新型コロナの第7波やロシア・ウクライナ情勢、円安の進行、原油・原材料価格の高止まりなど、国内の景気は先行きが不透明な懸念材料のなかで推移している。
総額40兆円(2022年3月末時点)にのぼる、実質無利子・無担保等の「コロナ融資」など経済対策も行われているが、企業の倒産件数はどのように推移しているのだろうか。
そこで帝国データバンクは、2022年6月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について調査を行い、その結果を発表した。
倒産件数は2020年7月以来、約2年ぶりの2か月連続で増加
倒産件数は544件(前年同月537件、1.3%増)と、前月から引き続き前年同月比で増加し、2020年7月以来、約2年ぶりの2カ月連続で増加となった。
負債総額は1兆2839億800万円(前年同月725億8300万円)と、製造業では過去最大の法的整理となったマレリホールディングス(埼玉県、民事再生、負債額約1兆1856億2600万円)の影響で、タカタが倒産した2017年6月以来5年ぶりの1兆円超えを記録した。
以下、業種や地域など分野や要因別に詳しい内容をお伝えしよう。
業種別では7業種中5業種で前年同月比増加
業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。資材・輸送費などコスト上昇が続く建設業(前年同月97件→114件、17.5%増)は、木造建築工事などの総合工事業(同33→47件)などが増加し、全体の件数を押し上げている。
サービス業(同118件→135件、14.4%増)では、4カ月連続で増加。特に広告制作(同3件→7件)や経営コンサルタント(同3件→8件)の分野で増加が目立つ。また、運輸・通信業(同29件→31件、6.9%増)では、3カ月連続の前年同月比増加となった。
一方、卸売業(前年同月74件→66件、10.8%減)、小売業(同128件→99件、22.7%減)の流通2業種は減少していた。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、人流が活発化した影響もあり、特に飲食店(同56→35件)が4カ月連続で30%以上減少するなど、倒産抑制が続いているようだ。
倒産主因別にみると、「不況型倒産」は430件、態様別でみると「清算型」倒産は528件
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は430件(同396件、8.6%増)で2カ月連続の増加、構成比は79.1%(対前年同月5.3ポイント増)となっていた。
最多は「販売不振」の422件(前年同月387件、9.0%増)で、構成比は77.6%(対前年同月5.5ポイント増)を占めている。
「業界不振」(同2件→6件、200.0%増)も増加した一方、「売掛金回収難」(同5件→1件、80.0%減)は減少していた。
このほか、「放漫経営」(前年同月13件→5件、61.5%減)と「その他の経営計画の失敗」(同30件→26件、13.3%減)は2カ月連続の2ケタ減、「経営者の病気、死亡」(同27件→17件、37.0%減)は30%を超える大幅減となった。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
倒産態様別にみると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産は528件(前年同月522件、1.1%増)で、構成比は97.0%を占めている。
民事再生法と会社更生法を合わせた「再生型」倒産は16件(同15件、6.7%増)で、2か月連続の前年同月比増加となり、破産は505件(前年同月493件、2.4%増)で、3か月連続の前年同月比増加となった。
破産を業種別にみると、サービス業が125件で最多となり、建設業が112件で続く。負債額別でみると、負債5000万円未満の倒産が299件と、破産全体の59.2%を占めている。
一方、特別清算は23件(同29件、20.7%減)と、2か月連続で20%を超える大幅減。民事再生法は16件(同15件、6.7%増)で、このうち12件を個人事業主であった。
規模別では負債5000万円未満の構成比58.3%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は317件(前年同月309件、2.6%増)、構成比は58.3%を占めている。このうち、サービス業(98件)が構成比30.9%(対前年同月4.7ポイント増)を占め最多に。
それに建設業(69件)が構成比21.8%(同3.0ポイント増)が続く。資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が359件(前年同月351件、2.3%増)、構成比は66.0%を占めた。
業歴「30年以上」が最多、業歴10年未満の新興企業は増加
業歴別にみると、業歴「30年以上」が171件(前年同月208件、17.8%減)で最多となり、構成比は31.4%(対前年同月7.3ポイント減)を占めている。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は3件であった。
一方、「3年未満」(前年同月18件→19件、5.6%増)、「5年未満」(同28件→48件、71.4%増)、「10年未満」(同71件→102件、43.7%増)などの新興企業の倒産はいずれも増加、なかでも負債額5000万円未満の小規模な倒産が目立つ結果に。
一方、「15年未満」の倒産(前年同月83→63件、24.1%減)では、6カ月連続で前年同月比20%以上の大幅減が続いている。
地域別倒産件数では大都市圏で増加、地方圏で減少する傾向に
地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を上回った。北海道(前年同月11件→17件、54.5%増)は、運輸業(同0件→5件)の増加もあり、4カ月連続で前年同月比2ケタ以上の大幅増となった。
関東(同200件→216件、8.0%増)では、卸売業(同24件→30件)やサービス業(同49件→67件)の増加などが全体を押し上げている。また、近畿(同134件→141件、5.2%増)は、大阪(同65件→68件)が6カ月ぶりの前年同月比増加に転じた。
一方、北陸(前年同月23件→12件、47.8%減)は半減、四国(同15件→2件、86.7%減)では、愛媛以外で倒産が発生しなかったこともあり、過去40年で最少に。総じて、主に大都市圏で増加、地方圏で減少する傾向がみられる。
関連情報:https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/2206.html
構成/Ara