現在発売中の「DIME」最新号(9・10月合併号)では、2022年上半期に注目された様々なジャンルのトレンドキーワードを取り上げている。その中から、スペースなどの関係上、本誌では収まらなかった専門家の詳しい解説を「@DIME」ではじっくりと紹介。本誌とともにチェックしてほしい。
【KEYWORD:BEV】
該当車種の販売台数は対前年比150%以上。ハイブリッドが先行する日本でも普及はさらに進む!?
世界各国でBEV(バッテリーEV)が急拡大している。その背景にはいくつかの要因がある。ここではわかりやすくその理由と、BEVの現在地について説明しよう。
まず考えるべき視点は、2015年のパリ協定で示した2050年のCO2削減で、BEVが大きな役割を演じると考えられているからだ。しかし、BEVが環境に貢献できるのは、再生可能なエネルギーで電気を作った時だけに限定される。仮に石炭発電で電気を作ってBEVで走ると、LCA(ライフサイクル・アセスメント)の視点ではプリウスよりもCO2が増えてしまう。エネルギーとクルマについては、生産段階から廃棄までの総合的な環境負荷を考える必要があるのだ。
2番目の論点は、各国で微妙に異なるBEVを推進するスタンスだ。欧州では、ディーゼル不正問題とパリ協定が引き金になったが、アメリカではテスラ社の成功でBEVには大きなビジネスの可能性を見いだしている。また、カリフォルニア州のように、エンジン車に厳しい排ガス規制を強いてきた地域では、BEVが〝ZEV(ゼロ・エミッション)のトップランナー〟だという考えだ。なお、中国のスタンスは非常にわかりやすく、エンジン車では日本やドイツに技術でかなわないので「BEVで勝負する」と、ずっと昔から考えている。一方の日本では、ハイブリッドが先行。実質的なCO2低減の優等生なので、あえてBEVの普及を急がなくてもいい、という考えである。
とはいえ、2022年はBEV元年となりそうだ。トヨタ・レクサス・SUBARUの各ブランドからはミッドサイズのBEV、日産から『アリヤ』(SUV)と『サクラ』(軽)といったBEVがそれぞれ登場する。ハイエンドのBEVでは、ポルシェ『タイカン』やアウディ『eTronGT』が人気だ。これらプレミアムなSUVとコンパクトなBEVは売りやすいものの、ミッドサイズのBEVがユーザーの気持ちをつかめるかどうかが課題だろう。
このように各国のお家事情を考えると、アメリカ、欧州、中国ではBEVの充電インフラが進み、日本では考えられない勢いでBEVは増えるかもしれない。ただし、まだ多くの課題が存在するのも事実。最近、日本で市販されるBEVも故障などが頻繁に報告されているので、購入を検討している人は、急いで乗り換えないほうがいいだろう。
トヨタ自動車がSUBARUと共同開発した『bZ4X』(車両本体価格:600万円)。以前から販売しているクロスオーバーSUV型がベースで、二次電池で作動する電気自動車である。
【KEYWORD:サポートカー限定免許】
5月13日の道路交通法改正で始まった新制度。高齢者運転を家族で考える機会に!
「サポカー限定免許」という制度が2022年5月13日に施行された。免許更新の際、国が定めた被害低減ブレーキ(自動ブレーキというと過信されやすい)を搭載しているクルマに限定して運転することを申請できるのが特徴だ。
ある意味、自己啓発的な制度なので〝サポカー免許〟を申請すると、被害低減ブレーキが装備されていないクルマは乗れないことになる。免許証には「サポートカー」と記載される。
同免許証の対象となるサポートカーには、少しわかりにくいが、現在2種類が存在する。その一つは従来から存在する被害低減ブレーキに加えてペダルを踏み間違えた際の加速抑制装置が付くタイプと、2021年11月以降の国産新車に適応される被害低減ブレーキを搭載する車種だ。
そんなサポーカーの限定免許制度とともに、今回の道路交通法改正で重要なのが、高齢者免許の更新制度を改正したこと。75歳以上で違反歴がある人に限り、更新時には実技検定が行なわれる。従来は指導だったが、今回は検定なので、ある点数に達しないと落第に。これが一次試験で、二次は認知症の検査も受けなければならない。試験に落ちたら何度でも挑戦できるが、更新制度の改正により、警察庁が免許を取り上げることを初めて決断した意義が大きい。これはもちろん、池袋で起きた悲惨な事故からの教訓である。
こうした免許制度とクルマの安全性の向上により、どこまで事故を低減できるのか、明確にはわからない。しかし、高齢者と日常を共にする家族は、クルマの運転についてよく話し合ったり、安全な場所で運転を練習したりすることも重要かもしれない。
国が定めた被害低減ブレーキ搭載のクルマに限定して、運転することを申請する制度。運転免許証には「サポカー」と記載される。
サポートカーには、被害低減ブレーキ+ペダル踏み間違い時の加速抑制装置が付くタイプなどがある。
国際モータージャーナリスト
清水和夫さん
1972年からプロドライバーとしても活躍してきた。著書には『クルマ安全学のすすめ』(日本放送出版協会)などがある。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員。
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取材・文/田尻 健二郎(DIME編集室)