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帳票のDXで30万時間の労力削減、ウイングアーク1stが目指す「企業間DX」

2022.07.27

【Innovator's NEWS】「帳票」のDXから見える“経理や請求のニューノーマル” <前編>

イノベーターとイノベーションの情報を発信する「イノベーターズニュース」、今回は「帳票のDX」を成し遂げた日本企業「ウイングアーク1st」を取材した。毎月、郵便やメールで何億枚と行き来する請求書や送付状のデジタル化はどのように進行したのか。

“世の中を変える”と真顔で言える会社

ウイングアーク1stの社員旅行の様子

 電話やガスや水道の請求書、クレジットカードの利用履歴、さらには企業間を行き来する請求書や見積書、これらの帳簿や伝票を、まとめて「帳票」と呼ぶ。日本でお金の取引を行えばほぼ必ずついて回る書類だ。

 時には見ることもせず捨ててしまう場合もあるが、企業や行政は帳票の作成に莫大な手間をかけている。そのDX化を進める企業がウイングアーク1st。製品は国内3万社以上に導入され、シェア65.1%(※)を占める企業だ。

 代表取締役社長執行役員CEOの田中潤氏が話す。

「90年代まで、帳票はすべて紙でやりとりされていました。業務用の大型プリンタで印刷し、自動で折りたたみ、封筒に入れ、全国に発送していたのです」

 当時はパッケージソフト全般を扱っていた同社、創業社長が「お客様が最も喜んでいただける分野だったから」と注力したのが帳票の分野だった。

 印刷するだけでは? と感じるかもしれないがそうではない。家庭用プリンターはデータをいったん画像にして印刷する。しかし、例えば電話の請求書などは何千万枚単位になるから、画像に変換すると時間がかかりすぎ、発送しきれないのだ。

「そこで帳票の多くは、印刷する時、あらかじめつくってあるエクセルのような枠のようなものに必要な数字や住所や個人名などのデータを直接印字していきます。でも、ここにイノベーションを阻む要素があったんです。プリンタが進化しても、別メーカーの製品を使うと、今までのプログラムが用をなさなくなってしまうのです。

 例えれば、A社のプリンタは英語しかわからず、B社製は中国語だけ、C社は日本語しかわからない、といった状態ですから、プリンタを替えるごとに言語、つまりシステム全般を変えなければなりません。だから、昔はプリンタを替えるたびにプログラムを一から作り直していたんです。大変な苦労ですよね。しかも、いったん帳票をデザインすると、新たな枠を1つ付け加えるだけでも莫大な手間がかかりました」

 そこで彼らが開発したのが「SVF(Super Visual Formade)」、95年に開発され、今も同社の基幹製品として売れ続けている帳票作成・運用ツールだ。人間にたとえれば世界中の言語に対応した翻訳機のようなものだから、以降、帳票の印刷速度はプリンターの進化に合わせ改善されるようになっていった。同社創業者の内野弘幸氏は、雑誌の取材に「自分が感動できないプロダクトを大変な思いをしてつくって売るより、お客様に『欲しかったのはこれなんだよ!』と言っていただけるプロダクトをつくるほうが、苦労はあっても楽しいですよね」と話している。

「これに加えて、帳票の作成や改編もノーコードで行えるようにしました。今まではプログラムを書かなければならなかったから、現場が『帳票に生年月日の欄をつくりたい』と思っても、プログラマーに依頼し、できあがったものを見て『そうじゃなくて枠は名前の右に』といったやりとりを強いられていました。しかしSVFを使えば、パワーポイントで書類をつくるように、帳票の枠をデザインできます。枠が多くなれば、自動で1枚の紙に収めることもできますし“ここで2枚目に移動するのはおかしいな”となれば、どこでページを変えるのかも自動で設定できますよ」

パワーポイント感覚で帳票を作成できる

 これにより帳票の開発コストは10分の1以下にまで減っているという。田中社長が笑って面白いことを言う。

「何かを見たり聞いたりした時に“そういうものだ”と思うか、疑うのか、それが自分や会社の未来を大きく変えると思うんです。逆に、学校や他の企業で“言われた通りにすべき”と教えられてきて、それに違和感をお持ちになっている若い方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に仕事をしたいですね。当社は“世の中を変える”と真顔で言える会社ですから」

成し遂げた“30万時間”の労力削減

 ウイングアーク1stの面々にはその後も見えていた。帳票のDX化を突き詰めていけば、紙が必要なくなるのではないか? A社がB社に対して請求書を発行する。ということは、A社の誰かが数字や住所などのデータを入力して発送しているはずだ。そして、これを受け取ったB社でも、誰かが紙を見ながらデータを入力する――。これは時間の無駄だ。そこで彼らは企業間取引を電子化する製品群『invoiceAgent』を発表した。契約書、発注書、納品書、請求書、支払通知書という一連の文書を電子化してデータとして流通させるのだ。

「DXという言葉が世に言われるようになった時、『DXには“企業内DX”と“企業間DX”がある』と私は捉えました。企業の内部でも、帳票をPDFにしてクラウドに保管するなど、DXは進められるでしょう。しかし企業間DXを進めるには、当社のような企業がイノベーションを起こすしかないんです」

 納品書、請求書、支払通知書などを電子化(配信/返信)し郵送とのハイブリット運用を可能にする「invoiceAgent 電子取引」や、電子契約サービス「invoiceAgent 電子契約」など、と彼らは次々、企業間DXを成し遂げていく。

「SVFを導入している企業同士で取引があれば、金額等を一度入力すればデータを共有できるようになるのです。これにより、紙による発行・人力による再入力の手間が省けます。社会全体でどれだけの手間が省けるか、簡単な計算だけでも凄いことになりますよ。仮に、日本全体で帳票をやりとりする会社が180万社あったとして、1社が入力に10分かかっているとしましょう。これをなくせば日本全体で1800万分、30万時間もの労力削減になるんです。帳票が1枚ではないはずなので、きっとその何倍にもなるんでしょう。この“犠牲になっていた時間”を家族サービスやクリエイティブな方向に向けられたら、どれほど有意義なことかと思いませんか?」(田中氏)

ウイングアーク1st代表取締役社長執行役員CEOの田中潤氏

 田中氏の口ぶりからは、憤懣やるかたない、といった雰囲気が滲み出す。そして、本人の口から「イノベーターの条件」が出てきた。

「僕は不満が多い人間なのです。ごはんを食べに行っても『この店はお客さんを増やしたくて新メニューを開発したんだろうけど、その新メニューを新たなお客さんに伝える導線が見当たらない。これなら100円安くするより、その100円を広告費にあてた方がいいんじゃないかな』などと考えてしまうんです。言いませんけどね(笑)。

 よくなろうと思えば、よくなれるんです。国のせい、会社のせい、人のせいにしても何も得られるものはないけど、自分が汗を流して変えれば、皆が喜び、自分も会社も成長していく。僕はそんな日本全体に不満があるのかもしれません

 田中氏によれば、同社はそんな人材ばかりだという。そして、彼らは帳票に革命を起こしたが、田中氏によれば、これはまだ序章にすぎないらしい。次回は苦境に陥りつつある「運輸業界」における「データ革命」ついて話が進むことになる。

※出典:株式会社デロイトトーマツミック経済研究所「帳票設計・運用製品の競合調査2021年度版」 (帳票運用製品)

文/タカ大丸


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