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ロックと音楽を愛する大人たちの心を揺さぶるMOOK本「岩田由記夫のRock&Popオーディオ入門」

2022.07.24

僕がロックに目覚め深く入り込んで行った70年代、多くのロック少年・ロック青年は、よりいい音で最愛のロックを聴こうとしていた。オーディオの急成長期〜黄金期にあたる。プレーヤー、アンプ、スピーカーを雑誌の記事や店員の意見を参考に選ぶ。ステレオ放送のFMを受信するためのチューナーもマストだ。オーディオシステムを組むためには、10万円くらいはかかった。70年代も後半になると、FMエアチェックや友達から借りたレコードを録音するためのカセットデッキも欠かせなくなる。親の脛を齧ったり、アルバイトしたり、資金の出所はそれぞれだが、とにかく“好きなロックをいい音で聴く”ことがロック党の“心構え”だったと言ってもいい。「ウォークマン」の登場は1979年、それまではロック(音楽)はスピーカーから出る音で聴くのが常識だった。

僕が小学館に入社したのは1980年、そして1982年夏に『FMレコパル』編集部に配属された。『FMレコパル』は、ソフト(音楽)、ハード(オーディオ)、FM番組表を3本の柱とし、競合誌の『週刊FM』『FMファン』『FMステーション』とともにFM誌と呼ばれ、僕の配属時以前、そして配属時から数年は部数NO.1を誇った。他誌と比べての特徴は、音楽記事は洋楽ロックに比重を置いたこと、そして“いい音=いいオーディオ”へのこだわりだ。この時期に中高大学生だったロック党なら、知らない方はいないと思う。

僕は幸いロックが仕事だった時期もあり、以後、完全リタイアのこの年齢までロックを聴き続け、オーディオにもこだわりがある。だが青春時代の友人となると、今やロックのロの字にも縁がない友や、クラシック・ロックのライブに行ったりYouTubeを見たりはするものの、“聴くロック”は大昔に買ったシステムコンポだったりスマホだったりと、“いい音”への熱はどこかに行ってしまった友ばかりだ。オーディオ再びと勧めても、“今更オーディオにお金をかけるなんて勿体ない”と、にべもない。

今の時代、チューナーやカセットデッキは必要ない。スピーカー、アンプ、そしてCDプレーヤー(またはレコードプレーヤー)の3点で30万くらい出せば、古いコンポやスマホより遥かにいい、さらに自分好みの音質でロックを聴ける。10代でオーディオに10万円を費やした世代だ。30万円で青春のロック魂を思い出せればよしとしてもいいのではと、僕は思ってしまう。

さて、僕のロックとオーディオの師匠は音楽プロデューサー/ライターの岩田由記夫さんだ。1980年代前半『FMレコパル』の編集者として原稿を頼んで以来、約40年のおつきあいになる。一緒に開催しているレコードを聴くイベント「レコードの達人」については、@ダイムでも紹介した

『岩田由記夫のRock & Popオーディオ入門』。

その岩田さんが音楽之友社(『週刊FM』の版元)から、『岩田由記夫のRock & Popオーディオ入門』というMOOKを刊行することになった。かつてと違い、今はオーディオというとクラッシックやジャズを聴くための高級機器というイメージが強い。だがあのオーディオ黄金期のように、ロックやポップスをお値頃な機器で楽しもうという趣旨のMOOKだ。岩田さんから協力しないかと誘われ、ロック旧友たちの“ていたらく”に憤る僕は、喜んでのらせてもらった。MOOKを旧友に読ませて、目を覚まさせようと。

7月19日発売なので、今手元にある。第1特集の“Rock & Pop Speaker ジャンル別スピーカー聴き比べ”では、ハード・ロック編のラウドネス・二井原実さんと岩田さんによる試聴を傍聴させてもらった。試聴ディスクはツェッペリン、AC/DC、ラウドネスなど。スピーカーは、入門機パート(ペア10万円台)はクアドラル、パラダイム、エラック、JBLで、ちょっと贅沢パート(同30万円前後)はチャリオ、ピエガ、モニターオーディオ、スペンドールだ。ほとんどが知らないメーカー、全てが初めて聴くスピーカーだが、僕なりの優劣はついた。そして驚いたことにハード・ロック派の僕ながら、日本のハード・ロック・レジェンドの二井原さんとは好みがほぼ真逆だった。ここがオーディオの面白いところだ。

第2特集“鮎川誠と聴く「UKロックはUKスピーカー、USロックはUSスピーカー」の真相”も興味深い。B&WとJBLのミドルハイ機を、鮎川さんと岩田さんが聴き比べる。試聴ディスクはツェッペリン、ストーンズ、ボブ・ディラン、マディ・ウォーターズ……と、王道の(?)オーディオ誌にはまず登場しない。

さらにはサブスク・オーディオの現状を解説する特集や、オーディオ評論のあり方に一石を投じる岩田さんとオーディオ評論家の土方久明さんのロング対談、オーディオに8000万円以上費やしたという岩田さんのオーディオ偏愛歴など、異色の記事が多彩にある。

正直、こんなに誌面を割いてくれるとは思わなかった。

そして我がことながら、岩田さんと僕で開催しているレコードを聴くイベント「レコードの達人」を切り口とする特集“「アナログは音が良い」って本当? 名盤【アナvsデジ】比較試聴”では、岩田さんと僕の対談が12ページにわたって掲載されている。

雑誌編集の現場から去ってすでに15年近くが経ちながら、こうして愛するロックとオーディオに真正面から取り組むMOOKの制作に関われたのは無上の幸せだ。1人でも多くの往年のロック少年・ロック青年の目に留まり、“オーディオ再び”となることを願っている。

文/斎藤好一(元DIME編集長)

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