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帳票データの活用で無駄を排除、運送会社の〝共存共栄〟を目指すウイングアーク1stの挑戦

2022.07.28

【Innovator's NEWS】「帳票」のDXから見える“経理や請求のニューノーマル” <後編>

前回、ウイングアーク1stが実現した「帳票のDX」について紹介した。しかしこれは同社が進めるDXの一部、イノベーションの序章にすぎなかった。今回は、同社が進めるデータ活用、運輸業界の改革、さらには様々なアイデアが生まれる土壌についてご紹介する。

“企業間DX”による共存共栄

 2018年、米国の人類学者が書いた書籍「ブルシットジョブ―クソどうでもいい仕事の理論―」(岩波書店刊)がベストセラーになった。今、人類が営々と行っている仕事の半分程度は無意味と喝破したもので、売れた理由は働く人の多くが「自分の仕事にも無駄が多い」と思っているからだった。

 そんな中、この記事の取材先であるウイングアーク1stは日本のブルシットジョブを減らし続けてきた。第1回でもお伝えしたように、A社が請求データを紙の請求書に落とし込んでB社に伝え、B社は紙のデータを自社のシステムに入力する、といった途方もない無駄を「帳票のDX」によりこの地上から抹消しているのだ。

 しかし、同社代表取締役社長執行役員CEOの田中潤氏によれば、すぐにでも解決すべき“ブルシットジョブ”はまだまだ多いという。

「traevo記者発表会2022」の様子。前列左から2人目が田中社長

当社事業のもう一本の柱は“データ活用”なんです。帳票に入力するデータを活用すれば、私たちの生活や事業がもっと豊かになります。例えば運輸業界と建設業界です。この分野は様々な産業のなかで最もデジタル化が進んでいません。なかでも運輸業界には“2024年問題”と呼ばれる危機が近づいています」

 いわゆる“働き方改革”により、国の主導で残業を減らすことになったが、運輸業界と建設業界は2024まで適用除外となった。例えば東京から神戸に荷物を運ぶ場合、8時間では着かない場合がある。残業ありきでなければドライバー1人で運べなかったのだ。しかし2024年からは運輸業界でも働き方改革のルールが適用され、長距離の場合は2人で運ぶことになる。当然、運賃は上がるはずだが、荷主はそう簡単に値上げを許容しないはずだ。これでは日本の輸送業界は効率化を成し遂げなければ破綻しかねない――。

「この事態を、当社が得意とする『企業間DX』と『データ解析』で改善します。具体的に言えば、今は『共配』の仕組みが必要なんです。運送会社さんのデータを解析するとわかるのですが、トラックにちょうどぴったり荷物を満載して運ぶことはほぼありません。なら、仮にA社が北海道の過疎地に荷物を運ぶ場合、ほかの会社もA社に頼んで荷物を運んでもらえばいいですよね。業界ではトラックや運転手が足りないと言われています。そして、一社だけで解決できる問題はもはや解決されている時代。だからこそ『企業間DX』で問題を解決すべきなんです」

同社が一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会とともに業界横断で開発に携わったのが車両の動態管理プラットフォーム「traevo(トラエボ)」。トラック車両の位置情報(GPS)から、車両動態(車両の位置、状態)情報を車載機器メーカーを問わず一元的に管理・集約・可視化し、荷主・運送事業者・着荷主などステークホルダー内で情報を共有する仕組み。様々な企業のデータと一本化すれば、共配も行うことができ、トラックの効率的運用をはかることができるのだ。既にトライアルと効果検証も行われており、トラック20台あたり1か月の労働時間が304時間も削減された例がある。これぞ、本当の“共存共栄”だ。

積載量、出発する時間など“データの共有”により、お互いが足りない部分を補完し合うのです。これが日本中に広がれば、運送会社はDXを進める原資も手にすることができ、運転手さんの待遇もあげられるかもしれません。そして今後は運送会社だけでなく様々な業界で“企業間DX”による共存共栄がはかられていくことでしょう

ウイングアーク1st代表取締役社長執行役員CEOの田中潤氏

田中流「社員の自己実現を助ける方法」

 そんな田中氏に、イノベーターとして歩むきっかけとなる経験は何だったのかを聞いた。力を出せる人物はたいてい、自分のモチベーションのありかを明確に知っているものだからだ。

「私の実家が零細企業を経営していたからかもしれません。父の会社は、建築系の多重下請け構造の最下層に位置していました。実は私も、幼稚園の頃から現場に出て手伝っていたんです。おかげで『お小遣い』という概念はなく、親からもらうお金は『日当』でした(笑)」

 彼は現場で、幼い目に下請けの悲哀や社会の矛盾を嫌と言うほど焼き付けた。

「父は腕がよく、お客様思いの仕事をする人間だったので評判がよかったんです。彼が戸建て住宅をつくると、口コミで次の依頼が来るほどでした。ところが……結局は元請けのメーカーが潤うだけで父の取り分は増えません。施主さんがニコニコしながら『あなたに頼みたかったんですよ』と言うのに、手にするお金は変わらない。幼心に不思議でなりませんでした」

 田中少年はよほど悔しかったに違いない。彼は「頑張ればしっかり報われる社会にしたい」と願うようになった。その結果が様々な業界のDXだったが、同時にウイングアーク1stの人事面にも影響しているのが面白い。

「いい組織は、社員を細かく監視しなくても皆がいい仕事をしてくれるものです。それに、仕事の質は結果を見ればわかるものですよ。なのに長時間労働が評価されて、仕事ができない人のほうが残業代をもらえたりする。これでは結果をすぐ出せる人が不満を持つに決まっています」

 同社はコロナ禍より前からリモートワークを実施し、日本中がリモートワークを取り入れようかとする頃には、完全にリモートワークで地方出身者はその地方で勤め上げられるよう人事制度を変えていた。

内定式もリモートで行われた

田中氏が独特の組織感を語る。

「通常、人が100の力を持っていたら、会社は人の指導やインセンティブの支払いにより、100の力を発揮してもらおうと考えます。一方我々は “100の力を持つ人にどんな状況をつくれば120の力を発揮してもらえるのか”を考えます。仮にある人のフルパワーが100だとしましょう。別の人間から指導され、インセンティブを与えられても、よくて100のパワーしか出せません。でも、成長のきっかけは自分の中にあるものですよね。例えば自分が好きなこととやるべきことが関連付いた瞬間、自分の限界を突破して120の実力が出せた、といった経験はありませんか? 勉強は一生懸命になれなかったけど、趣味は寝る時間も削って打ち込んだ、とか(笑)。ならばそんな瞬間が訪れる仕掛けをつくろうと考えたんです」

 自分自身の問題と仕事を関連付けると、人は途方もない力を発揮する。例えばBMX(バイシクルモトクロス)の中村輪夢選手をめぐる話だ。ウイングアーク1stは彼が国内1位になった時に契約を結び“一緒に世界を目指そう!”と熱い握手を交わした。その後、同社は社内に向け『彼をサポートしたい人は応募してほしい』と問いかけ、ただし『これは仕事ではないから、サポートに必要な費用は会社が出すけど、仕事の時間を使ってはいけませんよ』とも伝えた。

「すると十数人が手を挙げ、最初は世界を転戦する中村選手についていくだけでしたが、次第に彼の走りをデータ化し、戦略を提案するようになってきたんです。次第に『なんとか仕事を就業時間内でやりとげて中村選手をサポートしよう』と考えるようになり、この社員たちはみずから効率の良い働き方を身につけていきました」

中村輪夢選手が練習に打ち込める「WingPark1st」も開設する熱の入れよう

 同社は無料の『子どもIT教室』も運営している。ある時、子供たちがなりたい職業のナンバー1はYouTuber、というニュースがあり、皆で『ちょっと待って、日本で増やすべきはそのプラットフォーマーを築く側やITエンジニアだよね』となった。これをきっかけに『ならITに関わることがどれほど楽しいかを子供たちに伝える学校を作ろう!』という機運が生まれたのだ。

「これも『学校の先生にもなってみたかった』といった社員が手を挙げ、モチベーションを上げています。結局、会社の実力は、社員の力の総和なんです。経営陣や人事は、その総和を高め、これを余すところなく発揮できる組織をつくればいいんです。すると、勝手にプラスが生み出されます。今は若い社員たちが“こんなことも、あんなこともやってみたい”とどんどん提案してくれますよ

子どもIT教室「LITE1」で田中社長が話す様子

 みんなが力を発揮できる社会を作りたい、それはどこか、帳票のDXの話とも似ている。

 しかし日本全体を見渡せば、まだ非効率・非合理的な不条理がはびこっている。最後に、田中氏はこんな話をする。

「今の悩みは“もっと仲間がほしい”ということですね。いざ就職したら非効率な現実が当たり前になっていて、先輩たちにも危機感がない――そういう環境が嫌だ、こんな世の中でいいのか? と問題意識をもつ若者がいたら会ってみたいです。

 いずれにせよ、革命は始まったばかりです。今後は飲食、通信、建設などありとあらゆる業界で、無駄を排除した人たちがビジネスを有利に進める世の中が来るでしょう

文/タカ大丸


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