2014年に初のサウナメディア『Saunner』(小学館)が発刊。その後ムーブメントは盛り上がる、2020年頃から一大ブームになった。今年、『Saunner 2022 』(小学館)が発売された今、サウナの熱狂から、日常の一部として定着しているようにも見える。
そんな今、注目されているのは、地域色が豊かに現れているサウナ文化。「サウナ旅」も注目されている今、注目なのが「ふるさと納税」の返礼品としてサウナだ。知る人ぞ知るご当地サウナが続々と返礼品として登場しているのだ。施設の利用券だけでも千葉県船橋市、大分県竹田市、鹿児島県知名町など20以上の自治体に登場。
グッズも豊富に出ている。大阪市泉佐野市のサウナハットや山梨県富士吉田市の「サ水」(ミネラルウォーター)、北海道弟子屈町のヴィヒタ、奈良県宇陀市はテントサウナも返礼品として選べる。多くの自治体が、サウナを通じて自治体の魅力を広めているのだ。
※自治体の数は、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」より編集部調べ。
北海道当麻町の「キャンピングサウナバス」も利用できる!
サウナ施設は地方色が豊かだ。自然との一体感を楽しむ山や海辺、湖畔のサウナも人気だ。食堂に地方の特産品が楽しめたり、名物スタッフとの交流を目的に、わざわざ旅に出る人もいる。
そこで、特筆すべき「サウナ返礼品」を2つ紹介する。まずは、北海道当麻町の「キャンピングサウナバス」だ。10万円以上寄付をすると、24時間の利用ができる。
内部を見ると、9人乗りのバスの後部にサウナストーブが設置されている。ここには、水をかけてロウリュを楽しむことも可能。テーブルもあり、就寝時に畳むと2~3人ならば脚をのばして眠れる。
シンクや電子レンジ、冷蔵庫、テレビも装備。運転席以外の壁や床には当麻町産のトドマツ材を使用しており香りもいい。川辺に停めれば、水風呂として清流に身を横たえることもできる。冬ならば“雪ダイブ”も可能だ。
当麻町で広報とふるさと納税を担当している弘中さんにお話を伺った。
「この企画は、2020年末に実業家の前澤友作氏が『ふるさと納税8億円企画募集』を行ったことが発端です。当麻町の村椿哲朗町長が、“テレワークの拠点(精神と時の部屋的なととのうサウナ完備)を整備したい”とこの企画に応募しました」(弘中さん 以下「」内同)
前澤氏の8億円の企画は、約150の自治体から応募があり、応募した全自治体に500万円の寄附が贈られた。このお金の使い道をいち早く決め、個性を出したいと考え、始めたのが「Made in 当麻町『“ととのう”町』サウナプロジェクト」だった。
当麻町は、旭川市の東側の道央部にある。自然が豊かで「食育 木育 花育」をまちづくりに掲げており、アクティビティも充実している。
「町内に『当麻山』(263m)という山があり、その周辺にはフィールドアスレチックコースやキャンプ場、サウナもある温浴施設『ヘルシーシャトー』もあります。ワーケーションの需要もあると想定し、再整備していきたいという思いもありました」
プロジェクト名に“Made in当麻町”とあるように、バスは町内の企業が手掛けた。
「サウナバスを製作したのは医療器具などの開発製造で知られる町内の『トウマ電子工業』(1972年創業)です。専門的な除菌脱臭機能を持つ装置や、温熱治療用の遠赤外線シートなどを制作しており、全国の医療機関や施設、ホテルなどにも採用されているんです。同社はサウナルームやキャンピングカーの製作も行っています」
町がトウマ電子工業に相談すると、この会社が所有していたキャンピング仕様のバスを使えば、自社投資で制作できると回答を得た。そして、約3カ月の工事期間を経て、サウナバスは完成した。ちなみに先述の500万円は当麻山内にサウナバスが停泊できるスポット整備に使われた。
「普通免許で運転できますが、バスという特殊な車輛です。走りながらサウナはできませんので、特記事項についてはわかりやすいようにまとめました。今後はレンタカーとしてだけでなく旅行としてのパッケージング化もしていきたい考えています」
このサウナバスで、当麻町の知名度は全国区になった。
「メディアの露出も増えました。これまで我が町が取り上げられるのは、皮が真っ黒の『でんすけすいか』が多かったのですが、今回のサウナバスは街づくりも含めて、認知度が広がったと考えています」
とはいえ、10万円の寄付はハードルが高い。寄付をせずとも使えるのだろうか。
「もちろんです! レンタカーとして申し込みください。24時間3万円(税込)でお貸出ししております。この需要は大きく、全国からサウナバスを楽しみに多くのサウナ―の皆さまが足を運んでくださいます」
サウナ室の内部。サウナストーブに水をかけると、木の香りがフワッと広がり心地いい。
当麻町は、北海道を代表する優良米の産地であり、北海道農協米対策本部による米ランキングでは、12年連続1位を受賞している。また、『当麻鐘乳洞』などのスポットもある。
「街にはサウナがある温浴施設もあります。ぜひ遊びに来てください」
老舗サウナの利用券も返礼品に
名サウナと名高い老舗サウナもふるさと納税の返礼品に登場している。利用券単体だったり、利用券+ドリンク、利用券+サ飯(サウナ飯)のセットだったりと、そのバリエーションは豊かだ。
その一例を挙げると、船橋グランドサウナ(千葉県船橋市)、「神戸サウナ&スパ」(兵庫県神戸市)、サウナイーグル(愛知県知立市)、古戦場(岩手県一関市)などだ。
そこで注目したのは、『Saunner 2022』にも登場し、大垣サウナの利用券も返礼品(寄付額8000円~)になっていることだ。岐阜県大垣市の担当・守岡さんにお話を伺った。
「大垣市も、日ごろから新たな返礼品を探索しています。そこで、全国的なサウナブームの影響もあり、我が市にある大垣サウナが聖地となっていることを知りました。そこで、返礼品への登録を依頼したところ承諾をいただき登録に至りました」(守岡さん・以下「」内同)
大垣サウナは、『日本サウナ史』を編纂した草彅洋平さんが愛するサウナとして知られている。男性専用で、サウナ室はじゅうたん張り。全国でも有数の名水地であり、ふんだんに湧く地下水も魅力のひとつ。
施設はどこもぴかぴかで、ホスピタリティにあふれる接客、岡田昌子社長の人柄に惹かれて、全国からファンがやってきくる。
「当初は東海エリアが中心だと思っていたのですが、関東・関西の大都市部を中心に、全国から返礼品の申込みをいただいています」
水風呂も有名な大垣サウナ。
当麻町も大垣市もふるさと納税の返礼品にすることで、自治体の認知度を上げ、ファン層を増やしたという。国内の旅が中心になる日々はまだ続きそうだ。サウナはこれからも地方創生のキーワードになるだろう。
ありふれたサウナ情報では満足できない熱いファンのために!
2014年3月に日本初のサウナ専門誌として誕生した伝説のバイブル『Saunner』。6月30日に発売となる最新刊『Saunner 2022』が発売になりました!
今回は前回以上に編集部による偏愛たっぷりの特集企画が満載!
「ととのう」だけでは満足できなくなったサウナーたちへ、サウナをもっと深く楽しむためのヒントや新しい視点を先輩サウナーやサウナ施設に取材。サウナってまだまだ奥が深いんです。
定価1320円(税込)
発売日2022.06.30
判型/頁B5判/128頁
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104258
“ととのう”という言葉もすっかり定着し、有名どころサウナは一通り回ったというサウナーも増えました。しかし、本誌は言いたい!「でも、その先があるんだよ!」 と。表紙はサウナ歴38年、高橋克典さんです!
取材・文/前川亜紀