「FSC®️森林認証制度」は、森林の減少や劣化の進行を食い止める効果が期待されている、世界的な取り組みのひとつ。日本でも多くの企業がCSR(企業の社会的責任)として採り入れているが、実は、個人レベルでも実行可能な森林保護のアプローチでもある。緑豊かな国といわれる日本で暮らす私たちだからこそ改めて知っておきたい、「FSC®️森林認証制度」の仕組みと内容を紹介する。
昔から、野生の動物や植物のすみかとして、また人間社会の近代化以降は、地球温暖化を防止するうえで重要な働きをしている森林は、一方で、暮らしやビジネスに必要なものを生み出す場所でもある。そんな風に様々な意味で重要な環境である森林は、近年、深刻なスピードで減少や劣化をし続けている。それを食い止めなければ、という人々の環境意識の高まりを背景に、国際的な森林認証管理団体であるFSC®が1994年に発足。「FSC®️森林認証制度」は、そのFSC(森林管理協議会)が守るべき自然の森林の減少を食い止めると同時に、森林を生産のためにも持続可能なかたちで適切に管理していくことが必要、という考えをもとにして策定した制度なのだ。
「FM認証」と「CoC認証」によって成り立つサプライチェーン
森を守る制度である「FSC®️森林認証制度」には、厳密さを貫く特別な仕組みとして「FM認証」と「CoC認証」という2段階の認証が用意されている。「FM認証」は、森林資材を生み出す森林を対象とする認証で、「この資材を生んだ森林は健全に管理されているか」「その森に従事する人たちの人権が守られているか」などがチェックされる。
「CoC認証」は、その「FM認証」を受けた森林から産出された原料を元にした木材や紙製品を対象とし、それらが適切に管理・加工されていることを認証する制度。伐採業・製材業・製造業・流通業・印刷業・小売業など、最終製品に到るまでの間に関わる全ての事業体が対象となる。
事業者は、この「CoC認証」を取得して初めて、加工した製品や、パンフレットなどの広告宣伝用の媒体に、“木をモチーフにした”FSC認証マークを付けることが認められるのだ。
自分で発信するものにもFSCマークを採り入れたい
FSC認証製品は、木材製品、パルプ及び紙製品、非木材林産物の3つのカテゴリに分類される。SDGsに対する認識が広まるとともに、ここ数年でFSCマークの認知度も高まり、その製品も広がりを見せている。オフィスで使うコピー用紙の包装、ハンバーガーショップで手渡される紙コップ、冷蔵庫に入った牛乳パックなど、日常の中で手にする様々なものにFSC認証マークが見受けられるようになった。意外なところでは、環境ポリシーを導入した楽器メーカーが発売したギターにも付いている。
そんな中、FSC認証製品で最も多く生産され、購入されているのが「紙」だという。しかし、FSC認証製品の「紙」と、環境に優しい製品として認知されている「再生紙」とは何が違うのだろう? 「再生紙はゴミの削減、資源の有効活用という点で評価されていますが、リサイクルの繰り返しによる品質の劣化、および製造過程で発生するCO2の排出量、並びに、漂白剤の使用が問題視されるようになってきました」。そう答えてくれたのは、「CoC認証」を取得している東洋美術印刷マーケティング本部の丸山博司さん。加えて、FSC認証を受けている紙はバージンパルプを主原料としているため、再生紙をはるかに上回る色再現性の高い印刷品質を得ることができるというメリットもあるという。
それを生かして、例えば、お店をオープンする際のチラシや起業して新たな一歩を踏み出すための名刺を作るといった折に、FSC認証の紙を使うことで、森林を守って地球環境を保全する運動に寄与することもできる。また、FSC認証マークが入っていれば、自然とパーソナルブランディングのイメージ向上にもつながることだろう。
取材協力/東洋美術印刷
取材・文/堀けいこ