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コンペ300戦無敗!伝説のエンジニアが説く成約を勝ち取るためのヒント

2022.06.12

倒産の危機に直面して毎年300社回る

今は、ドルフィア株式会社の代表取締役として活躍する井下田久幸さんは、日本IBMを皮切りに数社を渡り歩き、会社員として33年間働いてきた。

会社員時代を「波乱万丈の日々」と述懐する井下田さんだが、もっとも忘れがたい「衝撃の1日」がある。

日本IBMから、小さなベンチャー企業に転職して1年半経った、ある日の経営会議。技術支援およびマーケティングの担当部長として出席した井下田さんは、経理のマネージャーから、驚きの発言を聞かされる。

「売上が停滞しています。このままいくと、今年6月に破産します」

資金も潤沢な躍進企業と思っていただけに、まさに寝耳に水。しかし、よく考えてみれば、主力の新製品となるはずだったソフトウェアは大失敗。次の製品は、まだプロトタイプに過ぎなかった。

当時39歳の井下田さんは背水の陣を敷き、営業を巻き込んで毎年300社回る活動を4年続けたという。

結果として、最悪の危機の年度を黒字に持っていき、4年でコンペ300戦無敗という記録的な業績を挙げる。

以来、「伝説のエンジニア」と呼ばれた井下田さんが、先般上梓した書籍が『コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術』(かんき出版)だ。

書名に「理系」とあるとおり、IT系企業出身者の視点が目新しい。だが、そのエッセンスは、理系・文系問わずビジネスパーソンなら必読といってよいほど濃いものだ。

今回は、井下田さんのコメントを織り交ぜつつ、考え方のコアとなる「合理的な努力」そして「理系のプレゼン術」を紹介しよう。

■相手の悩みを因数分解して成約へつなげる

井下田さんは、もともと技術畑に身を置き、営業としてのキャリアを積み重ねてきたわけではない。だが、倒産寸前という危機をバネに、技術者兼営業支援のようなスタンスで取り組んできた。しかも、営業担当から同行を求められるのは、いつもピンチのとき。

修羅場をいくつもかいくぐって会得したのは、やみくもな努力礼賛の根性論ではない。「合理的な努力」があったからこそ、コンペで連戦連勝できたという。

井下田さんの説く「合理的な努力」は全部で9種類。その1つが「お客様の悩みを因数分解してシンプルに解決する」というもの。

ここでいう「因数分解」とは、「一見難しく見える事象をわかりやすい事象の掛け算で表現できるように分解」すること。

見込み客のニーズは、「複数の要因が絡み合っている」のがふつう。そして、見込み客は、その絡まりを解けずに悩んでいることが多いが、そこが狙い目となる。セールスする側は、その悩みを要素に分解することで、「自然と解決に向かう」という。

悩みを「因数分解」することで成約率を高める

実際の例として、井下田さんは自身の体験を1つ明かす。

「『うちはかなり特殊なデータフォーマットを扱っていて、いつも人手作業で変換しているのだけど、これを自動化出来ないかな?』こんな要望がよくあります。

頼んでいるお客様からすると、自社は特殊と感じているらしいのですが、場数を踏んだ私から見ると、大抵のお客様がこんな悩みを持っているものです。特殊フォーマット変換の依頼を受けた大抵のベンダーは、それを鵜呑みにして、その特殊フォーマットに合わせたカストマイズ構築して納品します。

提供するツールの費用+カストマイズ費用を見積もることになるので、結構な高額になります。しかも直前になって「それは聞いてなかった!」となるような、新たな仕様が出て来て、費用と時間のトラブルも頻出しがちです。

私はいつもお客様からサンプルデータをいただくようにしていたので、そのデータと睨めっこしてシンプルな構造の組み合わせで、複雑なフォーマットになっていることに気付きます。

ありがちなケースとしては、可変長のデータと聞いていたが、実はヘッダーのデータの後ろにCSVデータが付いていただけ、みたいなケースです。分解すると、ツールの既存機能の組合せだけで変換出来てしまうケースが多いのです。まさにパズルを解く感覚です。

他社が高額な見積もりを出す中、私はツールの基本料で提案出来たので、100%勝てることが出来ました」

■担当者個人のメリットもアピールする

セールスの現場では、特に初めての商談ともなると、営業トークもいきおい熱を帯びる。

「ムダが大きく削減できてコストカットできますよ!」

「これにより大きな売上向上が見込めます!」

当然ながら、こうしたメリットを第一に話すことになろう。しかし、これだけでは足りないと、井下田さんは語る。

必要不可欠なのは、見込み客の「担当者個人のメリット」なのだという。例えば、

「このプロジェクトを成功させれば、あなたも昇進しますよ!」

「これを導入すれば仕事が劇的に効率化できて、部下から尊敬の眼差しで見られますね!」

という具合に。

また、窓口担当者(キーパーソン)の「便利屋になる」という手も。本書で井下田さんは、こう記している。

“きっと忙しいキーパーソンです。猫の手も借りたいほどです。上司へ説得する比較資料はもちろんのこと、費用計算の資料などは代わりに書いてあげるのです。もっと言えば、直接には関係ない会議の議事録を書いてあげるのだってアリです。(中略)
お客様に誠心誠意ギブすることが、あとで大きなご褒美となって返ってくるでしょう。これも、私が連戦連勝できた秘密の1つです。”

「便利屋」を買って出て見込み客の心をつかむ

これについても、井下田さんは具体例を教える。

「あるお客様では要件もシンプルで、あるデータベースから構造の違う別のデータベースに移行するためのツールを選定されていました。それが簡単に解決できる自社製品の体験版をお客様のシステム環境に導入していたものの、要件がシンプルなので特に私の手間もかかっていませんでした。

そんなことから、営業ではない私は、お客様キーマンとの雑談が増えていったのですが、そのキーマンが折角データベースから抜き出した情報をコピペで、エクセルに手作業転記してレポートを書いていることに気付きました。そこで私は、導入した体験版を使って、自動的にエクセルに差し込むテンプレートを作ってあげて、そのお客様の面倒くさがっていた作業を楽にしてあげました。

ある日、お客様から『要件が少し変わった』と連絡が入り、データベースからエクセルを自動生成することも要件に加わりました。それが出来ることがウリだった私の製品が選ばれたのは言うまでもありません」

■不利な状況下では「心意気」がモノを言う

先の事例を読んで、「意外と泥くさいんだな」と思われたかもしれない。もちろん、300戦のコンペの全部が全部そうだったわけではなく、どちらかと言えばレアケース。とはいえ、競合他社に圧倒的に不利な状況で戦わねばならない「絶体絶命」のときは、「心意気」が決定的に働いたこともあるそうだ。

井下田さんの経験した1例を挙げよう。案件は「CSVファイルをデータベースに挿入するだけ」というもので、競合に勝つか負けるかは純粋に速度性能のみ。

しかも、ライバル企業は、すでに顧客のデータを使って性能結果を出している。井下田さんが得意とする、デモを実演してどうこうは通用しないというものであった。

“失注が目の前に迫ったある日のこと。私は客先に出向き、自社のツールで実測を始めました。どうあがいても競合より速いスピードを出すことができません。諦めるわけにはいかない私は、電話で開発部隊と会話しながらモジュールを修正しては導入し直して、もう一度測定する作業を繰り返し、気がつけばすでに夜中に。お客様はとっくに帰宅されていましたが、私は明け方の3時までかけて、開発部隊の力も借りながら、いくつかあったテストケースのうちのたった1つで、やっと競合に勝つことができました。”

結局、テストレポートを提出できたのは明け方の4時であったが、井下田さんの会社が受注に成功した。あとから聞いた話では、見込み客が発注した理由は、性能よりも井下田さんの「心意気」であったという。

窓口担当の人は、「気概のあるパートナーと仕事がしたかった」というが、常日頃そう思っている人は少なくないはずである。毎度これをやっては疲弊するだけだが、ここぞというときに繰り出す奥の手として、もっていたいスキルとなるはずだ。

最後は心意気で逆転できることも

後編につづく。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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