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コロナに感染して執筆できず原稿が納期に間に合わない…ライターが取引先に対して負う責任は?

2022.07.11

テレワークの普及などによって時間ができたことに伴い、副業フリーライターとして活動する方が増えてきました。

フリーライターは、常に原稿納期との戦いを強いられています(デザイナーやプログラマーなど、納期のあるフリーランスの方も同様です)。

ギリギリのスケジュールで執筆を進めていると、新型コロナ感染などの突発的なアクシデントが発生した場合、原稿が納期に間に合わない事態となりかねません。

もしコロナ感染によって作業ができず、原稿の納期に間に合わない場合、ライターは取引先(出版社・ウェブメディアなど)に対してどのような責任を負うのでしょうか?

今回は、原稿の納期に間に合わなかったライターが、取引先に対して負う法的責任についてまとめました。

1. 原稿の納期違反は「債務不履行」|コロナ感染が原因でも、原則として同様

ライターが取引先との間で原稿の納期を合意した場合、納期は両当事者間の契約内容となります。

したがって、納期までに原稿を納品しなかった場合、原則として「債務の本旨に従った履行をしないとき」(民法415条1項)に該当し、ライター側の契約違反に当たります。

納期遅れがコロナ感染で作業できなかったことによるとしても、それは取引先にとって関係がない事情です。

コロナ感染を含めて、あくまでもライター側の事情によって納期遅れが発生したのであれば、ライターは原則として、取引先に対する債務不履行責任を免れません。

ただし、ライターと取引先の間で締結された契約により、コロナ感染に伴う納期遅れが債務不履行の対象から除外されている場合には、例外的にライターは債務不履行責任を負いません。

なお、契約において「不可抗力の場合は免責する」などと抽象的に規定されているケースも多いです。

しかし、コロナ感染により作業できなかったことはあくまでもライター側の事情であることを踏まえると、「不可抗力」に該当すると判断される可能性は低いでしょう。

2. 原稿が間に合わなかった場合の損害賠償責任

ライターが納期に遅れて原稿を提出したことが債務不履行に該当する場合、ライターは取引先に生じた損害を賠償する責任を負います。

2-1. 原稿が間に合わなかったことで、取引先に発生する損害の内容

取引先に発生する損害の内容や金額は、納品される原稿の使用目的などによって異なります。

たとえば、取引先自身が運営するウェブメディアへの掲載記事であり、掲載時期が数日前後しても大きな影響が生じない場合には、損害額はきわめて小さなものにとどまるでしょう。

一方、たとえば取引先が別の会社から受注した執筆案件を、ライターに再委託していたとします。

この場合に、納期遅れによって取引先が発注元の信頼を失い、契約を切られてしまったとすれば、取引先に生じる損害は甚大です。

このように、ライターの納期遅れによって取引先にどのような損害が発生するかは、個別の事情を考慮して判断する必要があります。

2-2. ライターの損害賠償責任の範囲

ライターの納期遅れと取引先の損害の間で因果関係(繋がり)があるとしても、その損害のすべてをライターが負うべきであるとは限りません。

ライターの損害賠償責任は、原則として「通常生ずべき損害」(通常損害)に限られます(民法416条1項)。

通常損害の範囲は、契約の種類・当事者の認識・当事者の属性・取引の方法などを総合的に考慮して判断されます。

たとえば数日程度の納期遅れによって、取引先が発注元から契約を切られたとします。

この場合、たしかに契約を切られた原因の一つは、ライターの責任による納期遅れにあるのかもしれません。

しかし、そもそも取引先と発注元の関係性が十分に構築されていなかったなど、それ以前の取引関係にも原因があるケースが多いでしょう。

したがって、取引先が契約を切られたことが、ライターが責任を負うべき通常損害に該当するかどうかについては、慎重な法的検討を要します。

また、仮に通常損害に該当するとしても、過失相殺の考え方に基づき、ライターと取引先の間で損害を分担すべきケースもあり得るでしょう(民法418条)。

3. 原稿が間に合わなかったことを理由とする契約解除の可否

ライターが納期までに原稿を納品しなかった場合、取引先はライターとの契約を解除することも考えられます。

ただし、取引先による債務不履行解除が認められるかどうかについては、以下の各点の検討が必要です。

3-1. 遅れて納品しても目的を達成できるかどうか

一般的には、原稿の納期は余裕を持って決められており、数日遅れて納品しても大きな問題は生じないケースが多いです。

しかし、出版スケジュールの関係から厳密に納期が設定されているケースや、時事的なテーマのためすぐに公開しなければ意味がないケースなどもあるでしょう。

このような場合には、原稿を遅れて納品したのでは契約の目的を達成できないと考えられます。

納期までに原稿を納品しなければ、契約の目的を達成できない場合、取引先はライターとの契約を無催告解除できます(民法542条1項4号)。この場合、取引先はライターによる原稿納品を拒否することが可能です。

3-2. 納期遅れが「軽微」な場合は、契約を解除できない

上記のような無催告解除の要件を満たさない場合、取引先がライターとの契約を解除するためには、納品の催告を行ったうえで相当の期間が経過することを要します(民法541条1項本文)。原稿納品に関する催告の場合、「相当の期間」は1日程度経過すれば足りるでしょう。

ただし、相当の期間が経過した時におけるライターの債務不履行が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微である場合には、取引先による契約解除が認められません(同項但し書き)。

たとえば、納期が数日遅れても大きな問題がないケースで、ライターから執筆状況の経過報告があり、まもなく納品が行われることが見込まれるような場合には、契約解除が認められない可能性があります。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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