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ほめる検定、レゴで作品作り、暗闇でコミュニケーション、ユニークな研修プログラムを導入する企業の狙い

2022.07.28

近年、企業の人材は採用強化のため、またリスキリングという観点から、ユニークな企業研修を取り入れている企業も多い。農業研修から、無人島サバイバル、パパ・ママなりきり研修など面白いものもある中、今回は新時代に対応する人材を養う3つのユニークな研修を紹介する。

今、求められる人材を育成するユニークな研修3選

1.ほめる達人を育成する「ほめ達!検定」の研修

コーポレートブランディング支援を行う株式会社揚羽は、全社員の「ほめる力」を養うことを狙いに、ビジネスコミュニケーションの質を高める検定試験「ほめ達!検定」を取り入れている。検定に合格するには、ほめる達人から「ほめる力」を学ぶセミナーを受講する必要があることから、受講と検定合格のためのセミナーを社員研修として実施している。

「ほめ達!検定」のレベルは3級から1級まである。「ほめ達!」とは、一般社団法人 日本ほめる達人協会によるもので、「目の前の人やモノ、仕事で言えば商品やサービス、出来事などに独自の切り口で価値を見つけ出す『価値発見の達人』のこと」だという(一般社団法人 日本ほめる達人協会公式サイト引用)。

ほめ達!検定で培われる「ほめる力」とはどのようなものか。揚羽によれば、相手とのコミュニケーションにおいて、自身の意思や発想と異なる意見が出た際に、すぐに否定したり代案を出すのではなく、まず相手の発想や自分にない視点をほめたり、部下や後輩メンバーの力量が期待に達していない場合にも、まずはそのアウトプットの個性や真摯な姿勢をほめたりすることで、不足している点、改善してほしい点を否定的な指導でなく“伸びしろ”として伝えることができる力だという。

そこで同社では、クライアントや企画担当メンバー同士のコミュニケーションの生産性を最大化し、よりクオリティの高い業務の遂行を目的にほめ達!研修と検定を取り入れているそうだ。

●導入背景

なぜこの研修と検定を取り入れたのか。代表取締役社長の湊 剛宏氏は次のように述べる。

「ほめたほうが良い空気になるからです。モチベーションも上がり、業績向上にもつながります。社員同士で理解し合おうとする風土ができ、心理的安全性の向上にもつながると感じています。結果的に、いいチームワークでプロジェクトを進めることができ、円滑なコミュニケーションだけでなく、面白いアイデアや改善案が色々な社員から頻繁に出てくるようになります。お客さまからも『気持ちのいい会社・社員』だと思われ、ファンになってもらえるきっかけになるはずです。

また、名刺に『ほめ達検定○級』と書いていると、『これは何ですか?』と興味を持っていただけることが多く、名刺交換時のアイスブレイクにも活用できています」

そして時代背景への配慮やSDGsへの貢献の意図もあるという。

「ほめることはあくまで手段であって、本質は、物事を多面的に捉えるというところにあります。VUCA時代に対応していく組織・人材になるには、多角的な視点で人・もの・ことを見る力をつけることが必要で、円滑で活発なコミュニケーションが図れるようになるはずだと考えています。

SDGsへの取り組みが不可欠となっている今の時代で、新しい価値を創造していくことの大切さを学び、お客さまと共創を実現していくことで、揚羽はサステナブルな社会の実現に寄与していきたいです」

●導入後の成果

このほめ達!研修・検定により、どのような成果が出ているのだろうか。

「導入後、メンバーのマネジメントの意識に変化を感じています。導入前は当時、揚羽が制作会社の色が濃かったこともあり、マネジメントも職人気質で『できて当たり前・やって当たり前』という風潮がありました。研修を導入してからは、メンバーそれぞれの目線に合わせて丁寧に接する社員が増えてきました。今では、互いをほめ合う・理解しようとする文化が根付いています。ほめ達研修以外の要因もありますが、業績も向上しています」

●ほめ達!研修の様子

2022年5月17日、同社では「ほめ達!検定 3 級」の社内研修を公開で実施した。これは各レベルの研修を受けた後に検定試験を受検する、1日完結の研修となる。

前半には、ほめ達人による生き方セミナーが行われた。

ほめるというのは、相手をコントロールするためでなく自分の心を整えるためにすることであり、「人、モノ、出来事」の中で一見ネガティブに見える場合でも、価値を見つけて相手に伝えることだという。ほめることで自分の心にも余裕が生まれるため、人をほめられないときは、自分に余裕がないときだといえるそうだ。

後半は、1問ずつ問いに答えていくワークが行われた。問題は答え合わせするわけではないため、基本的にワークに参加すれば3級に合格できるそうだ。

ワークでは、例えば「自分が言われたい言葉を5分でできるだけ多く書き出す」ことを行い、書き出した後、特に嬉しい言葉をいくつか選ぶということが行われた。実は、それが「なりたい自分」であるため、「日頃から意識しよう」と伝えられた。

また、「一般的な短所を長所に言い換える」「周りの人の素晴らしい点を書き出す」などの問いのほか、「自分にとって人生とは、仕事とは、家族とは、友人とは何かを考えてみよう」というワークも行われた。また、「すごい、さすが、素晴らしい」などのほめるテクニックが紹介されるシーンもあった。

最後に参加者全員が3級に合格し、認定証が授与された。

ほめ達!検定のための研修は、揚羽のように営業やコンサルティングなど対外的にコミュニケーションを行う企業はもちろんのこと、社内コミュニケーションを活性化させるためにも有効といえるのではないだろうか。

2.レゴ・ブロックを用いて潜在能力・意識を引き出す「LEGO SERIOUS PLAY」

子どもの頃、レゴ・ブロックを用いて遊んだ経験があるだろう。そのレゴ・ブロックを用いて企業研修にも取り入れられているメソッドがある。「LEGO SERIOUS PLAY(レゴシリアスプレイ)」だ。複数人が集まり、レゴ・ブロックを使いながらワークショップ形式でこれまでにない会議を行うものだ。

ワークショップでは、レゴ・ブロックを使って立体的な作品を作る。そしてその作品を通じて参加したチームの個々人が、自分の考えを素直に表す。また、他者から、多角的な視点で自らの考えに啓発を受ける。つまり「言葉で表現しにくい内容を具体的な作品にし(可視化)、他者に語ることにより伝え(共有)、質問を受けることにより、本当に伝えなくてはならないことに自ら気がつく(気付き)」という流れで行われる。

出典:「レゴ シリアスプレイとは?

チーム全体がこのプロセスを共有することにより、個々人の考えが次元の高い、ダイナミックな考えへ統合・昇華することができる。それにより企業のチーム内で「ものの見方を共有していく」ための手段やプロセスを学ぶことができるという。

よくあるビジネスの会議の場では、自分の価値観をうまく表現できなかったり、「論理的でなければ受け入れられないのではないか」と遠慮したりして話せなかったりすることがある。一方で、レゴ・ブロックで作った作品は、自分の内観をそのまま反映させることができるし、ワークショップでは全員が自分の意見を他のメンバーに聞いてもらえる場が設けられる。このメソッドは、いわゆる「目的を持ったプレイと組織学習が融合した道具」だ。

●チーム内でものの見方を共有していく必要性

同メソッドについて、開発元であるロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ社のLEGO SERIOUS PLAYマスタートレーナー協会認定 トレーナー・オブ・ファシリテータである石原正雄氏にインタビューを行った。

同社によれば、LEGO SERIOUS PLAYを通じて、チーム内で「ものの見方を共有していく」ことができるという。なぜ今の時代、求められているのだろうか。

「予測できない出来事でビジネスが大きく影響を受けるVUCAの時代には、一人のリーダーの知識や経験、知恵だけでは対処できないのが現実です。チームメンバーにはリーダーを含め、互いが知らない隠れた知識、経験、知恵が眠っています。これを引き出すことが大切と考えます。

LEGO SERIOUS PLAYを企業研修として取り入れることにより、ものの見方の共有を実現することで、チームと組織はVUCA中の困難な課題に挑戦できるようになります。さらに全員がコミットできる新しい合意形成の方法で、目指すべきゴール、心から実現したいビジョンを明らかにすることができます」

ファシリテーションスキルを高めるため、働き方改革を推進するための企業研修として導入している企業もあるそうだ。多様な用途での活用のしがいがありそうだ。

3.暗闇で対話してコミュニケーション能力を磨く「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」

一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが提供するビジネスワークショップの一つ「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は「暗闇」の中で対話し、コミュニケーション能力を磨くユニークなものだ。

1988年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケにより発案された後、これまで世界41カ国以上で開催され、900万人を超える人々が、日本では1999年11月の初開催以降、24万人以上が体験しているという。

暗闇の中では、性別、年齢、容姿、障害、肩書きなどを失う。また、日常では簡単にできる作業が、暗闇ではできない。純度100%の真っ暗闇の中、視覚障害者のアテンドのもと、参加者同士で協力・協働し、利用目的に応じてさまざまなワークを行う。

ワークのイメージ

例えば、メンバーで協力して一つのアウトプットを引き出すワークでは、視覚が閉ざされた中、創意工夫をしながら協力関係を築き、目標に向けて取り組む。論理的コミュニケーションを深める、クリエイティビティを刺激するなど利用目的に応じたワークを行う。

このワークショップを通じて、チーム目的を達成するための、自己発信・情報共有・相互理解、そして互いに助け合い思いやることの重要性を体感的に学び、日常のコミュニケーションを省みるきっかけを生み出すという。

●開発のきっかけ

同ワークショップを提供するダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」渉外セクションの石川氏は、開発のきっかけについて次のように述べる。

「ダイアログ・イン・ザ・ダークはドイツ人の哲学者のアンドレアス・ハイネッケの発案で生まれました。ハイネッケはドイツ人を父に、ユダヤ人を母に持ち、自身のルーツの複雑さに悩み、哲学を勉強するようになりました。ラジオ局に勤務していたハイネッケは視覚障害者の同僚と出会います。彼との出会いを通して、視覚障害者の持つ文化と高い能力を知ります。このことをきっかけに盲人協会へ転職し、目が見えない人たちと見える人たち対等な立場で接することができるツールとしてダイアログ・イン・ザ・ダークの仕組みは生まれました」

●コミュニケーション能力の高まりによって信頼関係が醸成される

このワークショップは、コミュニケーショ能力を高めることができるという。

「純度100%の暗闇は、晴眼者にとって非日常です。自分の声の存在や考え、感じていることを自ら言葉で発信しなければ周囲に伝わりません。また、相手の言葉に耳を傾け『聞く』ことに集中します。デジタルでのやりとりが可能な現代社会において、あえて言葉による本質的なコミュケーションを行うことで、他者の温かさを知り、相互理解が深まり、チーム内での信頼関係が醸成されていきます。そして研修を通して本質的なコミュケーションに気づくことにより、組織内のチーム力・生産性の向上につながります」

●企業研修として取り入れることのメリット

同研修を企業が取り入れると、どのようなメリットがあるだろうか。

「ルールの一つに『視覚障害者がアテンドをする』ことがあります。日頃、弱者とされる視覚障害者が暗闇の中では頼もしい存在になり、参加者は彼らだからこそ持つ能力・感性を知ります。同じ大きさ・形のレンガを積んで画一的に強固にしていくのではなく、『石垣』のように様々な形のものを組わせるからこそ、『強靭』さが生まれる、組織も同じことが言えます。

障害者・外国人・女性などのカテゴライズをするのではなく、『○○だからこそ、できること』を知り、ひいては『自分だからこそ、できること』を一人ひとりが認識し、掛け算していくことがダイアログの考える『真の多様性(ダイバーシティ)』です。そして、ダイバーシティは新たなイノベーションの種につながります。ダイアログでの体験はその多様性に気づく大きなきっかけにもなります」

●導入効果

すでに日本では600社以上、企業研修として取り入れられているそうだ。どのような効果が出ているのか。3つの事例を紹介する。

・役員向けに中期経営計画会議前に研修として実施したところ、日頃発信の少ない役員からも意見が多くあがり、活発な意見交換・議論につながった。

・在宅ワーク、オンライン会議が多くメンバー間の人間性がわからず、業務を行う上で不安が多かったが、暗闇内で本音でのコミュニケーションを通して、日頃の不安感が払拭された。

・前年度はコロナ禍で、対面での新入社員研修を行うことができず、オンラインで実施したが新入社員同士の親睦が深まらず、チームワークが醸成されなかった。そこで今年度は対面形式のダイアログ・イン・ザ・ダークでの研修を実施したことにより、新入社員同士のチームワーク力が大きく向上し、エンゲージメントの向上につながった。

視覚障害者によるアテンドと暗闇の中でのワークショップは、社内では独自に行えない希少な研修だ。その分、得られるものも希少なものと言えるのかもしれない。

3つのユニークな研修を紹介してきた。どれもユニークではありながら、それだけでなく、今の時代に求められる人材を育てる研修といえそうだ。会社員として気になる研修があれば、会社に掛け合ってみてはいかがだろうか。

取材・文/石原亜香利


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