対面からオンラインに変わることで、プレゼン資料はどのように変えるべきなのか? あの孫正義氏も認めたというプレゼンの達人・前田鎌利さんが、リモート時代にマッチするスライド作りを指南する!
固 代表取締役
一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事
前田鎌利さん
大学卒業後、17年間通信業界に関わり、孫正義社長(現会長)に直接プレゼン。幾多の事業提案を承認される。独立後は年間200社以上の企業でプレゼン関連の講演・研修を行なう。
一瞬でわかる資料と対話を引き出す仕掛けが大切
プレゼンが対面からリモートになったことで何が変わったのか? 前田さんはまず、「発信できる情報量の圧倒的な少なさ」を指摘する。
「その場の雰囲気や相手の細かい仕草などから読み取る情報がとても大切なのに、リモートではそれが伝わりづらい。さらに機器への負荷も考慮し、音声はミュートが一般的、顔出ししないケースも多いとなればリアクションも期待できません」
そんな状況の中で相手を惹きつけ、意思決定を促す。そのためにはどんなスライド資料が有効なのだろうか。
「何よりわかりやすいことが一番。全体構成はシンプルに、例えば一般的なビジネスプレゼンなら、テーマを1つに絞ったうえで、課題、原因、解決策、効果が順に並ぶロジック展開(下図)を意識する。リモートでは効果(結論)を冒頭に説明して興味をひく展開も効果的です」
わかりやすさでいえば、ひと目見て、一瞬で内容が理解できるレイアウトや、自分事に感じてもらえるようなビジュアル選びもポイントに。さらにリモートプレゼンではあえて提示資料を最低限にし、質疑応答の時間を多く確保することも重要だ。
「情報を絞った資料にしておけば聞き手からの質問を誘導できるほか、そこから対話が生まれることで、信頼度が増す効果も期待できます」
以降に紹介するのは、そんなリモートプレゼンを前提としたスライド作りの基本テクニック。もちろん相手や目的によっても内容や攻め方は変わってくるが、「伝わる」資料のベースは同じ。参考にしつつ、ブラッシュアップに役立ててほしい。
【テクニック1】リモートだからこそシンプル&ロジカルに!
情報を絞った構成を心がけるとともに、素早く全体像をつかめるサマリーを用意。本編は課題とその原因をまとめた「現状報告」、解決策と効果を示す「提案」の2部構成で考える。また質問に備え、提示資料以外に内容を補足するデータ資料(アペンディックス)があると安心だ。
リモートではサマリーが重要
端的にプレゼンのテーマを示す「表紙」、内容を要約する「サマリー」、さらに「ブリッジスライド」を挟み本編へと誘導。データなど、読ませる資料は別添にすれば、スマートな資料に。
【テクニック2】リモートだからこそ読ませず、見せる!
スライドはじっくり〝読ませる〟のではなく、パッと見た瞬間に意図が理解できるよう〝見せる〟を意識。そのためにはまず、文字を最小限に減らすこと。人間が一度に知覚できる文字数は最大13文字といわれており、タイトルやキーメッセージはそれを意識する。同時にビジュアルを多用することで右脳を刺激すれば、文字情報の処理速度もグッと上がる。
重要ポイントをひと目でわからせる!
「データを入れすぎると人は本能で数字が間違っているか気になり始め、意思決定がぶれる」と前田さん。文字情報も短く、シンプルにするのが鉄則。重要な数字は大きく見せて、フォントのメリハリをつけるなど、文字の効果的な見せ方も意識しよう。
ワンポイントビジュアルが理解の手助けに
スライドに写真を活用することは、テキストを読まなくても瞬時に内容を理解させるための手助けとなる。有料はもちろん、無料でも利用できる著作権フリーの写真素材のサイトもあるので、イメージに合う写真を探してみよう。
ワンカラー+数字で強調!
30代女性が突出して多いことを示す円グラフの場合、上のグラフだとわかりにくい。そこでモノクロの上にワンカラーだけを置いて際立たせる「ワンカラー効果」を活用。数字も強調し、パワースライドに仕上げよう。
【テクニック3】リモートだからこそ惹きつけて飽きさせない!
相手の反応がダイレクトに伝わらないリモートプレゼン。文章を図解化して相手の視覚と聴覚に同じタイミングで訴えるなど、飽きさせない工夫が必要となる。その際に有効なのが小さいサイズのホワイトボード。ボードに記入して「こちらを見てください」と声をかければ、相手の集中を促せる。
アニメーションで集中を切らさない
伝えたい文章をすべて書くとネタばれ感が出るが、アニメーションで順序立てて出せば、相手を飽きさせない。ただしアニメーションは回線に負担がかかるので、凝りすぎる内容のものは避けよう。
自分事にしてもらうようビジュアルも厳選
相手の共感を得るためには、自分事として認識してもらえる人物写真を選ぶことが重要。外国人の写真は対グローバル企業以外では使わないほうがベター。イラストの使用も慎重に。
取材・文/高山 惠 図版・資料提供/固-KATAMARI-
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