スマートフォン、特に各メーカーが最新の技術を盛り込むハイエンドスマートフォンは、技術力の向上、多機能化に加えて、円安や半導体不足といった経済的状況の影響もあり、15万円を超えることも珍しくなくなっています。
現に、2022年夏のハイエンドスマートフォン「Xperia 1 IV」は19万872円(ドコモオンラインショップ価格)、「AQUOS R7」は19万8000円(ドコモオンラインショップ価格)となっており、簡単に手を出せないという人も多いのではないでしょうか。
そんな中、Xperia 1 IVやAQUOS R7と同じチップセットを搭載する「POCO F4 GT」は、メモリ8GB、ストレージ128GBモデルが7万4800円から購入可能と、コスパが光る最新のハイエンドスマートフォンとして、注目を集めています。
「POCO」は、近年日本でも精力的にスマートフォンやスマートウォッチといった製品を展開している「シャオミ(Xiaomi)」内の1ブランド。「Everything you need, nothing you don’t」というスローガンを掲げ、スマートフォンやテクノロジーに関する知識があるユーザーに向けた、“尖った”製品を多く展開するブランドです。
近年のハイエンドスマートフォンは、カメラや処理性能、ディスプレイなど、各方面を満遍なく高性能化することで、だれでも使いやすい仕上がりになる反面、高価になりがち。POCOブランドでは、不要と思われる機能を削ることで、高性能ながら手を出しやすい価格の製品が展開されています。
本記事では、そんなPOCOブランドとしては、日本市場に初参入となる、ハイエンドスマートフォン「POCO F4 GT」を実際に試し、使用感や機能について紹介していきます。
ディスプレイ/デザイン
ディスプレイは6.67インチの有機EL素材を採用した、フラットディスプレイとなっています。解像度はFHD+と極端に高いわけではありませんが、最大120Hzリフレッシュレート、最大480Hzタッチサンプリングレートに対応し、10億7000万色の色表示に対応するなど、各性能は高くなっています。
本体質量は210g。ディスプレイサイズを考えると、重すぎるわけではありませんが、長時間片手で操作していると、若干疲れを感じる重さです。ただし、ディスプレイのアスペクト比が20:9とやや縦長になっているので、比較的握りやすい仕上がりです。
カラーバリエーションは、サイバーイエロー、ステルスブラック、ナイトシルバーの3色展開。今回試したナイトシルバーは、近年はやりのフロスト加工とは違う、金属らしい光沢が魅力。独特なラインの入ったデザインも特徴的ですが、少し指紋の付着が若干気になります。
本製品の特徴の1つが、側面に配置されているボタンにあります。本体左側面には音量調節ボタンがあるのみですが、本体右側面に、指紋認証センサー内蔵の電源ボタンと、「ポップアップトリガー」と呼ばれるボタンが配置されています。
これは、ゲーム機のコントローラーでいう「L・Rボタン」の役割を果たすもので、対応したアプリゲームをプレイする際には、物理ボタンで操作できるというもの。ディスプレイにタッチするよりも押し間違いが少なく、指で画面を覆わなくてもよいため、ゲーム画面がより広く見えるといったメリットがあります。
バッテリー
POCO F4 GTの特徴の1つが充電速度にあります。バッテリー容量は4700mAhで、近年の大画面スマートフォンとしては標準的ですが、120Wの高速充電に対応することで、最短17分で100%まで充電することができます。購入時には、120Wでの充電に対応した充電器が同梱されるので、別途高性能なケーブルやACアダプターを用意する必要がないのもポイントです。
急速充電を続けるとなると、バッテリーの劣化なども気になりますが、本製品には、夜間の充電ルーティンを学習する機能が備わっており、起きる時間に合わせて充電が100%になるように調節してくれます。
また、同梱されるUSB Type-Cケーブルは、L字型になっているのも特徴です。これは、ゲームプレイ時もケーブルが邪魔にならないように配慮したとのこと。個人的には、断線の心配が少なそうなので、広く普及してほしい形状です。
スペック/機能
搭載CPUは先に触れた通り、現行の最新チップセットである、Snapdragon 8 Gen 1を採用。メモリ、ストレージの構成は、8GB+128GB、12GB+256GBの2モデルとなっており、7万4800円からという販売価格は、破格ともいえるスペックとなっています。
ただし、防水防塵には非対応、おサイフケータイ機能も非搭載など、日本市場へのローカライズはされていません。ハイエンドスマートフォンであるため、少し残念な印象もありますが、ブランドコンセプト通り、部分的に機能を削ることで、価格を抑えたと考えられる仕様です。
搭載OSは、Android 12をベースとした「MIUI 13 for POCO」。MIUIはシャオミ端末に搭載されているOSで、Android OSと共通している部分も多いため、普段からAndroidスマートフォンを使っている人であれば、すぐに慣れるでしょう。
そのほか、電源ボタン内蔵の指紋認証センサーと、AI顔認証による2パターンのロック解除にも対応しています。
カメラ
アウトカメラは、約6400万画素メイン、約800万画素超広角、約200万画素マクロの3眼構成。フロントカメラは、約2000万画素のシングルレンズとなります。
以下はすべて、POCO F4 GTにて撮影し、掲載用にサイズの調節を行ったのみの写真となります。
撮影した写真は、明るさの調節といったAI処理があまり強くかけられておらず、自然な明るさに近い仕上がりになる印象。被写体を認識するスピードや、夜景モードでの明るさ調節などは優秀なので、ポケットからスマートフォンを取り出し、サッと撮影するといった用途であれば、十分の性能といえるでしょう。
近年のハイエンドスマートフォンといえば、AIの処理を強くかけ、目で見るよりも明るい写真が撮影できたり、1インチセンサーを搭載することで、デジタルカメラに近い明瞭さを特徴としている端末が多くあり、それらと比較すると、POCO F4 GTはインパクトに欠ける印象もあります。
とはいえ、普段使いにおいてしっかりと活躍できる性能に仕上がっているので、コストと性能のバランスがよく突き詰められているともいえるでしょう。
ディスプレイと処理性能、バッテリー性能に特化した“尖った”ハイエンドスマートフォン
日本市場に初参入となる、POCOのハイエンドスマートフォン「POCO F4 GT」は、高リフレッシュレート、タッチサンプリングレートに加えて、17分で充電可能なバッテリー、現行のハイエンドチップセットを搭載しながら、最小構成で7万4800円という低価格が魅力の製品。
防水防塵やおサイフケータイ機能の非対応など、コストカットのために削られた機能も見られますが、これらを必要としていない、そもそも使っていないといったユーザーであれば、文句なしのコスパでしょう。スマートフォンに求める機能がある程度明確になっているという人は、本端末を選択肢に入れてみても良いかもしれません。
取材・文/佐藤文彦