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ユーザーのコミュニティを通じてツイートのファクトチェックを行なうTwitterの新機能「Birdwatch」が果たす役割

2022.07.31

 スマホやSNSの普及に伴い、ニュースなどを配信するプラットフォーマーの存在が、誤情報やフェイクニュースなどの対策においてフォーカスされている。

 対象となるニュースや情報などを、事実の裏付けが取れるかなどの検証を行ない、その真偽を明らかにする。これが一般的なファクトチェックのアプローチで、多くのファクトチェック機関や報道機関などが行なっているのは、こちら。情報を対象として扱い、その真偽を検証する。

 これとは少し異なるアプローチをしているのがTwitterだ。

 Twitterの使命は「開かれた会話の場を提供すること」(Twitter Japan広報部)。それゆえ、「健全な会話」「安全とプライバシー」「市民活動の阻害に対して」「オープンなインターネット」の4つを守るためにさまざまな取り組みをおこなっている。

 この中で最近特に力を入れているのが、真偽が怪しい情報が拡散されない取り組み。そしてTwitterの利用者同士のコミュニティを通じて真偽を判断できるしくみ作り。これらは一般的なファクトチェックとは少し違い、Twitterならではの向き合い方になっている。

緊急時の誤情報のポリシーを制定

Twitterでは、5月に「緊急時の誤情報に関するポリシー」を新たに制定した。その背景には、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、プラットフォーム上で敵対する国や国営メディアなどによる情報戦があったことにあるのだとか。武力紛争や大規模な自然災害などの緊急事態では誤情報や意図的なフェイクニュースが出回りやすく、そうした情報が弱い立場の人々に危害を及ぼしかねないとTwitterは考えているという。

 危害が及びかねないとTwitterが判断した投稿は、Twitterのポリシーに違反していることを表示し、そのツイートに対するリツイート、いいね、共有などを行なえないようにする。

「Twitterは報道機関ではないためファクトチェックを自ら行うことはできませんが、プラットフォームの運営母体として、社会や利用者に悪影響を与えるような間違った情報の拡散を食い止める責任があると考えています。今回は、より広範囲の緊急事態に対処したものです」(Twitter Japan広報部)

 詳細は、Twitterのヘルプセンターに投稿された「緊急時の誤情報に関するポリシー」を見ていただきたいが、今回のポリシー変更は上述したとおり、武力紛争、公衆衛生上の緊急事態、大規模な自然災害などの緊急時の誤情報に対応したもの。単に強い論調の解説や意見、風刺など虚偽や誤解を招く主張が含まれていない限りは、おおむねポリシーの違反にはならない。このあたりは、非常に慎重な運用をしているようだ。

 そして、このポリシーへの違反が繰り返されたときには、一時的なアカウントのロックや永久凍結などの措置が取られる。

その際は、異議申し立てを通じて、Twitter側とやり取りの機会も設けているようだ。

↑左/2022年5月のポリシー変更に伴ってTwitterのヘルプセンターに投稿された「緊急時の誤情報に関するポリシー」。なお米Twitterの「Introducing our crisis misinformation policy」では、同社の安全性・健全性の責任者であるYoel Roth氏(@yoyoel)が、ポリシー違反の画面イメージを含めて解説している。右/COVID-19関連のポリシー違反の「ストライク制」を解説した投稿。ポリシー違反が繰り返されたときは、段階的にアカウントのロックや凍結といった強制的対応を適用するという。緊急時の誤情報のほか、選挙や市民活動の阻害や攻撃的な行為に対しても、「ストライク制」による強制的対応が適用される。

 少し話しは逸れるが、コロナ禍が始まった頃、トイレットペーパーが店頭からなくなった。あの騒動は、「『トイレットペーパーが不足する』という情報」が広がったことで人々がトイレットペーパーを買い占めた結果、店頭で品薄状態が続いたと記憶している読者も多いかもしれない。けれど、あの現象は、「『トイレットペーパーが不足する』という情報」ではなく、それを打ち消す、「『トイレットペーパーが不足する』というのはデマ」という訂正情報の拡散が無視できないという研究を、東京大学の鳥海不二夫教授らが発表している(2022年4月28日「訂正情報がもたらす社会的混乱 ~コロナ禍のトイレットペーパーデマの詳細分析〜」)

 鳥海教授は、国立情報学研究所発行の情報誌「NII Today」で、さらに踏み込んだ指摘をしている。

<マスメディアがデマ的な情報を広めている事例も見られます。拡散につながる報道にはいくつかのパターンがありますが、新型コロナで特徴的だったのは、「SNS上でこんな話が盛り上がっている」と紹介する報道が多くなされ、そのなかに、それほど拡散していない情報が含まれていたケースです。Twitterに書いている人は数人しかいないにもかかわらず、「こんなデマがTwitter 上で拡散されている」と報じられるケースがありました。

(中略)

ではなぜ、トイレットペーパー不足が起こったのか。それは、「デマに騙された人が買いに走るのではないか。であれば自分たちも買っておこう」となった結果だと思われます。しかもトイレットペーパーを買ったのはTwitterのメーンユーザーである10~30代ではなく、Twitterをあまり使っていないもっと上の世代です。これをSNS発のデマが原因といってよいかというと、かなり疑問です。Sep. 2020 No.89

 鳥海教授は言葉を選んでいるものの、あのトイレットペーパー騒動は、「『トイレットペーパーが不足する』というのはデマ」という訂正情報を大量に広めたテレビや新聞などマスメディアの影響が無視できない、と指摘している。

 今回のTwitterのポリシーの新設、それに伴うツイートへの措置が、誤情報拡散防止に効果があるのかは今後明らかになるだろうが、「開かれた会話の場を提供することを大切して」いるTwitterが、こうした対応に踏み切るのは、それなりに大きな判断といえるだろう。

このほか、Twitterでは、政府や政府と強い結びつきのあるメディアなどのアカウントに「政府および国家当局関係メディアアカウントラベル」をつけて閲覧の際は注意を促している。

 たとえば、日本では首相官邸や外務省、中国の国営通信社の新華社、ロシアの国営メディアSputnik(スプートニク。ソ連時代のモスクワ放送)などが、それに該当する。こうした機関やメディアのアカウントのほか、それらと関連する編集者やジャーナリストなど個人アカウントも対象とされている。

↑上段左/新華社(中国)の日本語アカウント(@XHJapanese)。上段中央/Sputnik 日本(ロシア)の日本語アカウント(@sputnik_jp)。上段右/ジャーナリスト個人にラベルが付いている例。ロシア国営テレビ「第1チャンネル」の番組で司会者もしているジャーナリストのウラジミール・ソロヴィヨフ氏のアカウント(@VRSoloviev)。Twitterでは、編集者やジャーナリストなど個人アカウントも対象としているが、個人へのラベリングは必ずしも多くないようだ。下段左/首相官邸のアカウント(@kantei)。下段右/岸田首相のアカウント(@kishida230)。首相官邸と岸田首相のラベルには旗のアイコンが使われ、政府機関との説明がある。一方、新華社、Sputnik 日本、ソロヴィヨフ氏のラベルは演台のアイコンが使われていて、政府機関とは区別がされている。なお、Twitterのウェブサイトによると、<国家が資金を提供しているものの、編集の独立性を確保しているメディア組織(英国のBBCや米国のNPRなど)については、このポリシーにおいて国家当局関係メディアとは定義されません>とのこと。そして、国家当局関係報道機関のラベルが付いたアカウントや、そのアカウントのツイートをTwitter社が推奨したり、拡散しないそうだ。詳しくは「Twitterにおける政府および国家当局関係メディアアカウントラベルについて」

コミュニティでファクトチェックするBirdwatch

 報道機関やファクトチェック団体に代わって、利用者のコミュニティを通じてツイートの真偽、いわゆるファクトチェックを行なうTwitterの新機能が「Birdwatch」だ。現在、米国で試験運用中で、日本語対応は未定だが、Twitter Japanの公式ブログには「ファクトチェック機能「Birdwatch」をさらに充実」という米国での開発状況や、「TwitterのBirdwatchについて」という解説がヘルプセンターに投稿されている。

 Twitter上では、あるツイートに誤解を招く内容があったとき、利用者が自発的にツイート、返信、引用ツイートなどで背景情報や、より信頼できる情報を追加することで、有益であったり、豊かなやり取りに発展することがしばしばある。Birdwatchはこうしたやりとりをより可視化し、背景情報を利用者にわかりやすく見せるしくみで、Wikipediaのように利用者の「集合知」によってファクトチェックが行なわれることを目指す。

「Birdwatchは、コミュニティベースのファクトチェックです。Birdwatchの参加者が閲覧している情報の質を維持するため、Twitterは先頃AP通信やロイター通信との連携を発表しました。このほか、専門的な知見を持つ研究者や学識者などで構成されたアドバイザリーボードを設置し、そこでファクトチェックが行なわれているかを評価していただきます。

 Twitterの特徴は、ある情報がツイートされたとき、それに対して反証も投稿されたり、別の視点が提供されたりして、公開の場で会話が発展していくことです。それらを追っていくと情報を文脈でより深く捉えることができ、多様な視点が得られるのもTwitterの楽しみ方だと思っています」(Twitter Japan広報部)

米国で運用されているBirdwatchのメモの画面。ある投稿に対して、<宇宙で写真をとったかのように見えるツイート画像に対して、これはセルフィーアートであり実際この場所でとった写真ではありません。>という情報が追加されている。このようにやり取りが発展しながらファクトチェックされていくコミュニティをTwitterは大事にしているそうだ。

 ちなみに、テレビ局の制作現場などでは、ある情報を調べる際、検索エンジンを使うよりも、Twitterで検索をするほうが、面白い視点が得られて役に立つ、という話しを聞いたことがある。確かに、Twitterで情報に触れていると、本当にさまざまな視点と出会うことがあり、いろいろな発見がある。ビジネスパースンならば企画を考えるときの情報収集などに役立つだろうし、ダラダラとやり取りそのものも楽しめる。

 Twitterのコミュニティの質の向上が期待されるというBirdwatch。Twitterのアプローチが有効かを知る意味でも、早く日本語化されることを期待したい。

取材・文/橋本 保  hashimoto.tamotsu@gmail.com


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