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ジョブ型雇用の導入推進が必ずしも先進的な経営手法とは言えない理由

2022.06.24

■連載/あるあるビジネス処方箋

前々回から3回にわけて、「ジョブ型雇用」をテーマにメガベンチャー企業のメンバーズ(東京都中央区、社員数約1,800人、2022年3月時点)の人事担当役員・高野明彦氏にインタビュー取材を試みる。メンバーズは、主に企業のデジタルマーケティングを支援する。

1回目はこちら。
2回目はこちら。

ジョブ型雇用は、欧米企業でよく見かける。欧米企業は日本企業よりは、社員や従業員が担当する職務の内容や範囲、報酬(賃金)が明確で、厳格と言われる。採用の現場では、企業側と雇われる側との間で、職務の内容、範囲、賃金などが詳細に書かれたディスクリプション(職務記述書)を交わし、合意となる。

高野明彦 (たかの あきひこ)氏
株式会社メンバーズ取締役 兼 専務執行役員。1999年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。新生銀行を経て、2005年メンバーズ入社。2006年11月の株式公開を始めとし、リーマンショック後の全社変革プロジェクト、人事制度改革、中期経営計画の策定・実行、ミッション・ビジョンの策定・浸透プロジェクト、働き方改革、東証一部上場など全社的な重要プロジェクトの推進を数多く担う。2011年執行役員、2016年常務執行役員、2018年に取締役就任。

欧米ではジョブ型雇用の影響で新卒者が入りにくく、社会問題となっている

Q、前回(その2)で、「ジョブ型雇用は新卒採用とはマッチしない」と指摘をされましたね。

高野:ジョブ型採用が浸透すると、通常はその企業に新卒者が入るのは難しくなるはずです。その職務やポジションを獲得するのは経験者が有利ですから。

欧米などの企業社会では、大学を卒業しても就職ができない人(失業者)の数が多く、以前から社会問題となっています。その理由の1つには、ジョブ型雇用の影響があると思います。

日本でも就職氷河期の時代などには20代の失業の傾向は部分的にありましたが、依然として大卒者の内定率は欧米企業に比べると高い傾向があると理解しています。ジョブ型雇用の企業が増えると、大卒の新卒者が内定を得ることが厳しくなる傾向になると思います。

Q.IT業界ではエンジニアをはじめ、人手不足が深刻になっています。私が取材をするこの業界の採用責任者の9割は「中途採用では、ミドル層を獲得するのが難しい。今後ますます難しくなる」と言います。そのようなことも見据え、メンバーズはジョブ型採用をしないのでしょうか。

高野:前述しましたが、弊社も元々中途採用においてはジョブ型採用に近い採用の仕方をしています。確かに人手不足は深刻化しつつあり、ミドル層の中途採用は厳しさを増す一方です。これからは、大企業がジョブ型雇用を切り札にデジタル人材の中途採用を積極化するでしょうから、企業間の競争は一段と激しくなるでしょう。

新卒採用でも、今後はさらに難しくなるはずです。学生数は大幅に減ります。ですから私たちは、社会貢献をできるやりがいのある仕事、若手から裁量を持ってチャレンジできる成長環境、積極的な人材育成投資、誰もが長期的に安心して働ける労務環境の整備などによって、新卒者を採用する力を強くし、長期的に成長しながら生き生きと働き続けてもらうことに努めているのです。

ジョブ型雇用を推し進める大企業に新卒者として入社するのは、若手にもチャンスが回って来やすくなると捉えればチャンスなのかもしれませんね。一方で、事業構造のリストラクチャリングをしている最中なのですし、日本の大手企業においてジョブ型雇用がうまくいっているという実例も少なく、かつての成果主義の導入のように失敗に終わるリスクもあると思います。少なくとも私は、ジョブ型雇用の導入を推進している大企業を、先進的な経営手法を導入している優良企業のようにもてはやす風潮には疑問を感じます。

Q、ジョブ型雇用に対して、「メンバーシップ」が一部で見つめ直されていますね。どのように捉えますか。

高野:メンバーズの社名の由来が、このメンバーシップなのです。ただし、従来の大企業のようなメンバーシップではありません。企業に所属することそのものに意味があるのではなく、「メンバーズをともに創る」といった意識を全員が持つ、いわゆる全員経営を大切にしています。その意味でのメンバーシップです。

新しいスタイルのメンバーシップであろうとしていますから、私たちはともに働く仲間を新卒採用や中途採用で雇う時に、会社として大切にする価値観やミッション、ビジョンへの理解や共感を求めます。欧米でも企業のパーパスや、OKRのように大胆な目標に対してチームで柔軟に自分たちの目標を掲げる手法などが注目されています。契約社会でジョブ型雇用という形式ではあるものの、これらは私たちが考えるメンバーシップ型の経営スタイルに近いものだと思っています。

入社後の人事評価は職能給と成果給の併用で、個々の社員の働きや成果、実績には正当な評価をします。かつての職能資格制度は職能と言いつつ単なる年功序列の要素が大きく、成果給を反映する思想が十分には浸透していなかったと思います。弊社の制度では、それは克服していると考えています。大企業病にならないようにしていくために、今後も様々な工夫をしていきます。

取材を終えて

今回、人事労務の論客の高野氏に取材を試みたのはここ数年の「ジョブ型雇用」を報じるメディアやその雇用を称える有識者らに、私自身が強い疑問を感じるためだ。ジョブ型雇用をなぜ、称えるのかといった理由がその報道からわからない。そもそも、この雇用のあり方を実は把握していないのではないか、と思える場合すらある。「なんとなく、イケてる」ぐらいの感覚で進めている企業もあるのかもしれない。私としてはそんな風潮に異議あり、の姿勢を示したかった。人の採用や育成は、もっと真剣に考えるべきことなのではないだろうか。

文/吉田典史

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