今年5月に開催された「Japan Sports Week 2022」。最新のスポーツギアが集まる同展示会にはパフォーマンスを高める新しいウエアラブルデバイスの数々が発表されていた。その中から開発や導入が進められている、4つの機器についてレポートしよう。
進化したデバイスの普及でコーチの在り方も変わる
国内外で開発された最新のウエアラブルデバイスが集結する展示会で一際目を引いたのは、スペインのレアル・マドリードも導入しているというCOSMED『K5 ウェアラブル呼吸代謝計測システム』。装着したマスクを介し、二酸化炭素の排出量とともに心拍数やVO2MAXも正確に測定可能だ。
今までにこのような計測を行なうためには、屋内の施設で行なう必要があった。一方、同システムはワイヤレス仕様になっているため、グラウンドなどの屋外でも運用できる。複数人での計測にも対応し、サッカーチームで導入されているのもうなずけるところ。
Firstbeat『Firstbeat Sports Sensor』も、すでに多くのチームで使用され始めているデバイス。GPSと心拍センサーが搭載されたベルトを、トレーニング中やゲーム中に取り付けることで、選手全員分のデータがタブレットなどにリアルタイムで表示される仕組みだ。
これまでは選手個人やコーチの経験などをトレーニングに生かすことも多かったスポーツシーン。今後はこういったデバイスの活用が広がっていくことで〝指導〟よりも〝分析結果〟が、選手のレベルアップを後押ししていく時代がくるだろう。コーチが果たす役割も変わっていくのは間違いない。
会場内には、AI解析のソリューションやVRトレーニングの機器をはじめ、人工芝のようなスタジアム設備から、グッズやユニホームまで、スポーツに関連するサービス・製品が並び、来場者は大きな関心を寄せていた。
●チーム全員のデータをタブレットで把握
Firstbeat『Firstbeat Sports Sensor』
1000以上のチームで採用されている、選手の様々な身体状況を計測可能なデバイス。専用の心電センサーで計測したデータに基づき、選手ごとのトレーニング効果や回復スピードなどを数値化し、それぞれの選手に対する最適なトレーニングメニューを提示できる。
〈取得できるデータ〉
心拍数、VO2MAX、移動負荷をはじめとする選手ごとのデータを、専用アプリで一括管理できる。数値はリアルタイムで確認でき、各選手における運動負荷の状態も丸わかりだ。経験とカンに頼らない客観的なコーチングに生かせる。
●〝レアル〟でも採用された呼吸計測デバイス
COSMED『K5 ウェアラブル呼吸代謝計測システム』
レアル・マドリードで導入されており、呼気計測に基づいて選手のパフォーマンスやコンディションなどを評価。画期的なのは、K5本体にタッチスクリーンを備え、酸素と二酸化炭素の両センサーを搭載するところ。
〈取得できるデータ〉
心拍数や移動距離をはじめとする様々な数値を、高精度かつリアルタイムで計測できる。センサーを最大8チャンネル接続できるのも特徴のひとつ。選手ごとのコンディションをチェックしながらコーチングを行なえるのが先進的だ。
●回復状況や疲労度をチェックできる!
Artinis『PortaLite』『PortaMon』
近赤外線を照射することで血中ヘモグロビンの変化を測定し、血中酸素変位データから体内の状態を評価する「NIRS」(近赤外分光法)を利用したデバイス。筋肉の疲労度や回復具合を計測結果から確認できる。
〈取得できるデータ〉
各部位の組織酸素飽和度(TSI)を計測し、スポーツの動きでどの筋肉がどれくらい活用されているのかを視覚化。無駄な動きや、重点的に鍛えるべき筋肉の部位がわかる。
●装着した部位の関節可動域を計測
Biometrics(Q’sfix)『DataLITE 2軸ゴニオメータ/筋電計』
角度または筋活動を計測できる〝ゴニオメーター〟と〝筋電計〟をスポーツ用に転化。装着することによって、筋肉の動きや各関節の動作を分析できる。軽量かつワイヤレスなので測定するシーンを選ばない。
〈取得できるデータ〉
本機で計測した筋肉の活動量や関節の可動域は、PC用のソフトウェア上で視覚化。最大の筋力とともに動きの中で生じる筋力を評価できる。より詳細な筋機能解析も可能だ。
取材・文/今 雄飛