沖縄から北海道までをつなぐロングトレイル
島崎藤村が「木曽路はすべて山の中である」と書いたように、日本の国土の約70%が山岳地帯である。山を越えて街と街をつないでいるのがトレイルと呼ばれる道だ。環境省はトレイルを森林や原野、里山などにある「歩くための道」と定めている。
6月16日に日本ロングトレイル協会は、公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団の支援を受けて「JAPAN TRAIL」構想を発表した。これは日本列島を縦断して沖縄から北海道までをつなぐ全長約1万kmのトレイルを整備して、日本のトレイル文化のシンボル的存在に育てていきたいという。
最低でも10年はかかる長期的支援を持続したい
安藤スポーツ・食文化振興財団の理事長 安藤宏基氏は「日本のロングトレイルをまとめて1万kmにするという構想は5〜6年前からありました。しかし、これは長い、1日10km歩いたとしても全踏破には3年かかる計算になります。最初はそう考えましたが、私自身も霧ヶ峰のトレイルを歩き日本アルプスを眺望したときに、ハイキングはすごくいい体験になると実感しました。日本のトレイルをまとめて1本にすれば、そこに日本が見えてくる。全踏破する必要はなく、少しでも歩けば1万kmの先につながっている夢を描けると思えました。
財団はJAPAN TRAILを長長期に渡って支援することを決めました。長野県小諸市にある安藤百福記念自然体験活動指導者養成センターから情報発信すると同時に、選定されたトレイルの整備や道標の設置などを考えています」と語った。
安藤理事長は財団がJAPAN TRAILを長期に渡って支援することを確約した
日本ロングトレイル協会内にJAPAN TRAIL提唱委員会を発足
JAPAN TRAILの構想は5年前に日本ロングトレイル協会の代表理事 中村達氏を中心にしたプロジェクトから生まれた。それ以前にも同じような構想をした団体は複数あったが、いずれも実現には至らなかったという。日本ロングトレイル協会に属する29団体がJAPAN TRAILとしてつながる可能性が見えてきたことで政策委員会を立ち上げ、ルート選定と地図アプリの開発がおこなわれた。
2022年2月23日に制作委員会を日本ロングトレイル協会に移管することが決まり、JAPAN TRAIL提唱委員会が生まれた。プロジェクトを推進するための予算を安藤スポーツ・食文化振興財団の支援が決まったことで、計画は遂にスタートする。
1次ルートは屋久島から九州、四国、本州、北海道、知床半島に至る
日本ロングトレイル協会に属する各地団体代表者4名もコメントした
WTN会長ガレオ・セインツ氏から動画によるメッセージが寄せられた
トレッキングではなくハイキング
JAPAN TRAILを歩くことを委員会では、登山でもトレッキングでもなく、ハイキングと呼ぶことを提唱している。無積雪期の日本流登山=ハイキングという位置付けになる。ハイキングには3つ分類があり、「Hiking Trails」、「Mountain Trails」、「Alpine Trails」の順に難易度が高まる。JAPAN TRAILのキャッチフレーズはHiking Nipponとされている。
JAPAN TRAILのルートは標高0mから3000mで、無積雪期を想定、原則としてバリエーションルートは対象外となる。また、ロープやハーネスなどの登攀用具を必要としないルートが選定されている。ルート詳細については路査などにより確認が取れた所から順次、公開される予定だ。歩くことで日本を再発見するハイキングは新しいアウトドアレジャーとして定着するのだろうか。私も機会があればJAPAN TRAILを実際に歩いてみたいと思った。
JAPAN TRAIL構想を紹介するためのスペシャルムービーも公開された
JAPAN TRAILの地図アプリ。自分が歩いたトレイルの記録を残せる
ルートマップを表示して、歩行距離や歩行時間を自読的に記録できる
文/ゴン川野