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不妊治療の保険適用化で治療方法の選択はステップアップからパラレルへ

2022.07.18

日本では現在、5.5組に1組のカップルが不妊治療もしくは不妊治療のための検査を受けている。晩婚化に伴い、今後も不妊症患者は増加することが見込まれている。そもそも日本では体外受精をはじめとした高度生殖医療の件数が年間約45万件と、先進国の中でもトップクラスであるにも関わらず、1回当たりの妊娠率は低い。これは妊娠率の低下する40歳を超えてから不妊治療に取り組む人が多いことによる。

このような不妊治療の現状に対して、クリニックのDX化と、カップルが自身の身体について早く知るための教育活動などに取り組みながら課題解決を目指しているtorch clinic(トーチクリニック院長の市山さんにお話を聞いた。

増加する不妊治療患者、低い妊孕性リテラシー

「妊娠のしやすさや能力を『妊孕性』と言いますが、日本人はこの妊孕性に対するリテラシーが諸外国と比較して非常に低い現状があります。結婚当初は当然いつか自然妊娠するものだと思っていたものの、数年経ってから不妊症であることを自覚し、いざ治療に駆け込む頃にはすでに妊孕性が低下しており、選択肢が狭まっているケースがとても多い。これは不十分な性教育や不確かな情報源により、適切なタイミングで自分の身体に向き合うことができていないからです。私たちは、知らないことで選ぶ権利が奪われている現状を変え、一人ひとりが自身に合った情報を受け取り、適切な選択肢を持てる世界を目指しています。」

過去40年間で出生率は約60%低下し、2021年には出生数が過去最低の84万人となった。市山さんは「不妊症は今や糖尿病や高血圧などと同じくcommon desease(一般的な疾患)であり、がん治療や周産期医療と同様にカップルの命と縁を繋ぐ医療。私たちは不妊治療をもっと身近に感じてもらい、カップルごとにテーラメイドされた適切な治療を通して、長期的な出生率の改善に取り組んでいきたいと考えています。」と話す。

保険適用化にともない治療はステップアップ法からパラレル法へ

これまでの不妊治療では一般的に「ステップアップ法」と呼ばれる方法で治療が選択されてきた。より自然妊娠に近く患者の経済的・身体的負担の少ないタイミング法からはじめ、それで妊娠しなければ人工授精(AIH)、さらには体外受精や顕微授精をはじめとした高度生殖医療へと、段階的に治療をステップアップしていく方法である。

不妊治療はこれまで自費診療であったため、高度生殖医療に進んだ場合の自己負担額は、1回の治療あたり約30-80万円と経済的な負担も大きく、特に若年層カップルにとっては金銭的理由から、途中で治療を断念せざるを得ないことも多かった。今年の4月から不妊治療の大部分に保険が適用化されることで、経済的負担が大きく軽減され、患者ごとの年齢や身体の状態、家族計画に合わせ、ステップアップではなくパラレルに治療を選択することができるようになるという。

「ヒトの妊娠率は健康な男女であれば1ヶ月で20%とされ、累積していくと半年で73%、1年間で93%が妊娠にいたると言われています。そのため『不妊症』とは、『避妊なしで1年間性交しても妊娠しない』『患者もしくはパートナーの生殖能力の障害』による疾患と定義されています。つまり正常な妊孕性を持ったカップルであれば1年間でほとんどの方達が妊娠するわけですが、治療方針の決定においてはカップルごとに異なる不妊原因や背景、価値観を考慮する必要があります。

例えば結婚から5年経った夫婦で日頃から性交渉もあるのに妊娠していない場合、自然妊娠とほとんど変わらないタイミング法から始めるのは適切ではありません。反対に、妊孕性の低下した40代のカップルであっても、結婚してまだ間もない場合などは最初から体外受精を勧めることもありません。正しく自身の妊娠率や流産率を理解していただいた上で、タイミング法を数周期行うこともあります。

不妊治療はあくまで家族計画の実現のための手段であり、目的はカップルの幸せであることを忘れないでいただきたいと私たちは考えています。そのため、何歳までに何人子供が欲しいのか。お二人の家族計画に寄り添って適切な選択肢を提示し、お二人が自身に合った治療について正しく理解した上で選択いただくことが非常に重要だと思っています。」

半数近くが男性にも要因。不妊治療にカップルで取り組むために

不妊は65%が女性に原因、48%が男性に原因があるという。男性不妊の原因は大きく3つ挙げられる。精子がつくられない「造精機能障害」が約8割を占め、他には精子は作られるが精路を通れない「精路通過障害」と、性交渉自体を行えない「性機能障害」である。このうち性機能障害による不妊がこの20年間で増加しており、日本のカップルの51.9%はセックスレスであるというデータもある。(出典:ジャパンセックスサーベイ)

「愛情と性交渉は別物。忙しくなかなか性交渉がとれないカップルに無理にタイミング法を勧めることはしません。子供を授かるために排卵日を狙って性交渉を指導することで、かえって夫婦関係がギクシャクすることもあります。人工授精(AIH)は排卵日に精子を持参いただき、濃縮した後に子宮内に注入する優しい不妊治療です。性交渉なしでの妊活を選択することで、かえって夫婦生活がうまくいくことは珍しくありません。

男性にとっても、不妊治療は自身の身体と向き合うことになるため、かなりナーバスな気持ちになるものです。精液検査の数値がよくなかった場合など自尊心が傷ついてしまい、治療を辛く感じることもあります。しかし不妊治療は二人で取り組むもので、カップルの協力が必要なものですから、私たちは男性が治療に参加してくれることがいかに大切なことか、一歩を踏み出してくれた勇気に感謝します。男性側に不妊の原因があっても、実際に通院するのは女性が主体となります。これまでの経験からも、治療が進むにつれ、カップル間でモチベーションや知識にどんどん差が出てしまうケースは多いです。そのため当クリニックでは、いかにカップルが二人で一緒に不妊治療に取り組めるか、ということに重点を置いています。」

トーチクリニックに「産婦人科」や「レディースクリニック」といった名前を付けなかったのもそのためだ。仕事帰りや休日にカップルで通いやすいよう、駅近物件や土日診療といった点にもこだわった。また自分達が今どんな治療を受けているのかデータで理解しやすいよう、診療の終わりにはサマリーを渡し、自宅に帰ってカップル間で情報を共有できるような仕組みも取り入れるなど、関心を持ってくれたパートナーが次回以降診察に同席してくれるようになったケースも多いという。

不妊治療のペインをなくし、正しい選択肢を持てる未来を目指して

日本にはおよそ1.4万人の産婦人科専門医がいるが、不妊治療を専門とする生殖医療専門医は900人ほどしかいない。産婦人科医でも不妊に対する研修を受ける環境は乏しく、その結果専門的な知識を持って適切な診療が行える施設や医師は、年々増加する不妊治療患者数に対して圧倒的に不足している。そのため患者が自身に合った治療を受けられる医療施設と巡り合うことは容易くない。

更に不妊治療は一回の診療あたり1-3時間、一回の治療周期あたり4-6回も通院が必要となる。拘束時間が長く通院の負荷が高いため、働く女性の16.7%が仕事との両立ができずに離職するというデータもある。

「解決すべき不妊治療の課題は、大きく金銭的・心身的・社会的ペインの3つに分けられます。このうち金銭的ペインは今回の保険適用化により大きく負担を軽減できることが見込まれます。トーチクリニックではDX化により、心身的・社会的ペインの解消を目指しています。

例えば予約はアプリで管理。患者ごとの属性や診療内容によって診療時間を推測し予約管理を行っています。更にアプリでの事前問診や、後日決済の仕組みを取り入れることで待ち時間をなるべくなくせるようにしています。またメンタルヘルスケアについて、これまでは診察時の対面コミュニケーションで状態を測っていましたが、問診でメンタルステータスを数値化することで、現在の精神状態を適切に把握した上でカウンセリングを行います。高度生殖医療を受ける患者の約半数が抑うつ状態にあるという報告もされており、時系列を追ってモニタリングすることで早期の介入が可能となります。

不妊治療患者増加の一つの要因は、適切なタイミングで適切な性教育を受けられていないという背景もあります。妊孕性を意識しないまま大人になり、いざ妊活しようと思った時にはすでに選択肢が狭まってしまっていることが多いです。そのような人を少しでも減らすため、トーチクリニックのHPには医師監修による大人に向けた性教育のコンテンツを掲載していますし、多くの方により早く自身の妊孕性を意識してもらえるよう、講演会などの活動も行っています。

私たちが目指すのは、患者が不妊治療を「辛いもの」と感じ離脱することなく、一人一人が自分の身体と向き合い、理解し、納得して不妊治療を続けられるような世界です。そのために良質な医療の提供は大前提として、DXを活用した診療の最適化を進めています。将来的には不妊治療から周産期医療へと取り組みを広げ、妊娠から出産まで見越したトータルサポートの提供、さらに初経から閉経まで、女性の一生涯に寄り添う婦人科診療もDX化によって叶えられたらもと考えています。」

【取材協力】
トーチクリニック恵比寿
市山卓彦院長

取材・文 / Kikka


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