値上げラッシュが相次いでおり、節約はもはや日常的に習慣化せねばならなくなっている。それならば、より効率的な節約方法を実践したいものだ。今回は、家計の節約方法のうち、ファイナンシャルプランナーがおすすめしない方法、おすすめする方法を合わせて紹介する。
ファイナンシャルプランナーがおすすめしない家計の節約方法
今回、お話を聞いたのは、ファイナンシャルプランナーの水上克朗氏。相談はもちろんのこと、書籍執筆や講演活動など幅広く活動している。家計において、おすすめしない節約方法があるとすれば、それはどんな方法かと尋ねたところ、水上氏は次の4つを挙げた。
【取材協力】
水上克朗氏
ファイナンシャルプランナー
慶応義塾大学を卒業後、大手金融機関に入社。現在、ファイナンシャルプランナーとして、執筆、相談、監修、講演活動などを積極的に行っている。著書に「50代から老後の2000万円を貯める方法」「見るだけでお金が貯まる賢者のノート」(2022年7月25日発売)がある。
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1.【食費節約】特売日のまとめ買い・安い店のはしご
「できるだけ安く買うことは、節約の王道。しかし特売日にまとめ買いをして、生鮮食品を腐らせてしまったり、賞味期限を切らしてしまったりするケースも。また、『何個で何円引き』といったまとめ買いにより、不要な量や物を買ってしまった経験はありませんか。さらに野菜や肉のセールなど、少しでも安い品を買うために、複数の店に買い物に行ったりすると、お目当ての品以外に、つい目を奪われて必要ないものを買ってしまうこともあります。無駄な出費ではないか、その都度見直すことが大切です」
2.【光熱費節約】エアコンのこまめなオンオフ
「電気代を節約しようとして、こまめにエアコンをオンオフしたりしていませんか。エアコンは室温を設定温度にするまでの間が、一番電気代がかかります。DAIKINによる夏のエアコンつけっぱなし検証によると『日中9:00~18:00の時間帯は、30分間であればエアコンを切るより「つけっぱなし」にするほうが消費電力量は少なかった』との結果に。30分程度の外出ならつけっぱなしにしたがよさそうです」
3.【家計全般の節約】変動費から節約する
「節約をしようと思ったとき、食費を抑えたり、飲み会の回数を減らしたり、趣味に使うお金や買いたい洋服を我慢したりと『変動費』を削りがちです。なお、ストレスのたまる節約は長続きしません。しかし、本気で節約効果を大きくしたいなら、毎月の支出が固定されている住居費、光熱費、通信費、保険料など『固定費』を削るのが鉄則です。固定費は一度、金額の見直しをすると節約効果が継続するからです。節約は効果のある大きなところを抑えましょう」
4.【家計全般の節約】節約したお金を、投資ではなく預金に回す
「節約して創出したお金を、預金に回すのが当たり前になっていませんか。預金だけではインフレリスクに備えることはできません。経済が成長すると物価も上昇していきます。インフレも考慮に入れて、物価の上昇ペースよりも増やさないと、実質的には損をしたのと同じになります。現在、大手銀行の定期預金金利は0.002%で、それ以上のペースでインフレが起こると資産は目減りしていきます。
投資を取り入れることで、インフレリスクをヘッジしましょう。税制優遇のあるつみたてNISAやiDeCoがおすすめです。ちなみに金融庁データつみたてNISAの実績によると、保有期間5年ですと収益率がマイナスとなっていることがありますが、保有期間20年を見ると、収益率(年率)が2%を超えており、損になっていません。節約したお金は、投資に回しましょう」
ファイナンシャルプランナーがおすすめする家計の節約方法
では、家計においてどのような節約方法がおすすめだろうか、水上氏は4つを挙げる。
1.【光熱費節約】電力・ガス会社の乗り換え/セットプランへの切り替え
「2016年4月からの電力自由化により、自由に電力会社を選べるようになりました。電気代とガス代は、電力会社やガス会社を乗り換えることで簡単に節約できます。Webサイトで料金の安い乗り換え先の会社を選び、ネットで申し込だけで乗り換えが完了。現在の会社への解約手続きは乗り換え先の会社が行うため解約届は不要です。
また、電力会社・ガス会社の中には、電気・ガスのセットプランを販売している会社もあります。セット契約をするだけで割引が適用され、支払いがひとつにまとめられます。
なお電気・ガス代は、料金プランや契約アンペア数によって金額が変わるので、自分に合ったプランを選択することで、さらに節約につながります。電力の見直しは、全世帯で8割が手つかずの状態といわれます。年間数万円の節約でも積もれば大きな金額となります」
2.【通信費節約】スマホは格安SIMか新プランに変える
「スマートフォンの通信費を減らしたいというとき、キャリア変更をしても、大手キャリア間ではあまり差が出ませんが、『格安SIM』に乗り換えれば、それだけで月5,000円以上の節約になります。もし3人の家族が全員で乗り換えれば、約月1万5,000円、年間18万円の節約になります。
なお格安SIMは、大手キャリアの回線を借りているため、時間帯で通信速度が遅くなることもありますが、普通に利用するなら問題ありません。また、大手キャリアも新料金プランを打ち出しています。料金を比較し自分に合ったプランを選択しましょう。通信費の見直しは、もはや必須です」
3.【保険料節約】生命保険(掛け捨ての死亡保険)を見直す
「保険料計算の基となる標準生命表が2018年に改定されました。2018年以前の契約は、すぐにでも見直しするのをおすすめします。掛け捨ての死亡保険、つまり定期保険、収入保障保険などの保険料がダウンしています。
あわせて、生命保険(死亡保障)の必要保障額を確認しましょう。必要保障額は、もし家計を支えている人が死亡した場合、残された家族が生活していくためのお金です。残された家族が生活していくためにはいくらあれば足りるでしょうか。適切な必要保障額を確保することが、余分な保険に加入することを防ぎ、保険料安く抑えることができます。生命保険の支払保険料の平均は、年間37.1万円(30年間で1,113万円)です。保険会社などのシミュレーションサイトの利用や保険募集人への相談を活用して見直してみましょう」
4.【住居費節約】住宅ローンや家賃を減らす
「一般的に住宅ローンや家賃といった住居費は、月収の4分の1が目安です。これを抑えられれば、かなりの節約になります。
住宅ローンは借り換えを検討してみてください。借り換えとは返済中の住宅ローンより金利の低い他の金融機関のローンを借り入れて、元のローンを返済することです。住宅ローンの金利は、10年前に比べて、10年固定金利で1%以上、変動金利で約0.5%もダウンしています。金利が低くなる分、利息が減ります。
借り換え効果のある人の目安は『金利差0.5%以上』『ローン残高1,000万円以上』『残存返済期間10年以上』の3点。これを満たせば、借り換えを検討する余地はあるでしょう。金利はネット上の比較サイトでも確認できます。借り換えには諸費用がかかりますが、返済額が減らせる可能性があります。まずは、今借りている銀行に金利引き下げ交渉をしてみましょう。
家賃を減らす方法としては、家賃の安い物件に引っ越すことが考えられます」
家計のキャシュフロー表の作成で「気付き」を得る
家計の節約を考える際には、まず家計のキャッシュフロー表を作成するのを、水上氏は勧める。
「私がご相談をお受けする際には、必ず事前にご自身で、ご家族の現在の収入と支出、資産と負債の把握をお願いしています。この数値をもとに私のほうでライフプランを見える化し、100歳までの家計のキャシュフロー表を作成しています。いってみれば、将来のお金の年表のようなものです。
ほとんどの方が、家計のキャシュフロー表の作成は初めてで、気づく項目が多いと満足されます。作成後は、ご自身がそれを実践するどうかです。コツコツと実践すれば、ひとつひとつが積もり積もって大きな金額となるでしょう。
家計のキャシュフロー表は日本FP協会の公式サイトなど、自分で簡単に作れるエクセルファイルをダウンロードできるサイトがいくつかありますので利用してみてください。
値上げラッシュのこの機会に、どのようにお金と向き合っていくか考えてみましょう」
家計の節約をしたいけれど、何から始めていいかわからない、効率的な方法が知りたいという場合には、大きなヒントとなるだろう。まずは家計のキャッシュフロー表作成から始めてみてはいかがだろうか。
【参考】
日本FP協会「家計のキャッシュフロー表ダウンロード」
水上克朗著「見るだけでお金が貯まる 賢者のノート──1億円貯めたFPが教える 100%トクするお金の習慣」(自由国民社)
取材・文/石原亜香利