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9年ぶりのフルモデルチェンジ!思い切りの良さが仕立てた上質感を満喫できるプジョー「308アリュール」

2022.06.22

9年ぶりのモデルチェンジを施され、ガソリン、ディーゼル、そしてプラグインハイブリッドと、3つのパワートレインを積んで登場した新型「プジョー308」。新たなエンブレムまで備えたフランスを代表する新世代ハッチバックモデル。その完成度を探るためにガソリンモデルのアリュールを走らせた。

フランス人のプライドを支えたバランス感覚

北半球では1年でもっとも日照期間が長くなる夏至。「太陽の力がいちばん強まる日」とされ、日本も含め、世界各地で夏至にまつわる祭典が多く催されている。その祭りのひとつとも言えるのが、耐久レースのル・マン24時間レース(以下、ル・マン24)だ。「世界最大の村祭り」とか「偉大なる草レース」とも表現され、まさにヨーロッパの夏を思う存分に楽しむための一週間だ(基本的には毎年、夏至にいちばん近い土~日曜日に開催)。

日本でレースと言えば、予選と決勝が行われる2日間だけにスポットが当たる。ところがル・マン24は違っていた。初めて観戦・取材した81年、現地から「本戦の一週間前にル・マンに来なさい」との厳命が届いた。

シャルル・ド・ゴール空港で、予約していたレンタカーのキーをカウンターで受け取る時、「ル・マンに行くのか?」と、いかにも羨ましそうに聞かれた。そして「思いっきり楽しんできて!」と言う言葉で送り出された。ミシュランのマップを片手にオートルートに乗り入れ、パリを素通りして、フランスの西部に位置するサルト県の県庁所在地、ル・マン市に到着し、街を二分して流れるサルト川沿いの小さなホテルにチェックイン。2段ベッドにシャワーだけという小さなホテルだったが、東京のシティホテルをも凌ぐほどの料金設定になっていた。

それでも「取れただけでも幸運」と現地コーディネーター氏が言う。そしてホテルの窓からは見える景色にいささか驚いた。決勝は一週間後だと言うのに、ル・マン市内はすでにお祭り騒ぎだった。さらに“一般公開の公式車検”がジャコバン広場で行われているから行けと言う。車検会場には屋台で買った食べ物を手にした観客でごった返していた。いよいよル・マンウィークの始まりだ。以来、興奮に満ちた本番レースだけでなく、この一週間にわたる祭りの雰囲気を味わうために、12回もル・マンに通うことになるのだ。

ル・マン24時間には、数多くの観戦ポイントがある。個人的に好きなポイントのひとつが約6kmにも及ぶストレート(まだ2カ所のシケインは設置される前)が続くユノディエールで、そこでの最高速争いは楽しかった。そんな中でワークス・マシンではないものの、活躍していたのがWMセカテバ・プジョー88(以下、プジョー88)というマシンだった。本国開催のレースであれば、プライベーターであっても総合優勝を狙うのが本筋。ところがプジョー88は耐久レースの成績よりも、例年どおりにユノディエールでの「直線番長決定戦」に命をかけていた。そして88年、405km/h(実際には410km/h以上だったが、新車の405を売り出すための販売戦略で下方修正されたとも言われている)の最高速を記録。「コーナリングすることはほとんど考えられていないマシン」などと言われていたのだから、始めは冗談かと思った。だがチームは、いやフランス人の多くは、その尖ったチャレンジを誇りにしている風であり、いたって大真面目だったのだ。

もちろん88年もユノディエール脇のガードレールに張りつきながらカメラを構え、甲高いエンジン音とともにやって来るWMプジョー88を待っていた。だが、400km/h前後で疾走するマシンを捉えるなどプロでも難しいのに、素人が捉えることなど不可能なのである。シャッターチャンスを逃し、ちょっぴり悔しそうにしていると、コースマーシャルたちが満面の笑顔でこちらを見ながら親指を立て、なんとも嬉しそうにはしゃいでいる。

フランス人のプライドを支える革新性

まるで俺たちのプライドを背負って「よく走ってくれた、プジョー!」とでも言わんばかりなのである。もちろん彼らはこれで十分なのだ。下手に走り続け、活躍などするようなことになると、「かえって心が不安定になる」と言う人までいた。そんなプジョーだが、92年にはワークスとしてプジョー・タルボ・スポールが参戦し、優勝を果たした。そして、それ以降にも2度、勝利をフランス国民にプレゼントしているのだ。こうしてル・マンの舞台でもフランス人のプライドを支えてきたプジョーだったが、残念ながら本年のル・マン24時間には不参加。レースカーからリアウイングを取り去ったとか、その革新性が注目されていた「プジョー9X8」のデビューは、7月10日開催のWEC世界耐久選手権の第4戦、モンツァまでお預けのようだ。

このようにフランスを代表するプジョーの中心的モデルとして、これまで大きな役割を果たしてきた308。昨年の春に9年ぶりの新型が本国デビュー。そしてようやく今年、日本デビューを果たした。敢えて詳細な比較論は避けるが、このクラスのベンチマークと評されるドイツ代表のVWゴルフが好敵手だ。

ところが、である。王道の方法論でコンサバティブに進化を遂げたライバルに対し、308は革新に満ち、ドラスティックに変化していた。佇まいを見ただけで、スタイリッシュにしてスポーティであり、素直にかっこいいと思える仕上がり。ステランティス発足後、初めての投入モデルとなれば、さすがに力がこもっている。

「良く出来たデザインは特別なエクスキューズを要しない」という評価軸は正しいと納得出来た。敢えていうなら、1975年以降採用されていた「後ろ足で立つライオン」のエンブレムが11年ぶりに刷新され、実写感のある「ライオンの顔」をかたどったデザインに変更された点である。賛否あるだろうが、新しい308のフォルムにはこれまでのシンプルなデザインがスッキリとフィットしていたのではないか、と感じた。

そんなことを考えながら、ガソリンエンジンモデルのアリュールのアクセルをグッと踏み込んだ。1.2Lの直列3気筒DOHC12バルブ・ターボガソリンがスムーズに、なんと軽やかに回転を上げていく。130馬力であるが、不足はまったく感じないほど心地いい加速感。もはや排気量の大小で内燃機関の力強さやフィールを評価してはいけない、とこれまた確信した次第だ。

そしてなによりこのコンパクトカーを上質に感じさせたのは17インチのタイヤとストロークにゆとりのあるサスペンション。警戒でありながら、なんとも乗り心地が良く、その味つけのあんばいが、なんともほどいいのである。本来の上質とはこう言う物かとさえ、思ったのである。もちろん308のこの仕上がりがあれば、「やるなら徹底的に」というフランス人の流儀を支える、大切な1台になる事は間違いないだろう。

実はル・マンウィークには1日だけ、お休みがあり、これも楽しみのひとつ。この日だけはカメラもメモ帳も置き、近隣にあるゴルフ場で楽しんだり、世界遺産のモン・サン・ミシェルにドライブしたこともあった。いまも心残りなのはイギリス海峡に面した港湾都市、シェルブールに行けなかったこと。もし、またル・マン観戦が適うなら、今度は休日に新しい308を走らせ、カトリーヌ・ドヌーヴの面影でも探しに行ってみようかと思う。

善後のフェンダーのボリューム感と水平基調のスッキリとしたリアランプのデザインのバランスが良く、実にスポーティなデザイン。

テップレザーとファブリックとのコンビネーションが標準仕様のシート。なによりも座り心地の良さが光る。

シートバックは6:4の分割可倒式のリアシート。スキーホールなども装備されている。

ラウンド感と水平基調とが上手く溶けあい、プラスチック感がありながらも上質さが漂う。

小径のステアリングの上からデジタルメーターが見える、プジョー独自のiコクピット。ステアリングの上下調整に干渉されることが少ない。

ATセレクターやドライブモードスイッチなどをシンプルにまとめたセンタコンソール。非常に使いやすい。

ライオンの頭部の、よりリアルなデザインを採用したエンブレム。

(価格)
3,053,000円~(308 Allure/税込み)

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,420×1,850×1,475mm
車重:1,350kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
トランスミッション:8速AT
エンジン:水冷直列3気筒DOHC 1,199cc
最高出力:96kw(130PS)/5,500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kgm)/1,750rpm
問い合わせ先:プジョー・コール 0120-840-240

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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