パンデミックによる、隠れたメンタルヘルス問題が
約2年前、パンデミックが始まった当初からメンタルヘルスの問題については広く語られてきた。その内容は主に、不安神経症やうつ病、精神的苦痛などについてであり、摂食障害について議論されることは多くない。
摂食障害の現状
アメリカで摂食障害を抱える人の数は過去2年間で増加している。摂食障害は別の精神疾患をともなうことがあるだけでなく、適切な治療がなされなければ生命を脅かす可能性もある。
日本で摂食障害を理由に受診する人の数は年間21万人。患者は10〜20代の若者に多く、女性の割合が高いという。症状は人によってさまざまであるが、主なものに必要な量の食事ができない、食べる量のコントロールができなくて食べ過ぎる、食べたものを意図的に吐いてしまうなどがある。
本記事では、進化している摂食障害の治療方法を紹介するとともに、摂食障害であるかどうかの6つのチェック項目を紹介しよう。
摂食障害に対応するプログラムの5つのベース
摂食障害は年代、性別、人種を問わずどんな社会でも起こり得る。全米での患者数は現在、女性が2千万、男性が1千万と考えられており、摂食障害協会によると、この数字はさらに2030年までに5%増加すると予想されている。
摂食障害の治療の難しさは、決まった治療法が存在せず、それぞれの人が自分に合った方法を見つけ出す必要があることにある。
この状況に対応するための方法として、患者の身体だけにフォーカスするのではなく、一人ひとりの精神状態や置かれた環境を含めた全体をホリスティックに診るプログラムが存在する。このプログラムでは患者のトータルヘルスに重点を置き、共感的なコミュニティを作ることがキーとされる。
摂食障害の患者をホリスティックに診るプログラムは、5つの要素をベースとする。
1.医療
摂食障害を克服するためには、患者自身の基礎的な体力や回復力が不可欠である。また回復の過程を正しく診断するためには、専門的な訓練を受けた医師による、協力的で共感に満ちた態度が欠かせない。
医学的には、患者が抱える症状の原因とその克服方法を伝えることによって患者を支援する。
2.自分自身や他者との関係性
人生の目的や自分を表現する方法を探ることで、自分自身や他者を深く理解することができる。違う言い方をするなら、自分自身を再発見し、自分を表現することに自信を持つこと、目標に向かって歩むことで自分を知り、他者と深い関係を築けるようになる。これは、天職を知ることにもつながっている。
また希望を持ち、前向きなモチベーションを保って治療を続けることで、回復したあとも未来に対して前向きな展望を抱き続けることができる。
3.栄養
回復の過程において、適切な栄養を取ることは非常に重要である。食べ物との関係を健康的なものにするためには、バランスの良い栄養を取ること、また食を楽しみとして捉え直す必要がある。
バランスの取れた食べ物を選ぶための知識と、健康的な食事の経験が自信をもたらし、食事が楽しめるようになる。
4.運動
身体を動かすことは、心と身体、両方にとっての治療や癒しとなり得る。身体の声を聞いてそれに対応することが、身体の状態を知るベースとなるのだ。運動は理想的な健康状態に至る道であると同時に、その存在に感謝しながら身体に対する理解を深める方法でもある。
5.セラピー
回復を妨げるトラウマやネガティブな感情、恐れは、セラピーを通して癒すことができる。セラピーが働きかけるのは摂食障害ではなく、摂食障害を患っている人であり、患者にフォーカスすることで治療の効果が発揮される。
ただし誰にでも効果のある治療方法は存在せず、回復のためにはその人に合ったケアが必要不可欠であることを常に心に留めておくこと。
摂食障害であるかどうか6つのチェック項目
効果的な治療の第一歩はまず、問題を特定することである。専門の医師とともに次の6つの項目を検討することによって、摂食障害を特定し、回復への道を開く一助になる可能性がある。
1.摂取カロリーや食べるものに制限を設けていますか
2.不快に感じるほど食べて具合が悪くなることがありますか
3.食べる量をコントロールできなくて困っていますか
4.この3ヶ月間で6kg以上減量しましたか
5.ほかの人に痩せすぎと言われても自分は太っていると思いますか
6.食べものに人生が支配されていると感じますか
食べることや眠ることといった、生きる上での基本的な活動に支障が出ることほど苦しいことはなかなかないのではないだろうか。摂食障害ではないかと感じる場合には、信頼できる人や組織にコンタクトを取って、助けを求める勇気を持って欲しい。
参考:
The Unseen Mental Health Effects of the Pandemic | CISON
文/森野みどり
編集/inox.