先進的な取り組みだった「ZOZOTOWN」
ネットで服を買うのが一般的でなかった2004年に、アパレルのECサイト「ZOZOTOWN」をスタート。ローンチ当初こそ、店舗集めに苦戦していたものの、結果的に市民権を獲得。東証一部に株式上場した2012年に商品取扱高で月商100億円を突破し、〝アパレル系ECで独り勝ち〟と称されるなど、文字どおり覇権を握る存在にまで急成長した。
当時「ZOZOTOWN」が評価されたのは、UI/UXの使いやすさ、在庫表示・在庫管理やサイズ表記といった細かな使い勝手。
もともとアパレル系通販は、実店舗販売のように実物を手に取れないため、消費者が商品の色やサイズを判断しにくい点が最大のデメリットだった。
もちろん、これに関しては今も100%解消されていないが、それでもZOZOの取り組みは先進的だった。
サイズ計測アプリを活用したアパレルショップがポツポツと登場し始めた矢先に、ZOZOは2017年の採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」(2022年6月23日サービス終了)、2019年の足の3D計測用マット「ZOZOMAT」を発表。
サイズ計測アプリに加えて、専用の計測ツールを無料配布するZOZOの戦略は、かつてないほどに大きな話題となった。そんな中、時代の寵児となった前社長・前澤友作氏が退陣を電撃発表した。
この瞬間を〝ZOZOの絶頂期〟と認識している読者は少なくないだろう。
たしかに筆者の肌感でも、前澤氏退任以降のZOZOのニュースにお祭り騒ぎのような勢いはなくなった。ある意味で、いち企業として正常化したといってもいい。かといって前澤氏退任以降、ZOZOは凋落したと結論づけるのは間違いだ。
実際の収益を見ると、前澤氏が退任した2019年は就任中最高の1184億円を計上。その一方で、上場以来初となる減益を記録した年であり、ZOZOTOWNから撤退するお店が相次いだことで〝ZOZO離れ〟が業界内で囁かれるなど、暗雲の立ち込め始めた時期でもあった。
前澤氏退陣後の業績はどうか? 実は右肩上がりに推移。2021年は過去最高の1474億円を記録しているのだ。2022年の業績も好調だ。
出典:ZOZO「2022年3月期 決算説明会資料」より抜粋
なぜか?理由のひとつに挙げられるのが、2017年当時に評価されたストロングポイントの強化だ。
2006年「ZOZOBASE」、2017年「ZOZOBASEつくば2」に続き、2023年8月の稼働を目指して商品の保管・梱包・発送までをすべて担う新たな物流拠点「ZOZOBASEつくば3」を開設。
加えて、ZOZOはOMOプラットフォーム「ZOZOMO」始動に伴い、フルフィルメントサービス「aratana gateway」を実装。出店元の自社ECとZOZOBASEを連携することで在庫の一元管理を実現するなど、自社物流拠点への取り組みと合わせて、ストロングポイントである在庫表示・在庫管理を強化・拡大した。
もうひとつは、買い物のストレスを軽減し、さらには企業へ販売するためのテクノロジーの開発に注力していることだ。
2019年は身長と体重を選択するだけで理想のサイズが購入できるサービス「マルチサイズ」と足の3D計測用マット「ZOZOMAT」、
2021年にフェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS」、手指の3D計測用ツール「ZOZOMAT for Hands」、
2022年4月にはZOZOTOWN内のコスメ専門のショッピングモールであるZOZOCOSMEに「ARメイク」機能を追加。「ARメイク」を使うことで、まるで鏡を見ながら商品を試す感覚で、ZOZOCOSMEで扱う様々なコスメをZOZOTOWNのアプリ上で試せるようになった。
そしてもうひとつ、我々DIME編集部員として忘れてならないのは「ZOZOSUIT」の動向だ。
残念なことに、「ZOZOSUIT」自体は2022年6月にサービスを終了。計測データの閲覧もできなくなってしまったが、これで「ZOZOSUIT」の灯火が消えてしまったのかといえば、そうではない。
ZOZOは2020年に3D計測用ボディースーツ「ZOZOSUIT 2」を発表しており、従来のように一般ユーザー向けではなく、ファッションに限らず、様々な企業に向けたBtoBサービスとして活用法を模索。
そんな中、ZOZOはZOZOSUITの計測技術を活用したサービス化第1号「ZOZOFIT」を今夏アメリカにて開始する予定を発表。
「ZOZOFIT」は、ジムや自宅にいながら手軽で高精度な3Dボディースキャンおよび計測データのトラッキングを可能にするサービスで、ZOZOSUIT全体に施されたドットマーカーを、スマホ上のZOZOFITの専用アプリとカメラで360度撮影することで、高精度な体型計測を可能にするというもの。
コロナ禍を背景に世界的に高まる健康意識、また健康経営への取り組みが加速する中、ZOZOは独自の計測テクノロジーを武器に、アパレル、ウェルネス、フィットネスなどのビッグデーターホルダーとしての存在感を増しつつある。
取材・文/渡辺和博
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