孤独や対人関係に問題のある高齢者は詐欺にかかりやすい
孤独な高齢者や対人関係がうまくいっていない高齢者は、詐欺被害に遭いやすいことを示す研究結果が「Aging & Mental Health」に2022年5月18日掲載された。
論文の上席著者である、米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校のDuke Han氏は、「高齢者の対人関係の質が、経済的なリスクとなる可能性が明らかになった」と述べている。
これまでに長年、詐欺被害に遭いやすい高齢者の特徴として、独居であることや人間関係の乏しいことが関係していると考えられてきた。実際にその関連性を示した研究も報告されている。
ただしそれらの研究は、単に両者の間に関連があることの確認にとどまり、高齢者の置かれた状況が詐欺被害リスクの原因であると断定するには根拠が乏しかった。
これに対してHan氏らは、前向き観察研究によって、因果関係の存在を検証した。研究結果から、社会的なつながりを維持することに、詐欺被害に遭いにくくなるというメリットのあることが示された。
この研究では、50歳以上(平均65歳)の成人26人の健康状態と認知機能、不安やうつなどのメンタルヘルス状態、および過去の詐欺被害の経験を調査。その後、2週間隔で6カ月間にわたり、計13回の追跡調査を行った。
これらの調査では、研究参加者の人間関係がどのくらい機能しているかを評価した。そのため例えば、他者と会話や議論をする頻度、他者に拒絶されたり孤独を感じたりする頻度、友人が増えたり他者との関係が好転することを望む程度などを質問して、その回答に基づき評価を行なった。
また、詐欺に対する脆弱性については、例えば「どの程度の自信を持って、高額の出費を決定できるか」、「どのくらいの頻度で、応じたくない金銭的要求、または寄付の依頼を受けているか」などの質問に対する回答で判断した。
解析の結果、所属している社会的サークル内で急に問題が増えたり、孤独感の高まりを感じたりした2週間後に、詐欺に対する脆弱性が高い心理状態になることが明らかになった(P=0.007)。
また、そのような状況の変化とは別に、対人関係がうまくいっていない高齢者も詐欺被害に遭いやすいことも分かった(P=0.03)。
共著者の一人である同医学校のAaron Lim氏は、「われわれの研究結果は、金銭的搾取に対する高齢者の脆弱性を予測可能であり、詐欺被害に遭わないためには対人関係の機能を維持することが重要であることを示している」と述べている。
研究者によると、これらの結果は、フィッシングメールを用いた詐欺や、息子や孫のふりをして「急にお金が必要になった」と電話をかける特殊詐欺(オレオレ詐欺)から身を守る方法の確立に寄与すると考えられるとのことだ。
さらにLim氏は医学校発のリリースの中で、「高齢者が詐欺被害に遭わないために、子どもや孫は高齢者の人間関係に注意すべきだ。高齢者支援団体は、高齢者の社会的つながりを強化するための機会を提供すべきだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年5月30日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/13607863.2022.2076210?journalCode=camh20
Press Release
https://keck.usc.edu/social-dissatisfaction-predicts-vulnerability-to-financial-exploitation-in-older-adults/
構成/DIME編集部