小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

患者の免疫システムで腫瘍を攻撃する実験的治療法が膵臓がんの革新的な治療法につながる可能性、米プロビデンスがん研究センター報告

2022.06.15

実験段階の治療法、膵臓がん患者で有望な結果

患者の免疫システムを構成する重要な要素を、腫瘍を攻撃するように再設計する実験的な治療法が、膵臓がんの革新的な治療法につながる可能性が示された。

米プロビデンスがん研究センターのRom Leidner氏らが、同治療を一人の膵臓がん患者に施行したところ、有望な結果が示されたことを、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」2022年6月2日号で報告した。

この患者は、米フロリダ州在住のKathy Wilkesさん(71歳)だ。Wilkesさんは67歳のときに膵臓がんと診断されて以降、肺への転移を伴う膵臓がんと闘ってきた。

しかし、複雑で痛みを伴う治療を行っても、ほとんど効果が得られなかった。Wilkesさんは、「私はひたすら乗り越えてきた。当然ながらまだ死ぬ覚悟なんてできていなかった。私の内なる声は、“あなたなら打ち勝てる”と言っていた」とNew York Times紙に語っている。

Wilkesさんは、2021年に新たなアプローチによる治療を受けた。

この治療は、感染と闘う白血球の一種であるT細胞に焦点を当てたものだ。Leidner氏らは、Wilkesさんの血液サンプルからT細胞を分離して活性化し、Wilkesさんのがん細胞に発現している変異の1つを標的とするように再プログラミングした。

その上で、このT細胞を162億個に増やし、Wilkesさんに注入する治療を1回だけ行った。それから11日後にWilkesさんは退院した。

治療後にCTスキャンにより追跡調査したところ、Wilkesさんの肺の腫瘍は治療から1カ月時点で62%、6カ月時点では72%縮小していた。治療から1年後もWilkesさんの状態は良好に維持されているという。

Wilkesさんのケースに関する会見で、「NEJM」編集長のEric Rubin氏は、「極めて複雑な改変プロセスによって、T細胞を取り出してがん細胞を死滅させるよう操作できることが示された」と説明した。

同氏によると、この治療法は極めて特殊な種類の免疫療法であるという。免疫療法は通常、患者の免疫システムを、がん細胞を攻撃して死滅させるように仕向ける分子標的薬を用いた治療法を指すことが多い。

Rubin氏は、今回の成果は「有望」かつ「大きな前進」であり、膵臓がんや治療効果が得られにくい他の疾患の治療法を大きく改善するための方向性を示したものだと語る。

また、がんの中でも特に膵臓がんは、「治療が非常に難しく、死亡率が高く、生存期間が極めて短い」と指摘し、「より有効性の高い治療法の開発は歓迎されるだろう」と強調している。

ただしRubin氏は、今回の報告は1人の患者における初期段階の成果に関するものだとして、慎重な解釈を求めている。

同じ治療を受けたもう1人の患者では治療の効果は得られず、膵臓がんにより死亡したという。

同氏は、「この治療法が複数の患者に一貫して有効であるかどうかを確かめる必要がある」と話し、この実験段階にある治療法は「治癒に導く治療からはほど遠いものだ」と付け加えている。

それでも、一部の専門家からは今回の報告を歓迎する声が上がっている。その一人で、今回の研究には関与していない米マサチューセッツ総合病院がんセンターのCesar Castro氏は、「現在、膵臓がん患者に対しては、つらい化学療法が施行されることが多いが、数カ月しか効果が得られない。それと比べれば、これは劇的な改善だ」と述べる。

その上で、「この新たな治療アプローチは個々の患者の腫瘍に合わせて個別化できる可能性があり、また膵臓がん患者の予後に影響を与え得ることから、価値のある初期段階の試みだといえる」との見方を示している。(HealthDay News 2022年6月2日)

Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2119662

Press Release
https://www.providence.org/news/uf/676437784?streamId=927641

構成/DIME編集部


@DIME公式通販人気ランキング


興味のあるジャンルを登録して@DIMEをもっと便利に!Amazonギフト券が当たるキャンペーン実施中

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2023年3月16日(木) 発売

DIME最新号の特別付録は「5インチ電子メモパッド付き計算機」、特集は「ミニマルライフ&ギア」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。