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iPadOS 16の登場で「iPad」はどこまでパソコン化が進むのか

2022.07.20

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、WWDC 2022にて発表された、MacOSやiPadOSの新機能について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

iPadはよりパソコンライクに進化する

房野氏:アップルの開発者向けイベント「WWDC 2022」にて、新しいMacOSやiPadOSについて紹介されました。どのような感想をお持ちですか?

房野氏

石野氏:まず注目なのは、MacOSとiPadOSに共通で搭載される「ステージマネージャー」機能。名前が紛らわしいですが、「センターステージ」機能とは全く別物です(笑)

 ステージマネージャーは、簡単にいえば、マルチウィンドウを効率的に切り替えましょうという機能で、MacでいえばUIがわかりやすくなる、iPadでいえば一応初のマルチウィンドウ機能になります。厳密にいえば、Split View(画面分割)機能があるので、初ともいい切れないのですが、パソコンのように複数のウィンドウを開くという意味では初めてですね。Macと共通のUIを持たせていくということで、iPadの方向性が定まってきた印象を受ける機能です。

石野氏

石川氏:今までのiPadOSが、あまり直感的に操作できなかったので、昨年に引き続き、もう一歩パソコンの方向に進めるといった形。ファイルの管理に手を入れているという話もあるので、仕事をするためのデバイスとして、生産性が意識されています。

 アップルとしては、MacシリーズではWindowsに勝てないけど、タブレット市場におけるiPadは需要があるので、iPhoneで培った技術も使いながら、タブレットで勝ちに行きたいのかな。

石川氏

石野氏:iPadの一部機種には、Macシリーズと同じM1チップも搭載されているので、せっかくパワーが出せるのならそれを活かしましょう、という考え方は自然です。ただ、マルチウィンドウを11インチのディスプレイで使ったら、狭すぎないかなという若干の不安はあります。

石川氏:そうだね。新しいiPadOSを使ってみると、やっぱり大きい画面がいいと感じるかもしれません。

石野氏:あと、ステージマネージャーは、外部ディスプレイに接続して、拡張デスクトップとして利用できるようになります。iPadにはデスクトップという概念がないので、アイコンを並べて、ウィンドウを複数表示するといった使い方はできませんが、ここもパソコンライクになったポイントですね。原稿を書く分にはこれで十分だなと思います。

房野氏:完全にマルチタスク対応といえるようになっているのでしょうか。

石川氏:まだベータ版ということもあって、現時点では完全なマルチタスクとはいえないかもしれません。

房野氏:発熱やバッテリー持ちへの不安はないでしょうか。

石川氏:ベータ版を使っている感触としては、あまり問題ないと思います。

法林氏:基本的に、iPadOSのベースはiOSなので、負荷の大きい作業を複数アプリでやるといった場合では、裏側に回っているアプリは寝ている状態になる。完全にマルチタスクとはいえないけど、その作業をするならMacBookでいいよねという話になります。

 iPadの性能は、Proシリーズが底上げしているし、ほかのデバイスとの連携もできるようになってきているけど、連携した先の世界を考えると、MacBookのほうが適任。唯一、iPadにあってMacBookにない機能として挙げられるのは、タッチ操作だと思います。タッチ操作をしたいアプリがある場合はiPad、そうでなければMacBookになってくる。では、ディスプレイを触るUIの用途とは? と聞かれると、お絵かき系とか動画、写真編集ですと答えるかな。

 MacBookの不思議なところは、マウスを普及させたのは実質アップルなのに、今MacBookでマウスを使っている人が少ないところ。Windowsは、販売時にマウスがついているか否かがチェックされていたりするので、MacBookとしては、あえてタッチ操作の方向に進みたくない理由があるのかなと思っています。

法林氏

石川氏:以前アップルの人に「MacBookでタッチに対応しないのか」と聞いた時には、ノートパソコンの画面にタッチするのは、結局使い勝手が悪いのではと話していましたね。

法林氏:やっぱり、そこが今のiPadとMacBookのすみわけなんだよね。チップやコアは同じだけど、これは搭載する、これはいらないといった差がでてくる。

石川氏:あと、Macを使いながらiPadも使っているといったユーザーは、結構限られてくる。パソコンから入った我々世代は、両方持っていて用途ごとに使い分けることに違和感がないけど、今の人たちは、iPhoneから入って、学校でiPadを使う。そこからiPadを使い続けていく人が多くて、我々からすると面倒くさく感じてしまう、ファイルが使えないといった部分も許容できる世代が増えてくるのではないでしょうか。

石野氏:許容するというか、そもそもその機能を知らない人もいるでしょうね。まずアプリを立ち上げるところがスタートの人もいる。

法林氏:ファイル、フォルダがわからない、スマートフォンネイティブの人たちもいるよね。ただ、気を付けないといけないのは、スマートフォンネイティブといわれる世代には、数年で切れ目ができているという点。今の大学生は、オンライン会議のために、むしろパソコンを使うのが当たり前の世代だし、中学、高校の授業でパソコンやタブレットを触ってきているはずなので、必ずしもスマートフォンベースではない世代が出始めている。若い世代だからスマートフォンスタートというわけではないという点は、頭に入れておかないといけない。

石野氏:うちの子とかは、パソコン見てもディスプレイを触ってしまうんですよね。リモコンは覚えましたけど、パソコンにはまだなじめないみたいです。

房野氏:ただ、大学に入ったらパソコンが必要になりますよね。

法林氏:タブレットでもやっぱり厳しい部分だと思います。

石川氏:今はまだパソコンがないと厳しいですけど、GIGAスクール構想によって、タブレットが小中学校でこれだけ使われているのを見ると、10年後の大学生とかは、果たしてパソコンを使っているのかという疑問もありますよね。今、小学校の授業でも、タブレットでパワーポイントを使って、発表資料を作ったりしている。そう考えると、将来大学生の多くがタブレットを授業に使っていても、不思議ではないです。

石野氏:もちろんどの分野かにもよると思います。芸術系や文系はパソコンがいらないかもしれないけど、逆に理系だと、実験用のソフトがパソコンじゃないと難しいし、いまだにMacですら動かない、Windowsじゃないといけないソフトもあります。

法林氏:そういう意味でいうと、GIGAスクールで普及している端末の半分はChromebookですよ。残り25%がWindows、残りがiPadです。Chromebookをパソコンと呼ぶのかといった話もありますが、キーボードがついているという意味では、やっぱり7割くらいは、パソコンなり、パソコンに近いものを使っていくことになると思います。

 いずれにせよ、スマートフォンだけで仕事をこなすことは難しいので、スマートフォンはあくまでパーソナルなデジタルツールの領域がメインのテリトリーになると思います。

新型MacBook Airは本当に“Air”といい切れるのか?

房野氏:WWDC 2022では、新しいMacBook Airも発表されていますね。

石川氏:新型のMacBook Airは、質感も高くて、新しいデザインになっていて、なんだかんだで、Airはいいなと感じました。何をもってAirと定義するのかはわかりませんが(笑)

法林氏:全然Airじゃないよね。1.3㎏の重量で〝Air〟といわれても……って思う。1㎏切ってからいってほしいです。

石川氏:スティーブ・ジョブズが封筒から取り出した頃のAirではなくなってしまいましたね。単なる、MacBook Proの薄いバージョンになってしまっています。

法林氏:あと、色々な理由があるのはわかるけど、それにしても価格の頑張りが足りないと思います。

石野氏:ただ、為替がこれだけ円安になってしまうと、輸入品の価格はどうしようもないですよね。

法林氏:一時期、インテルチップを搭載したMac miniの価格がどんどんあがって、Macのデスクトップはもうだめかもといわれていたところから、M1チップになって少し価格が落ち着いた。モニター(ディスプレイ)が安いのもあるけど、本体が手を出しやすい価格になったことで、環境が落ち着いた印象もあったけど、今回の価格はちょっと高すぎる。

石川氏:本来MacBook Airは学生などに使ってほしい位置づけだし、7月発売というタイミングも、アメリカが新年度になるタイミングで、大学生に買ってもらうためのものですからね。アメリカではそこまで高くないのかもしれませんが、日本での発売価格を見ると厳しいです。

……続く!

次回は、シャオミの新ブランド「POCO」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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