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LINE NEWSが365日稼働する校閲チームを作った理由

2022.08.11

 LINEのLINE NEWSは、月間7700万人(2021年8月)ものアクティブユーザーがいて、その友だち数は3300万人以上(2022年7月)なのだとか。コミュニケーションツールのイメージが強いかもしれないが、LINEはニュースの接触媒体としても存在感が大きくなっているのである。

 こうした背景もあり、LINE NEWSではファクトチェックにも関心を持ち、アクションを始めている。

「基本的にLINE NEWSはメディアさんから情報提供していただいているので、われわれ自身ががっつりファクトチェックをする、というスタンスではないんですね。ただし、ファクトチェックの姿勢には賛同していますし、われわれとしてやれる簡単なファクトチェックには取り組んでいます。とくにディスインフォメーション(故意の虚偽情報、またはそれの流布)のようなもので、不安を煽るような情報を出さないように気をつけています」(LINE 校閲チーム/マネージャー・前川静剛氏)。

LINE NEWSのあゆみのおさらい

 少し基本的なところだが、LINEのニュースの取り組みについて、再確認しておきたい。大前提として、LINE NEWSは、スマホのLINEアプリで閲覧する。これはLINE NEWSがコミュニケーションサービスから発展したことと無縁ではない。

 LINE NEWSは、2013年からスタートし(当時のプレスリリース)、2014年4月にLINE NEWS DIGESTを導入した。これと同時にLINE NEWSのアカウントを友だち登録し、トーク画面からLINE NEWS DIGEST、そしてLINE NEWSのホーム画面へ遷移する現在のスタイルが採用される。2020年9月には友だち登録が3000万人を突破。紙や放送など旧来のニュース媒体離れが進む一方で、新しいニュースとの接触方法として定着する。

 この過程で、トーク画面→LINE NEWS DIGEST→ニュース記事の画面というニュース体験を、情報提供元に開放したのが「LINEアカウントメディア」だ。

「LINE NEWSのしくみをメディア各社に提供し、運営もおまかせしているのが2015年12月にスタートした『LINEアカウントメディア』です。ここでは全国紙や地方紙、テレビ局はもちろん、ファッション誌やライフスタイル誌、人気Webサイトなど、幅広い分野のメディアに参画いただくことで、ユーザーに多様な選択肢を用意しました。現在400を超えるメディアにご利用いただいています」(LINEポータル&サーチアライアンスチーム・清水柚里氏)

 その後、アプリにニュースタブを導入(2017年2月。当時のプレスリリース)されて、ほぼ現在のサービスのスタイルが整う。なお、ニュースタブの導入に伴い、校閲チームが編成されたことがきっかけで、「校閲」チームが設けられた(詳細はこちら)。

中央画面がLINEアプリのトーク、右画面がLINE NEWS DIGEST、左画面がLINEアカウントメディア。トーク画面の下段には、LINE NEWSのトップページへ直接アクセスできるニュースタブがある。LINE NEWS DIGESTとLINEアカウントメディアは、写真+見出しの記事が3本、見出しのみの記事5本という構成は同じになっている。赤線で示したのはトーク→LINE NEWS DIGEST、トーク→LINEアカウントメディアへの遷移。LINE NEWSのトークには、8時、12時、20時、22時に通知が届き、新しい内容に更新される。LINEアカウントメディアの更新などの運営はメディア各社が独自に設定している。

LINE NEWSのトップページ。赤枠部分は各ユーザーごとに内容が変わるテーラーメイド枠、青枠部分はその日、その時の時事・スポーツニュース、黄枠部分は世間で話題になっていること、人々の関心が高いことなど、利用者の興味を喚起するニュースで、ユーザー属性で内容が変わる。

人の目・人の手を入れてチェックする編成+校閲

 すでに触れたとおり、LINE NEWSの内容は情報提供元から配信されてくる。よって、本質的なファクトチェックはメディア側に任せるしかない。では、それだけいいのか、というと、そうではないというのが、前川氏らの校閲チームの取り組み。

 たとえば、見出しなどは元記事のものがそのまま使えるわけではないため、LINEが制作する。見出しは文字数などの制約があるほか、「わかりやすさ」や「おもしろさ」を優先するあまり事故が起きてしまうこともある。詳しくは触れないが、過去には少なからず、そうしたケースがあった。

 このほか、「校閲」チームでは、配信された記事をチェックすることもある。

「完成したものを配信していただくのが前提ですが、人のやることなので限界があります。たとえば、元記事のイベントの日付などが間違っていたりすると大変ですよね。そうした最低限の事実確認などはしています。また、ときには、複数のメディアの記事を比較して確認をしたり、その記事の原典に当たってみたり、といった確認をして、記事の掲載をしています。

 同じことを編成チームでもしているのですが、私たちも同じ作業をして、ダブルチェックをしているイメージです」(前出・前川氏)。

 ただし、その校閲の対象はLINE NEWSに配信される記事すべてではない。上画面のLINE NEWSのトップページのうち、青枠と黄色枠で囲った部分は、編成チームが記事の選択を行ない、校閲チームもチェックする。が、赤枠で囲ったエリアはAIやロボットがユーザーごとに異なる内容を自動表示している。1日約1万本の記事から自動的に選び、表示するものなので、チェックが及ばない。とはいえ、野放図にならないように、閲覧数が不自然に多いものや、掲載ポリシーに反するものなどはチェックしている。

「たとえば性的に過激な表現や、読者に配慮が必要な内容ゆえに閲覧数が増えてしまっているものは、チェックして適宜対応しています。また、LINEの掲載ポリシーに抵触するものは社内で検討をするなど、メディア様とのコミュニケーションを通して対応します」(LINE編成局・葛西耕氏)。

 LINEとメディア企業は、LINE NEWSの掲載ポリシーに同意したうえで情報提供を始めている。が、運用が始まってから、当初予定していなかったことも起こるようだ。たとえば、運営会社の親会社の変更に伴って方針が変わるなど、理由は不明だが、少し過激なコンテンツが目立つようになることなどがあるとか。

 とくにネットメディアは変化が激しく、運用も変化することが多い、と前川氏は話す。ときには、「最近、きわどい記事が多くなりましたねぇ」といったことをメディアと話し合い、お互いにポリシーや事情を理解したうえで、配信内容を調整してもらうケースもあるという。

 フェイクニュースが語られる際、SNSなどのプラットフォーマーの運営が問題視されることもあるが、こうした現場の話を聞くと、メディア側にも課題はあるはず。このあたりは、ユーザーとして頭に入れておくべきだろう。

2022年5月に制定されたLINE NEWSの掲載ポリシー。メディア提携の際は事前審査はもちろん配信内容についても継続的に確認していることを明示している。葛西氏が触れた「読者に配慮が必要なケース」は、遺体写真や自殺報道など、心的ダメージが大きいものなどが該当する。

認定NPO法人 ファクトチェック・イニシアティブに参画

 LINE NEWSは、2020年5月にファクトチェックの普及活動を行なう「認定NPO法人 ファクトチェック・イニシアティブ」の正会員に参画した。これに伴いLINEでは、同団体がファクトチェックした記事をLINE NEWSに掲載しているほか、ユーザー側に働きかけて、フェイクニュースによる被害を防ごうとしている。

「ニュースをチェックすることには限界がありますが、ユーザーの心構えをサポートすることで、怪しい情報にすぐ反応するということは避けられるはず。そうしたスタンスで、ユーザー喚起の取り組みを始めました。最近では、ウクライナ侵攻に関連し、気持ちが動くような動画を見せられたときの心の準備などをわかりやすく解説しました。

 このほかファクトチェック・イニシアティブが検証した記事にリンクをつけたり、多面的な見方を提供するなど、ユーザーに働きかけるというアプローチをしています」(LINE 編成局・杉本良博氏)

 とはいえ、ユーザーのリテラシーの話はファクトチェック対策とは少し話しがズレる。LINE自らがファクトチェックへの取り組みを強化する動きはないのか。

「プラットフォーム事業者として、ファクトチェックやディスインフォメーションの対策としてより実効性の高い対策が求められており、現在これに向けての検討をしています」(前出・前川氏)とのことなので、今後何らかの動きが明らかになるのだろう。

2021年8月に配信した「コロナワクチンをめぐるデマ、惑わされないためには?」。“わかりにくいけど、知っておくべきこと”を解説するイラスト動画「NEWS グラフィティ」のコンテンツで、このほかにも「成人式はどうなる?成年年齢、18歳への引き下げで変わること」や「大雨をもたらす「線状降水帯」、気象庁が発生情報を発表へ」といったものが配信された。ファクトチェックではないが、杉本氏が話すように、利用者の啓発活動という意味もあるようだ。このほか、ロシアによるウクライナ侵攻のように注目度の高い話題については、まとめ記事のなかに<ウクライナ関連のファクトチェック結果(ファクトチェック・ナビ)><フェイク動画にだまされないために(NHK)>など、フェイクニュースや誤情報への注意喚起を入れている。

 少し余談だが、LINE NEWSのnoteアカウントでは、制作現場の様子を発信している。ここでは、自殺について「直接的な伝え方をしない」こと定めていることを紹介した著名人の自殺、LINE NEWS編集部ではどう伝えたか、7時から23時まで365日稼働している校閲チームについて触れた「校閲」専門チームがLINEに誕生したワケ、その使命など、運営方針や制作現場の様子などを窺い知ることができる。

 最近はAIが制作する記事も出始めているが、人が見たり、聞いたり、感じたことが記事にされることのほうが圧倒的に多い。であるならば、それを配信するプラットフォームに携わる人々の様子がわかるというスタイルは、ひとつの差別化になるはず。LINE NEWSは、相互の意思を伝え合うコミュニケーションサービスの発展形としてスタートしたからなのか、そうした人のつながりを感じさせられた。

LINE NEWSのnoteアカウントのトップページ。アクティブに更新されているわけではないが、現場のスタッフが情報発信することで、親しみや共感がわいてくるかもしれない。このほかアカウントメディアについて紹介するnote「LINEアカウントメディア 公式ブログ」もある。

左上/LINE 校閲チーム/マネージャー・前川静剛氏、右上/同ポータル&サーチアライアンスチーム・清水柚里氏、左下/同編成局・葛西耕氏、右下/編成局・杉本良博氏

取材・文/橋本 保  hashimoto.tamotsu@gmail.com

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