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映画評論サイトで96%の高評価!ヨアキム・トリアー監督作品「わたしは最悪。」の〝わたし〟はどれだけ最悪なのか?

2022.06.18

■連載/Londonトレンド通信

 写真の彼女が“わたし”である。印象は悪くない。シンプルな服装とメイクはむしろ好印象、少なくともルックスから最悪とは感じられない。

 ということは、何かやらかした?

 このノルウェー映画『わたしは最悪。』(7月1日公開)の英題は『The Worst Person In The World』、「世界一ひどい人」だ。それが大好評、ロッテントマトなど96%の高スコアになっている。

 ロマコメというから、最悪な人がやらかす爆笑ドタバタ恋愛劇を思い浮かべた。が、そうではなかった。恋愛込みで女性の生き方が描かれる。

 その彼女の生き方、全く最悪とは思わなかった。

 彼女は自分に正直なだけ、そして、そのように行動するだけだ。

ユリヤの自分にも周囲にも正直な生き方が清々しい

  プロローグとして描かれる学歴でよくわかる。医学生だった彼女は、学びたいのは人の体ではなく心と気づき、心理学に移る。だが、それも違うと、最終的には写真を学ぶ。

 「せっかく入ったのに」とか「社会的地位も収入も高い医師になれる」ではなく、「学びたい」を優先する。選んだ後もほんとうにこれか考え、間違いと思えば方向転換もいとわない。惰性でダラダラ行くことがない。

 そこを経て、メインで描かれるのは彼女の恋愛だ。とくれば、どんな映画かわかろうというもの、こっちの男性、あっちの男性と登場する。といっても、ビッチとか尻軽女の類ではない。プロローグで予測できるように、自分に嘘をつかなかった結果そうなっていく。

 そんな彼女ユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)のこっちの男性とは、恋人アクセル(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)だ。グラフィックノベル作家で、毒のある、女性蔑視ともとれるノベルを描く。だが、本人はユリヤの意思を尊重する男性だ。

 それでも、2人の間に食い違いが生じていく。

 10ほど年齢差がある2人の、ライフステージの違いだ。名を成しつつあるアクセルに、自分の道が見つからないユリヤ、加えて、子持ちの友人に囲まれたアクセルが、子どもを望み始めたのもきっかけになる。

 ユリヤとアクセルはそれぞれに個性的でお似合いのカップルだ。そうとしても、まだ自分を確立できていないユリヤが、子を持つことなど考えられないのは十分に理解も共感もできる。

 そんな時に、アイヴィン(ヘルベルト・ノルドルム)が現れる。

 ユリヤは自分にだけでなく、パートナーに対しても正直だ。二股などしない。ユリヤが紛れ込んだパーティー会場で出会った時から、惹かれあっているのがわかるアイヴァンとも、アクセルに秘密で関係を進めることはしない。

 同様に恋人がいるアイヴァンもそういう誠実さを持ち合わせている。初対面のパーティーで、「これは浮気ではないよね?」と確認しながら、知り合っていく。キスなどしないが、煙のやりとりはする。さらに際どいこともする。次回会ったらもう…。ドキドキさせる。

 この四角関係の行方と、ユリヤの行く道を追っていく。

 学生時代に専攻変更で見せた潔さ、大胆さで進んでいく“最悪”なユリヤだが、悪感情を持つのが難しい。

 こういうパターンだと、何も知らずにパートナーを失いつつある人の方に共感しがちだ。この映画の場合だとアクセルや、アイヴァンの恋人だが、ついついユリヤ寄りになってしまう。なぜだろう?

 ユリヤは自分で選んだことの結果は、自分で引き受ける。自分が決めたことだから、たとえ思うようにいかなくても、人のせいにしない。恨むこともない。周囲の人に対しても正直だから、フェアでもある。こう生きられたら、どんなに清々しいことか。

 人生論みたいになってしまったが、もちろん堅苦しい映画ではない。辛口の笑いをちりばめ、テンポよく進んでいく。

 ユリヤを演じたレナーテは、これが映画初主演ながら、カンヌで女優賞を受賞した。

 アクセル役のアンデルシュも注目株だ。最近では『ベルイマン島にて』(https://dime.jp/genre/1369392/)でミア・ワシコウスカの相手役を務めた。今回の役とは別人のような姿で登場している。
 
 『わたしは最悪。』をフレッシュな主人公とともに特徴づけるのは、辛辣な笑いと、もう1つ、大胆な性描写だが、ヨアキム・トリアー監督があのラース・フォン・トリアー監督の遠縁と聞けば納得だ。


(C)2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel ‒ ARTE FRANCE CINEMA

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。
http://eigauk.com

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