小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

企業が苦悩する温室効果ガスの排出を投資によってカバーする「カーボンクレジット」は浸透するか?

2022.07.17

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

カーボンニュートラル実現に向け日本企業が抱える課題とは

世界各国がカーボンニュートラルを宣言し、今や不可逆な潮流になっている脱炭素への取り組み。国際レベルでの議論が国家レベルにシフトし、日本でも2020年に「2050年前にカーボンニュートラル、脱炭素世界を目指す」ことが国の政策として宣言され、2030年までに2013年度と比べて温室効果ガスの排出46%削減を目指すこと、さらに50%削減の高みに向けて挑戦することを発表している。

現在は民間企業が取り組む段階に入っており、特に2015年のパリ協定以降、民間企業のイニシアチブが加速している。

一方でカーボンニュートラル実現には課題が数多くある。日本の一次エネルギー供給構成は2019年度で化石燃料依存度が84.8%と、エネルギー源の多くを化石燃料に頼っているのが実態。再生エネルギーの比率も15%ほどで、省エネや非化石燃料化、再生エネルギー導入だけでは、CO2排出量単独ゼロ、温室効果ガスの排出46%削減は困難な状況といえる。

そこで生まれたのが、どうしても避けられない排出量をクレジットでオフするという新しい選択肢。生活や企業活動から排出される温室効果ガスの削減が難しい排出量を、世界各地で行われている脱炭素プロジェクトへの投資を通じ埋め合わせをする仕組みで「カーボンオフセット」と呼ばれる。

クレジットは政府主導、民間主導とさまざまな種類があるが、企業がオフセットする場合に関心が集まっているのが、民間主導の「ボランタリークレジット」だ。

世界にはVCS、Gold Standard、CCB Standard、ACR、CARなどさまざまなボランタリークレジットがある。相対的に市場規模はまだ大きくはないが、無効化、償却されるボランタリークレジットは年々増加しており、2020年には約9500万トン相当が取引されている。日本の2020年度の総排出量が11億5000万トンなので、日本全体の排出量の10%弱がクレジットで流通していることになる。

2030年には需要が15~20億トンと15倍に、2050年には100倍まで拡大すると見込まれており、市場規模としては最大500億米ドル(約7兆円)相当にまで拡大するという試算もある。

ボランタリークレジット市場が拡大している背景には、カーボンニュートラル宣言を行う企業の増加で、クリーンエネルギーの調達ではカバーしきれない部分をクレジットに頼っている傾向が強まっていることにある。またネットゼロ(排出量と吸収量の差し引きが正味ゼロになる)製品、サービスの活用の増加も挙げられる。

国内初の国際認証カーボンクレジットをオンラインで購入できる「e-dash Carbon Offset」

ボランタリークレジットを活用したオフセットは、グーグル、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツなどの企業で進んでおり、航空会社もオフセットのスキーム「CORCIA」を2021年から開始、国内の大手航空会社も賛同してクレジットを購入している。三井物産は2021年に森林保存由来のクレジットでオフセットしたカーボンニュートラルLNGを北海道ガスに供給している。

一方で課題となっているのが、信頼性や仕組みの複雑さ。クレジットにはさまざまな種類がありどれを選べばいいかわからない、品質や取引可能量が不透明、アクセスがしにくい、購入までの手続きが複雑といった課題が挙げられる。

これらの課題を解決すべく新しくローンチしたのが、「e-dash Carbon Offset」。e-dashは、「脱炭素を加速する」をミッションに立ち上がった三井物産のスタートアップ事業。CO2排出量の可視化を提供するクラウド型ソフトウェア「e-dash」を提供し、企業や自治体のCO2排出量の可視化から具体的な削減方法までの取り組みを総合的にサポートしている。

新サービスの「e-dash Carbon Offset」は、アクセスが制限されるというボランタリークレジットを、広く開かれた選択肢にすべくマーケットプレイスを展開。認証団体が明示された信頼性の高い世界中のボランタリークレジットを、自社の状況やニーズに合わせて、オンラインで少量から購入ができるサービス。米国サンフランシスコでボランタリークレジットのマーケットプレイスを運営するPatch Technologiesと、日本の法人として初めてとなる業務提携を通じて実現した。

国際認証されたボランタリーカーボンクレジットを、少量からオンラインで購入できるマーケットプレイスとしては国内初のサービス。e-dashではCO2排出量の可視化のクラウドサービスを提供しているが、既存のユーザー以外でも自由に購入できるプラットフォームで、会員登録や月額利用料等も不要。

「e-dash Carbon Offset」のウェブサイトから、各種のカーボンクレジットをオンラインで簡単に購入でき、金額、オフセット量のいずれからも購入可能で、1トン未満の少量からの購入もできるのが大きな特長。購入したカーボンクレジットには、認証機関の名前、排出量削減が達成されたヴィンテージイヤーが明記され、e-dashから証明書を発行する。

また、国主導で取引されているクレジットのJ-クレジット、非化石証書についても、e-dashは取引会員資格を保持しており、マーケットプレイスではなく個別に提供する。

「カーボンニュートラルを目指すとき、自社のエネルギーのクリーン化だけではすべてをまかなうことは不可能であり、排出量削減のひとつの手段として外部のプロジェクトを購入する方法を活用して欲しいと考えています。

クレジットの売買を促進することは社会全体でカーボンニュートラルを目指す中で不可欠だと思っています。現状では大企業のオフセットが主流なので、アクセスしやすいサービスを展開することで、カーボンニュートラルを意識づけ、中小企業を含めたクレジットの拡大につなげていきたいと考えています。

カーボンオフセットの購入では、質に不安があるという声もよく聞きます。この課題を解消するために米国のPatch Technologiesと協業をすることになりました。Patch は、持続可能な社会の実現に向け、カーボンクレジットのマーケットプレイスを提供している米・サンフランシスコのスタートアップ企業です。

カーボンフットプリントを管理・相殺するためのカーボンオフセットAPIを開発。顧客企業がCO2排出量を算出し、削除しきれない排出量を相殺するためのオフセットプロジェクトをつなぐサービスを提供しています。世界最強のベンチャーキャピタルと言われるAndreessen Horowitzも出資しています。

『e-dash Carbon Offset』は、Patchが提供しているカーボンオフセットAPIと連携して、排出量の算出と日本向けに国際プロジェクトのボランタリークレジットへのアクセスを提供します。

森林保全、再生可能エネルギー、バイオマス、コンクリートへの炭素注入などプロジェクトは多彩で、最近では『ダイレクト エアキャプチャー』と呼ばれる、直接大気からCO2を吸収するという先進的な技術でオフセットされるものがクレジット化されるケースもあります」(e-dash 代表取締役 山崎冬馬氏)

【AJの読み】少量購入も可能でオンラインショップ感覚でカーボンオフセットができる

「e-dash Carbon Offset」のサイトには、主要認証団体の認証を受けた脱炭素プロジェクトがずらりと並ぶ。会員登録の必要もなく、少量からの購入できるため、企業だけでなく個人で購入することも可能だ。オンラインショップのような感覚で購入できるアクセスの良さが魅力といえる。

また、生活者と共に脱炭素社会を推進する共創型プラットフォーム「Earth hacks」は「e-dash Carbon Offset」のサービスを導入。Earth hacksは博報堂の新規事業開発組織「ミライの事業室」と、三井物産が共同で推進するプロジェクトで、生活者とともに脱炭素社会を推進し、脱炭素関連商品やサービス、事業の開発を目指す共創型プラットフォーム。環境に優しくCO2排出削減に貢献している商品やサービスの紹介をしている。

Earth hacksで販売している商品のCO2相当量の平均削減量は約40%、最も削減率の大きい商品は78.9%だが、商品やサービスの製造、提供過程で排出されるCO2相当量をゼロにすることは難しいのが現状。Earth hacksは生活者の持続可能な消費行動を支援するため、どうしても排出されてしまうCO2相当量を、「e-dash Carbon Offset」を通じて相殺し、実質のCO2相当排出量をゼロにする取り組みを行う。

製品やサービスを購入するだけでカーボンオフセットに貢献できるので、幅広い世代の生活者が、手軽に持続的に楽しみながら脱炭素アクションを支援できる取り組みといえる。

文/阿部純子

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年3月15日(金) 発売

DIME最新号はデザイン一新!大特集は「東京ディズニーリゾート&USJテーマパークの裏側」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。