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累計販売数2万8000台の大ヒット!コクヨのIoT文具「しゅくだいやる気ペン」を生んだ〝幸せな顧客〟への思い

2022.08.16

Voicy連動企画 DIMEヒット商品総研 vol.1 コクヨ「しゅくだいやる気ペン」

文具メーカーのコクヨから2019年に発売されたIoT文具「しゅくだいやる気ペン」。発売以来、2万8000台(8月初旬現在)を売り上げたヒット商品だ。

今回このヒット商品開発の中心人物である、同社イノベーションセンター学びソリューション事業部 やる気ペングループグループリーダーの中井信彦さんに、開発に至った経緯や開発秘話、今後の展望についてお話を伺った。

*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

コクヨ初のIoT文具「しゅくだいやる気ペン」とは?

「しゅくだいやる気ペン」は、普段使っている鉛筆にアタッチメントを取り付け、スマホ専用アプリと連動することで、子どもの頑張りを見える化しやる気を育むIoT文具。子どもが自ら「書きたい」と思えるような工夫が随所に施されており、親とのコミュニケーションツールとしての役割も担っている。「しゅくだいやる気ペン」の特長について、中井さんは次のように話す。

「中にセンサーが入っていて、その振動に応じてパワーが溜まっていく仕組みです。やる気を『見える化』して子どもは書きたくなり、親御さんには褒めるきっかけが生まれます。褒められるから子どもがますます書きたくなる。そういうコミュニケーションの循環に役立つのが一番のポイントですね。ペンが光り、アプリ側では人の頭の上に木が生える、実がなる、すごろくが進んでいくなど、いろんな見せ方をしています。従来の文房具だとどうしても形や色などハードウェアだけでの表現になると思うんですが、アプリと連動することで、お客様の体験が格段に広がったのではないかと思っています」(中井さん)。

なぜコクヨがIoT文具に取り組んだのか?

では、一体なぜ文具というアナログ商品を扱う同社が、IoT文具の開発に至ったのだろうか。中井さんは、デジタルとアナログの掛け合わせが新しい価値を生み出すと話す。

「文具の総合メーカーとして『今後の文具』がどうあるべきか、どう進化していくかを考えた時に、デジタルと掛け合わせて何か価値を生み出せないかと考えたんです。当社はアナログを一番強みにしている部分なので、そことデジタルを掛け合わせたら〝さらにその先の進化〟みたいなことができるんじゃないかと。私は前職で電機メーカーのエンジニアをしていたということもあり、本当にユーザーさんの生活に役に立つ商品というものに関して、自分のデジタルの強みとコクヨのアナログの強みをうまく掛け合わせれば、面白いものができるんじゃないかというワクワク感みたいなものもあって、挑戦しがいがあるテーマだなと思っていました」(中井さん)。

また、自身の体験からも子どもたちがもっと「書くこと」に楽しさを感じてもらえる商品が必要だと感じたという。

「個人的な話だと、私の子どもが小学校一年生で書くことが苦手だったんです。それを毎日見ていて、このままいくと勉強嫌いという以前に、書くことが嫌いになっちゃいそうな感じで。文具メーカーに勤めている身として、子どもが書くことを好きになるような商品を作れないかと思っていたところにIoT文具のテーマが来たので、個人的にはそこを何か繋げられるといいなというのは思っていました。『書くこと=勉強』とダイレクトに繋がりすぎてしまっていて、その手前でやる気が失せてしまう、折られてしまうのがもったいないというか、楽しさをもっと引き出せるといいのにと思ったんです」(中井さん)。

「見守りペン」の企画から大きく舵をきり「しゅくだいやる気ペン」へ

IoTをテーマに掲げたものの、具体的な商品化に至るまでには長い道のりがあったと中井さんは振り返る。はじめに注目したのが、「書くことが本来持つ力」だったという。

「IoTというテーマ自体はすぐ出たんですけど、何をIoT化したらいいかを議論していました。コクヨというと『キャンパスノート』が代表的な商品で、ずっと『書くということ』に向き合ってきた会社です。社内では、『書くということ』には何か人間の根本的な能力をアップデートするような、そういう力があるんじゃないかと。すごく漠然としているんですけど、みんなそういうものがあるんじゃないかと信じている部分があって、どういう商品に対してIoTでデータを取る意味があるのかを考えた時、筆記具からスタートしたんです」(中井さん)。

開発当初は、共働きの世帯が多いという社会課題に着目し、勤務先から子どもを見守れる「見守りペン」を1年ほど検討してきたという。ところが、その計画は一度頓挫してしまう。

「ターゲットにしたユーザーさんにアンケートを取って、『子ども見守れてないですよね?』と聞いたら『いや、うちの子見守れていますよ』という答えがほとんどでした。メーカーが会議室で考えてしまうと『それって嬉しそうだよね』と思ってしまうんだけど、実際のユーザーからするとone of themで、あまり刺さらない商品だったんです。僕らが勝手に、社会課題を都合が良いように解釈して会議室で盛り上がっていたみたいな感じでしたね。今さらっと言っていますけど、その時はめちゃくちゃ悔しかったです」(中井さん)。

このままだと世の中の人たちが誰も求めてないものを作ってしまうと感じた中井さんは、「見守りペン」の企画を一時ストップ。セミナーに行き、書籍を読み漁ったという。そんな時に出会った本の中に書かれていた「幸せな顧客」という言葉が、次のステップに進むきっかけになった。

「『幸せな顧客』というワードを見た時に、ドキッとしたっていうか、めちゃくちゃ刺さったんですね。今までは自分の商品を『誰が使うのかな』と思っていたんです。使うというシーンしか見えてなくて、その後に幸せになっているかどうかなんて考えたことがなかったんです。これが足りてないんだと気付かされました」(中井さん)。

そこから中井さんは周囲の方に、家庭内で子どもたちがどのように勉強をしているかを動画で撮影してもらい、「今も書く宿題が多いこと」「母親が子どもの学びに自分も深く関わりたいと感じていること」に気付いたという。そこから見守りペンではなく、子ども自ら「やりたい」となるようなものを作ろうと決意する。

「プロトタイプを作った一発目から『宿題やる気ペン(当初は漢字表記)』の名前をつけて、『こういうものをしよう』と。当時はまだ中身が何も伴っていなかったんですけど、子どもにフォーカスした商品として、改めてスタートをしました。撮影してもらった動画を見たことで、こういう子たちが『もっとやりたい』という姿を見た時に、お母さんはすごく嬉しいだろうなって思ったんです。そこからプロジェクトがだんだん大きくなっていったというか、熱を帯びだした感じです。毎回プロトタイプを作ったらユーザーさんに使ってもらって、意見を聞く。それを何回も回していくアジャイル型の開発スタイルで、自分の気持ちを出さずに、波風立ってない湖の水面のように自分は静かにそれを見て、どこからその言葉を発しているのかを聞くようにしていました」(中井さん)。

飽きられない工夫は「すごろく」にしたこと

中井さんは、しゅくだいやる気ペンの開発中に「子どもたちがすぐに飽きてしまうのはないか」という点を乗り越えるのに一番苦労したと振り返る。具体的な商品が決まっていない段階から、クラウドファウンディングを活用。企画からユーザーに参加してもらい「本気の意見」をもらったという。

「開発段階でたくさんの親子に参加してもらって、意見を吸い上げて、ブラッシュアップしていった経緯があるんですけど、その時に『本気の意見』をもらいました。もうめちゃくちゃ刺されまして。『この程度だと子どもは2、3日で飽きちゃう』ということだったんです。当時は、、書いて溜めたパワーにの量に応じてアプリ内のキャラクターの頭にリンゴの木がポンと生えるだけのちょっとシュールな感じの商品だったんです。『子どもの習慣化』には正攻法はあるようなないような世界で、専門家にもご意見いただいたんですけど、解決策が見えなくて。とにかく考えられるすべてを紙に書いて、どういうパターンであれば続くかを試した中から、タイムリミットギリギリで『すごろく』というかたちに行き着いたんです」(中井さん)。

「結果的に最後はアイテムが出るとか、ゴールにご褒美、家族で一緒に水族館に行くっていうのを設定したりできるようにしたりして、そういう親子の会話を作るこのシステム自体が独自のメソッドになったのかなって。だから、この時に追い込まれたけども粘ってできたものは、かなり独自のものになってよかったなと思っていますね」(中井さん)。

子どもに「宿題だけじゃ物足りない!」と言ってもらえる商品に

完成までにはこうした数々の苦難があったものの、「しゅくだいやる気ペン」は発売後、年間1万台ペースで売れるヒット商品となった。

「僕たちがこうなるといいなと思っていたことを、実際にユーザーさんが言ってくれるのがすごく嬉しくて。『自分から机に向かうようになった』とか、『褒める機会が増えた』という声もたくさんいただいています。さらに、親御さんがよく耳を疑ったと言うんですけど『宿題だけじゃ物足りない』と言って、前の夏休みにやらなかったドリルを引っ張り出してきてやるとか、そういう姿もあったりして。開発中は、夜も眠れない日もありましたけど、ちゃんと効果が出て良かったです」(中井さん)。

データを活用しながら、次のステップへ

IoTデータを取得してきたことで、日々花マルをもらっている子ほど継続率が高いことが見えてきたと中井さんは話す。親子関係や褒めの可視化もできてきており、子どもにやる気を起こす要素もわかってきたという。

【参考】しゅくだいやる気ペン・IoTデータから見た「ほめる」の効果

「子どものモチベーション、継続率をいかに上げるかに悩んでいたんですけど、実はこうやって自分たちがデータを溜めていくと、そういうものが見えてきだしている気がします。今後も、子どものモチベーションを探求していくっていうのがやりたいことの一つではあるのかな。世の中の役に立てる一つの視点じゃないかなと思っていますね」(中井さん)。

さらに中井さんは、今後は子どもたち自ら学びたいという〝内発的動機〟を生み出すきっかけを作っていきたいと続ける。

「子どもたちの内なる学びたいと思う気持ちに火をつけるようなことも何か盛り込んでいきたいなって思っています。そこまでできて初めて、「しゅくだいやる気ペン」というものの価値が完成するんじゃないかなと思っているんです。内発的な動機をどう作るかっていった時に、世の中にいる本物のやる気になっている人たちの姿とか、その人たちが世の中をどう見ているのかを、アプリ上で見せられないかなと思いまして。それを考えた時にでてきたのが、日本が世界に誇る海洋研究機関『JAMSTEC(ジャムステック・海洋研究開発機構)』さんと、南極地域観測隊の実施中核機関である国立極地研究所さん。その人たちって、知りたいと思ったら本当にそこまでいっちゃうんですよね。そういうやる気に満ちた大人の人たち、見えている世界をアプリで表現して、すごろくで進んで箱庭を完成させるコンテンツをコラボして作り、増やしているところです。自分の可能性みたいなことにワクワクしてくれる、これからの未来の世界に何かワクワクして、広い世界に飛び出したいって思う子どもたちが増えてくれると嬉しいなと思っています」(中井さん)。

コラボレーション第1弾として、JAMSTEC(ジャムステック・海洋研究開発機構)と海と地球の探求をテーマとした「うみのふしぎの庭」を制作(写真左)。国立極地研究所(略称:極地研)とのコラボレーションでは、南極地域観測隊が挑戦している探究の世界をスゴロク形式で表現。

しゅくだいやる気ペン公式サイト

取材・文/久我裕紀


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