じ空間にいるのか、そうでないのか、言語、タイムゾーンなどの選択肢は用意されています。その選択によって『その環境、設定であればこういう形で行うのがいい』という回答が提示されます。どのように協業するのか、どうすれば進められるのかを示してくれます。実際、多様性があるチームであればあるほど、よりよい成果が出ることが、ディシプリンド・アジャイルの実績として出ています」

ディシプリンド・アジャイルは、これまで、世界ではバークレイやICBCなどが導入しているという。

NECが「ディシプリンド・アジャイル」を導入した狙い

NECは、DXに取り組む企業として自社の知見を活用し、顧客のさまざまな変革を支援している。今回の「ディシプリンド・アジャイル」導入は、どのような狙いがあるのだろうか。導入に関わったNECのデジタルビジネスプラットフォームユニットでディレクターを務める高市裕子氏にインタビューを行った。

――NECのプロジェクトマネジメントやアジャイル開発の実施状況を教えてください。

「NECはSI(システムインテグレーション)事業の中心であった、お客様の基幹システム構築において、QCD(品質・コスト・納期)の計画をそれにまつわるリスクを管理しながら達成していくという計画駆動型の進め方を採用していました。一方、昨今の変化する市場を背景に価値駆動であるアジャイルを採用し、お客様との共創やシステム開発でも活用するケースが増えています。

お客様と一体となってビジネスゴールを目指すため、指示待ち型ではなく自律的に仕事を進めたり、チーム内の心理的安全性を確保することがより一層重要になってきています。価値観やマインドが大きく変わり、プロジェクトとして管理すべきポイントも異なるため、NECでは代表的なアジャイルフレームワークであるScrum(スクラム)に合わせたマネジメントのポイントやノウハウを蓄積・展開しています」

――「ディシプリンド・アジャイル」導入を決めた背景にはどのようなことがあったのでしょうか。

「DXに必要な組織変革の一環として、変化に俊敏に対応する能力である『ビジネスアジリティ』獲得が必要です。それには大きく2つの課題があります。一つは『組織の多様性』を考慮する必要があること、もう一つは組織としての『統制(ガバナンス)を最適なレベルに設定』する必要があることです。アジャイルを組織全体に広げようとした途端、『品質は大丈夫なのか』『組織として一律の管理や審査ができないとダメ」といった壁にぶつかってしまうケースもあり、NECでもお客様が変革のチャンスを逃さないためのアプローチを模索してきました。

その点、ディシプリンド・アジャイルは、先の課題に対応しビジネスアジリティ獲得の成功確率を高められると考えています。組織の状況が多様であることを前提とした『ゴール指向』の問題解決型アプローチであることと、アジャイルの原則やチームの自律を尊重しつつも『規律を重視』したガバナンスを規定しているという点を特徴としているからです。また一般的なアジャイルフレームワークとの親和性が高く、これらと組み合わせて活用できるという点も採用メリットの一つです」

高市氏によれば、パートナーシップ締結の主な狙いやメリットは次の3つにあるという。

・ディシプリンド・アジャイル活用により、NEC社内の変革によって得られた知見に基づき、顧客向けのコンサルティングを提供できるようになる。

・PMIからのデータ提供を受け、NEC独自のアセットやプラクティスを組み込むことができる。新卒採用・キャリア採用が入り混じる中、互いに経験を活かした工夫や知見をシェアし高め合っていくための共通言語としても役立つ。

・「ディシプリンド・アジャイル」に関するトレーナー資格(Authorized Training Partner)の認定研修の提供が可能に。顧客向けの支援の一環としても活用できる。

――今後、このパートナーシップは、NECの顧客にどのようなメリットをもたらすと考えていますか?

「NECはこれまでも、自社での活用やお客様への変革支援を通じて、アジリティ実現や変革に必要な要素を強化してきました。このような実績を『NECのアジャイル』としてリファレンス化する一方で、個々のお客様固有の課題や状況に合わせたアプローチを実現する手段として『ディシプリンド・アジャイル』を融合し、規律あるプロセスへ高めます。

そしてお客様の変革の一歩としてビジネスアジリティ獲得を支援するとともに、パートナーとして真の目的であるビジネスゴール達成につなげていきたいと考えています」

DX推進に欠かせないビジネスアジリティ獲得、そしてアジャイル開発の最適化。どれも昨今の市場で生き抜くために取り入れなければならないものであるようだ。そして「ディシプリンド・アジャイル」というサポートツールが登場したことは、ある意味、ビジネスアジリティ獲得やアジャイルなビジネス対応が、急務であることを知らせてくれる。

取材・文/石原亜香利

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