【連載】もしもAIがいてくれたら
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第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第59回:AIをもっと上手に活用すれば酷暑の選挙演説も短縮できる!?
子沢山のマスク氏、次の子供は……
アメリカの起業家イーロン・マスク氏によるTwitter買収について、以前@DIMEの連載で取り上げましたが、なんとTwitter社と合意した買収計画を撤回すると会社側に伝えたとのことです。マスク氏側はTwitter社側に重大な契約違反があったためとしていますが、Twitter社側は法的措置をとる構えで、訴訟に発展する可能性も出ているようです。
私たち一般人が、数千円のものを発注した後にとりやめるのでさえなかなか気を遣うのに、総額440億ドル、日本円にしておよそ5兆9000億円で買うといったものを、やっぱり買わない、と言えてしまうのがすごいです。
マスク氏は3回結婚して3回離婚しており、たくさんの子供を授かっています。米ニュースサイト「TMS」によると、マスク氏が共同設立し、自ら会長を務める脳と情報通信機器をつなぐ技術を開発する会社ニューラリンクの上級重役シボン・ジリス氏との間に、昨年双子を授かり、9人のお子さんがおられるようです。
起業家として成功しており、AIを果敢に活用した自動運転を推進している人ですが、何度も結婚したり離婚したりと、ご本人は感情豊かな方のように推察されます。
お相手の女性はAI関連企業の重役のようなので、AI搭載ロボットをふたりの子どもにしてみる、なんて少し現実離れしたことをご提案してみたいな、と思ってしまいます。というのも、マスク氏がAI搭載ロボットを家族にしてくれれば、この分野は進化し、賛否両論がありながらも、活性化するように思うからです。
AI搭載ロボを“成長”させるには?
マスク氏がCEOを務める米電気自動車(EV)テスラでは、自動運転AIの進化のために、ユーザから走行時の外部カメラのデータや車内のカメラのデータの提供を求めていることは、以前@DIMEの連載で書きました。
AI搭載ロボットの進化においてもデータが重要です。マスク氏にロボットを家族にしていただいて、AIにいろいろ学習させていただき、人と共に暮らすロボットを進化させてほしいです。感情豊かなマスク氏に育ててもらうことで、感情をもつAI搭載ロボットが生まれるかもしれません。
今回は、かなり人の私生活にまで踏み込んで、勝手なことを書いています。しかし、AIは自分自身で成長するというのがその最たる特徴です。現実として、近い将来、プログラミングするわけではなく、AIが人間社会の中で学び、成長するという時代が来るでしょう。
マスク氏がAI搭載ロボットを家族にすれば、ロボットが成長するだけでなく、マスク氏も成長するかもしれません。冷静で客観的なロボットには感情が育ち、感情豊かなマスク氏には多様性や自己と違う他者を尊重する心が育つかもしれません。
ビジネスでも私生活でも、凡人にはなかなかできないことを成し遂げるマスク氏の今後の動向を、期待をこめて見つめていきたいと思います。
坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。