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IT人材の育成や企業のDX推進を後押しする官民一体の支援事業「日本リスキリングコンソーシアム」が発足

2022.06.27

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

あらゆる人のスキルをアップデートする「リスキリング」に取り組む新たな試み

グーグルが発起人となって6月に発足した「日本リスキリングコンソーシアム」は、国や地方自治体、民間企業などが一体となって、地域や性別、年齢を問わず、あらゆる人のスキルをアップデートする「リスキリング」に取り組む新たな試みで、参画企業によるトレーニングプログラムや、就職支援、副業、フリーランスなど幅広い就業機会の提供を行う。

日本リスキリングコンソーシアムの主幹事である、グーグル合同会社 日本法人代表 奥山真司氏は立ち上げの経緯をこう話す。

「世界デジタル競争力ランキングで日本は54カ国中28位。特に人材においては国際経験やデジタル技術スキルの不足が指摘されていますが、裏を返せばスキルを高め新しい知識を身に着けて価値を高めることに成功すれば、日本にはまだまだ大きな成長余地があると言えます。

政府はデジタル田園都市国家構想の実現を目指し、2026年度までに230万人のデジタル推進人材の育成を目標に掲げています。グーグルとしてはこれまで『Grow with Google』というデジタルスキルトレーニングプログラムを提供してきました。グーグルだけでなく、政府、民間を問わずより広いパートナーのみなさまと共に拡充していることが重要だと考え、設立したのが日本リスキリングコンソーシアムです。グーグルが発起人となり総務省や経済産業省、地方自治体、多くの民間企業など計49のパートナーの官民連携で取り組むリスキリングのための包括的なプロジェクトです。

リスキリングとは新しい職業に就いたり、今の仕事の幅を広げ、新しい職務にチャレンジするためにスキルをアップデートしていくこと。コンソーシアムでは日本のデジタル技術を大きく加速する枠組みを官民一体で構築していき、地域や性別、年齢に関わらず、ひとりひとりが学び続け、ビジネスや組織にイノベーションをもたらす支援を行い、リスキリングを通して2026年までに50万人をビジネスや組織のリノベーションをもたらす人材へと育成することを目指しています」

日本リスキリングコンソーシアムは、リスキリング、ジョブマッチングのスキルを有する企業、国や地方自治体、業界団体など、49(2022年6月16日現時点)の企業や団体、省庁が協力・後援パートナーとして参画する。

リスキリングを支援するウェブサイトを開設、リスキリングの希望者はサイトに無料で登録することにより、用意された200以上のトレーニングプログラムを受講できる。

トレーニングプログラムは、ビジネスパーソンをはじめ、女性、シニア、経営者、求職者、学生、教育者などあらゆる人が利用できる内容になっており、学習のテーマはテレワークやAI、インターネットセキュリティなどのデジタル技術や、マーケティング、学校教育など多岐に渡る。

それぞれ初級者から上級者までに対応しており、ステップを踏んだ学びが可能。リスキリング希望者は、受講したいトレーニングを目的レベル、無料、有料などから検索できる。また、ウェブサイトのマイページには、受講状況の管理機能のほか、登録情報や受講履歴利用者と同じような目的や年代、地域の受講者データに基づいておすすめのトレーニングプログラムを紹介するリコメンド機能を備え、一人一人に適した受講をサポートする。

受講後は希望者を対象に、獲得したスキルを就業に活用できるよう就職、転職だけでなく、副業やフリーランス、アルバイトなど多様な働き方に対応する就業支援サービスも提供する。

「私はデジタルスキルトレーニングプログラム『Grow with Google』や、テクノロジーの活用により女性の活躍を支援する『women will』の立ち上げに携わってきました。スキルトレーニングに関わる中で感じたのは、新しいスキルを獲得する学び直し=リスキリングの意識がここ数年高まってきているということです。

現在、リスキリングに関するニーズは大きく3つあり、そのニーズに日本リスキリングコンソーシアムは対応していきます。ひとつめが『より幅広いプログラム、高度なプログラムを通じてスキルアップしたい』。コンソーシアムでは多分野に渡る16社のリスキリングパートナーの、初級から上級までレベル別に200以上のトレーニングプログラムを提供。マーケティング、データ分析、AIやクラウド、組織の多様性や働き方改革、デジタルを活用した学校教育など多岐にわたり、受講者の目的別に選択できます。

2つめが『身に着けたスキルをキャリアアップにつなげたい』。コンソーシアムには8社の人材サービス企業がジョブマッチングパートナーとして参加し、就職、転職、副業など求職者と企業のマッチングを幅広く行います。

3つめが『数多くのリスキリングの中から自分に合ったものを見つけたい』。コンソーシアムのサイトには、プログラムやサービスをすべて一覧し検索できる機能を提供します。

2026年までに50万人を目標に、今後もパートナーの拡大とトレーニングプログラムの拡充を進めていき、リスキリングのニーズに応える包括的なサポートを提供することで、日本のリスキリングをより実践的で実効性のあるものとし、社会にインパクトをもたらすことを目指します」(グーグル合同会社 バイスプレジデント アジア太平洋・日本地区 マーケティング 岩村水樹氏)

リスキリングパートナーのひとつである日本マイクロソフト株式会社、執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤亮太氏は、現在の日本企業のDX化やIT人材の必要性についてこう語る。

「コロナ禍をきっかけとして社会全体のDXがこれほどまでに必要だということを、さまざまな局面で感じました。80%の企業がデジタル技術の普及によって、大きな影響を受けていくと回答し、約半分の企業が今後5年間、あるいは5年ごとに企業の競争力を維持しづらくなっていると答えています。それほどまでにテクノロジーの進化が、社会、事業、ビジネスに与える影響が大きくなってきていると経営者が感じているということでしょう。

日本ではIT人材の約7割がベンダー側、約3割がユーザー側の企業や組織で、欧米の先進国とほぼ真逆の割合になっています。このデータが示唆するのは2点。まず分母を上げていく必要があるということ。もうひとつはユーザー側の企業におけるIT人材、DX人材の少なさが社会全体のDXの壁になっているということ。組織、業務の実態をより近くで感じているユーザー側の人間がDXのシステムやプロジェクトに関わっておらず、比率が少なすぎることが課題と考えています。

こうした状況では、我々が目指している本質的なデジタル・トランスフォーメーションが起きづらいというのは想像に難くありません。

テクノロジーは日々進化し、習得したスキルは約5年で劣化をしていくと言われます。DX人材の大切さが改めて浮き彫りになると同時に、学び続ける姿勢を社会や企業全体で持ち続けることが非常に大切になってきます。

コロナ禍以降、マイクロソフトも、コンソーシアムのパートナー企業様も学びのコンテンツの拡充を積極的に行っています。弊社の一例として2020年にはグローバルで2500万人に学んでいただくデジタルスキル獲得支援プログラムを作り、現時点で4200万人の方々が学んでいます。

しかし日本の現状を見るとまだまだ足りません。壁を超えるために重要なのが学び手の目線。都合の良いときに自分に合った正しいコンテンツが取得できるような、受ける側の目線に立った利便性は必要です。コンソーシアムのような官民が一丸となって学び手の目線でコンテンツを提供し、アクセスしやすくする活動がますます重要になってくるでしょう」

ジョブマッチングパートナーとして参画する「ビズリーチ」を傘下に持つ、ビジョナル株式会社代表取締役社長 南壮一郎氏は“労働寿命の延長”における企業の在り方を指摘した。

「私が社会に出たころと比べ、日本の労働寿命が延び続けています。労働寿命が延びれば、働く時間も延びていく。このような時代にありながら、ビジネスモデルの賞味期限はどんどん短くなっています。デジタル技術を使っている企業と使いこなせていない企業の優劣の差は大きく広がっており、労働寿命が延びる中で企業の寿命は短くなっていく。これこそが日本でリスキリングが必要となる理由だと考えています。

我々ジョブマッチングの会社は、リスキリングされた方々の新しい仕事の機会を提供するのみならず、ジョブマッチング現場で起こっている、どのようなスキル、経験に価値があるのか、どのような人材が求められるのか、リスキリング、学びの現場に対してより効率的になるようなデータをコンソーシアムに提供していきたいと思っています」

【AJの読み】地域や性別、年齢を問わずすべての人がスキルをアップデートし働ける社会を後押し

労働人口の減少や、地方と都市部、大企業と中小企業のデジタル格差、デジタル人材の不足、労働生産性の低さが日本における課題となっている。一方で働き方の変革も求められており、多様な働き方を選択できる社会の構やそれに対応した人材育成も必要とされている。

こうした課題を解決するため、ビジネスや組織のイノベーションをもたらす人材へ育成することを目指して発足した日本リスキリングコンソーシアム。地域や性別、年齢を問わずすべての人がスキルをアップデートして働ける社会を後押しする、企業や国、地方自治体が一丸となった新たな試みだ。だれも取り残されず、生き生きと学び働ける社会の実現に向けて、全国の人々が学び続ける機会を創出する取り組みに注目したい。

文/阿部純子

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