日本の労働者の時間あたりの生産性の伸び率は約30%と上昇する一方で、賃金はマイナス約1%と、わずかながら減少している。
そして、一人当たりの労働時間も減少し続けているのだ(厚生労働省、勤労統計調査:1995~2017年)。つまり、給料はずっと低いままだけれど、自由になる時間は増えている計算になる。
残業をせずに、定時で帰宅できるビジネスパーソンにとっては、時間に余裕ができることになる。あまった時間で副業にチャレンジできる環境が整っている。
今回は新刊書「図解 会社員のためのお金のキホン」の著者で現役FPの井上ヨウスケ先生に、成功確率の高い副業のポイントについて聞いてみた。
ビジネスパーソンが副業をした方が良い理由
――先生、どうして副業した方が良いのでしょうか?
井上先生 副業ができる環境が整ったことや、経済的余裕の確保などいろいろありますが、私がビジネスパーソンに副業を進める理由の一つはFI(Financial Independence:経済的自立)を果たすことができる点にあります。
FIを果たすことができれば、老後の不安や生活のために、しぶしぶ会社に行くというストレスから、確実に解消されますよ。
ある程度の資産を蓄え、余裕ができると、会社への依存度は相対的に減少します。つまり、辞めようと思えば、いつでも辞められる。意味のない残業に対して、堂々と断ることができるようになります。
ビジネスパーソンとして会社に属しながら、FIを確立できた人は最強です。特に現在の様に先行きが不透明な時代は、FIを果たしたビジネスパーソンこそが、ベストポジションであると、私は考えています。FI実現のためにも、副業はぜひお薦めしたい、これからの課題の一つです。
副業は「とりあえず5年」を目指す
――なるほど!では具体的に副業を成功させるポイントを教えてください。
井上先生 最初に副業は1)長く稼げる力をつけるため、2)今の収入をすぐに増やしたい、という2つの目的に大きく分けられます。2)を目的にしたい方は、新しいことを始めるよりともかく今、時給の良いアルバイトを必死で探すことです。一方で、私がこれからビジネスパーソンのみなさんにお薦めしたいのは1)の副業です。
なぜなら、積み上げるスキルや経験値が収入に変わっていく仕事を選んだ方が、長く稼げるからです。自分の成長や変化を楽しみながら続けることができます。また、長く続けられるということは、無意識であってもそれが好きで、ストレスなくできることなのです。
こうした副業に取り組むコツは、「とりあえず5年」です。会社員の人ほど「一生これ一本でやっていく」と気負ってしまいますが、変化の早い現代にそんなビジネスはめったにありませんし、それではスタートを切るのに時間がかかりすぎます。とりあえず経験を積みながら5年続けると、やる前には気づかなかった多くの情報が入って来ます。そうした情報を上手に使って、まずは5年続けることです。続けた上で、次へと方向転換を図ってください。
初期の段階では時間が掛かったり、負荷があるのは仕方がありません。半年から一年は、あまり稼げないかもしれません。特にネットを使った副業では、結果が出るまでに時間が必要です。
私の場合、YouTubeでは登録者数が1000人を超えるのに半年、収益化までには10か月かかりました。でも、失敗を重ねれば、「失敗の原因」がわかります。失敗しなければ、自分に合う長く稼げる仕事にたどり着くことはできません。「とりあえず5年」です。
PC一台で稼げるネットの副業
――とりあえず手を出しやすい副業というとブログやYouTubeといったネットの副業がすぐに思い浮かびます。
井上先生 インターネットを使った副業は手軽さがあり、失敗しても損失が少ないため、人気ですが、収益化は簡単ではありません。ネットの副業は1)広告収入系、2)物販系、の2つに分類できます。
1)は見てもらった数に応じて広告主からお金を稼ぐ仕組みなので、相当数のPVやダウンロードが無いと稼げません。いかにニーズをとらえて面白い物を作るかがポイントです。2)は売るのが大変ですが、広告収入と違って一人でも買ってくれる人がいれば、利益を出すことが可能です。
オリジナリティとニッチがポイント
――1)の広告収入ではコンテンツが重要だとよく言われます。
井上先生 確かに、相当エッジの立ったコンテンツでないと目立ちませんね。ネットを使った副業では、あなた自身の個性やオリジナリティが、大きな武器になります。得意なことは何か、まずは50、できれば100、書き出してください。書き出した項目の中で、本当に得意なものに赤丸を付けていきます。それを組み合わせてあなたのオリジナリティを見つけてください。
私の場合はFPで、役者の経験があり、しゃべることが得意でした。ただFPとして活動を始めた頃は役者という経歴は負の財産であり、それが生きるとは思っていませんでした。金融機関の勤務歴が長い人に劣等感を持っていました。しかし、周りの助言などもあり、役者という経歴の価値に気づけました。なので、みなさんも「こんなことに価値はない」と思わず、得意なこと、人に褒められた項目を100個、書き出してみてください。
書き出した中で、他の人に負けないニッチな分野はありませんか?熱く語れる趣味があれば、それでコンテンツを作ることが可能です。需要が無くてもその世界の第一人者になれて、大化けできるのがネットの世界です。
動画ならUdemyがおすすめ
井上先生 売れるコンテンツがあればUdemy(ユーデミー)もおすすめです。これはオンライン教材を販売できるサイトで、顔出ししなくても売り上げに影響があまりなく、YouTubeよりも稼ぎが期待できます。
ビジネスパーソンならば、Excel、Wordの使い方や営業のノウハウ、効率の良い経理のコツといった内容を販売することができるかもしれません。世界中に販売できるので、英語圏に売り出すことも可能です。
副業での売り上げは必ず確定申告を
――副業を行う際に気を付けることがあれば教えてください。
井上先生 副業で給与所得以外の所得が20万円を超えたら確定申告が必要です。税金の申告は「青」と「白」の二つですが、会社員の副業は白色申告です。アプリを使えば確定申告書や必要な提出書類を自動で作成できます。
最初はとりあえず月別に領収書を保管しておき、所得が20万円を超えたら申告をすれば良いでしょう。よく聞かれるのが会社員の健康保険料のこと。副業の雑所得で稼いでも、保険料は変わりません。
また、副業で稼いだ金額が給与所得と同レベルにならなければ、事業所得とは認められません。副業で個人事業主となって、青色申告をするには、かなりの副収入が必要です。
これから副業を考える人へエールとアドバイス
――最後に井上先生からこれから副業をしたい人へエールもしくはアドバイスがあればお願いします。
井上先生 副業時間のコツはスキマ時間の活用です。多くの人はスキマ時間をスマホで埋めますが、1日30分でも20日あれば、10時間です。10時間あれば何かできるはずです。たかが10分と思わずに、その10分を有効活用してみてください。僕も講師業を中心に活動していた頃から、動画中心のビジネスに移行したときは副業のようにスキマ時間を活用して動画制作をしていました。地味ではありますが、その積み重ねが大切です。ぜひ5年後の自分のために頑張ってください!
――ありがとうございました。
副業でFI(Financial Independence:経済的自立)を果たすことができれば、ブラック企業なども減って、働きやすい環境が整うかもしれない。そんな夢と可能性がもてそうな副業。「図解 会社員のためのお金のキホン」を読み込んで、具体的に進めてみたい。
著者 井上 ヨウスケ 先生
元役者のファイナンシャルプランナー。2013年、独立系ファイナンシャルプランナーとして事務所を設立。役者時代に培った”話すスキル”を生かし、講演を中心に活動。講演回数は150回以上。2019年にYouTubeにてお金の知識を学べるチャンネルを開設し、登録者数10万人超。数字だけにとらわれがちなお金の話に”人間らしさ”を加えて、「お金に使われず、お金とどう付き合っていくのか?」を中心に発信。2021年に大阪から高知県に移住。著書に「38歳までに受けたい『甘くない』お金の授業(ぱる出版)」がある。
YouTubeチャンネル「井上ヨウスケ/井上FP事務所」
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文/柿川鮎子
編集/inox.