培養肉
今年3月に食品業界の話題をさらったのが「培養肉」だ。かねてより研究を重ねていた日清食品ホールディングスと東京大学大学院情報理工学系研究科の研究グループが、「食べられる培養肉」の作製に成功し、実食に至った。
「培養肉は、動物の細胞から作られる代替肉です。牛から採取した細胞を増殖させ、筋肉のもととなる細胞を作った後に、糖分やアミノ酸などの栄養成分が入った培養液に入れてさらに増殖。その細胞を同じ方向に並べることで、細胞同士が融合しあって、筋線維が形成され、畜産の肉のような筋組織が出来上がります」(日清食品ホールディングス・古橋麻衣研究員)。
これまでの培養肉は、食用ではない研究用素材で作製していたが、すべて食べられる素材での培養が実現したという点が、今回の大きな研究成果だ。
「世界の人口が増加傾向にある中、食肉の需要も増え、既存の畜産では補いきれない現状があります。また、大量の資源が必要になることや、温室効果ガスの排出も問題視されているのが実情。その点、培養肉は環境負荷も少なく、衛生的な環境で作ることができます。将来的には、新たな食の選択肢となる日を夢見ています」
食肉に含まれる血液や脂肪がない分、その旨味をどう再現するかが今後の課題。焼き肉屋で部位を選ぶように、好みで種類が選べる日が来るのか!? 今後の研究に期待したい。
日清食品グループ
グローバルイノベーション
研究センター 健康科学研究部
古橋麻衣さん
作製には細胞、栄養成分、足場材料が必要。独自に開発した食用血清を含む培養液(栄養成分)に細胞を入れて、動物の体温に近い温度(約37℃)に保ち、1週間ほどかけて細胞を増やす。
実食する東京大学大学院の竹内昌治教授(右)と古橋さん(左)。「お肉の味そのものではないですが、旨味を感じました!」(古橋さん)
取材・文/坂本祥子
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