内気な少女が実父を追ってイタリアマフィアに!?Amazon Prime Videoのクライムドラマ「アリーチェの物語」の見どころ
2022.06.10イタリアのマフィアを描いた作品といえば、これまで男性が主人公のものが圧倒的に多かった。
2022年4月28日よりAmazon Prime Videoで独占配信が開始したAmazon Original 『アリーチェの物語』は、10代の少女がミラノでマフィアになる異色のクライム・ドラマ。
回想録『Mafia Princess(原題)』に着想を得ている。
あらすじ
1980年代後半のイタリア。イタリア北部ヴェネト州の小さな町で母親とふたり暮らしをしていた16歳の少女アリーチェは、約10年前に亡くなったはずの父親サントが実は生きていることを知る。
サントが現在ミラノでマフィアのメンバーとして活動していることを知ったアリーチェは、何かに突き動かされるようにミラノ行きのバスに飛び乗る。
見どころ
アリーチェが勢いに任せてミラノに行ったのは、ほぼ写真でしか知らない父親の愛情を追い求める気持ちと、若さゆえの強い好奇心からくる無鉄砲さが半々と言ったところだろうか。
きっと本人さえも、自分を衝動的にミラノに向かわせた“何か”の内訳が、よくわかっていない可能性もある。
たとえ暗い悪の道に足を踏み入れても、過酷な現実に適応するために感情を押し殺していても、愛を求める心を人は完全に失うことがないのかもしれない。
そして、「自分は愛情を求めている」と自覚している人よりも無自覚な人のほうが、心の奥底で愛を求める度合いは強かったりするのではないだろうか。
「愛している」と言いながら娘に死体の後始末を任せるなんて、そして娘もそれに応じるなんて……平和な日常をおくっている普通の人の常識では考えられない、“親子の絆”のシーンだ。
しかし同じ環境を体験したこともない人間が、温かな安全圏から頭で考えた綺麗事を押し付けて“別の世界を生きる人”の人生をジャッジすることの方が、ある意味ごう慢で残酷なことなのかもしれない。
たとえ一生懸命に勉強して知識を身につけても、あれこれと頭で想像力を働かせても、五感を使って自分の心と体で体感しなければ、決して理解できない“現実”があるはず。
サントが牢屋の中からアリーチェに語った「人生は複雑なんだ」というセリフは、情けない父親の言い訳がましさもあるが、同時に真実でもあると思った。
父親を追いかけて裏社会に身を投じた不器用なアリーチェの切ない心を、「愚かだ」と一蹴することができるだろうか。
Amazon Original 『アリーチェの物語』
Prime Videoで見放題独占配信中
(c)Amazon Studios
文/吉野潤子