ビールを最高に美味しくする「ペアリング」を、コンビニ食材で試したら!?
「自分にとっての最高の一杯」と言えるビールに出会うため、ビアジャーナリストのくっくショーヘイさんに7種類のキャラクターのビールを紹介していただいた連載【極上ビールを求めて】。
著書「うまいビールが飲みたい!」の刊行を記念して、2022年5月14日に丸善ジュンク堂書店で配信イベント「家飲みに役立つ!ビールの「うまい」飲み方&ずぼらペアリングのすすめ」が開催された。連載最終回となる今回は、その様子の一部を紹介。5000種以上のビールをテイスティングしてきたくっくショーヘイさんが独自に導き出した「ペアリングの法則」を、コンビニ食材で手軽に実践する方法を伝授する。
フードペアリングインストラクター/ビアソムリエ/ビアジャーナリストのくっくショーヘイ(佐藤 翔平)さん。著書に「うまいビールが飲みたい!最高の一杯を見つけるためのメソッド」(くっくショーヘイ著/リトルモア)
イベント前半は、ちょっとしたコツで家飲みビールが劇的に美味しくなる裏技解説。特別にお金をかけなくても、ビールの管理方法だけでも大きく味に差がつくことに驚愕(と同時に、今まで知らなかったことを激しく後悔)。続いて、連載でも紹介してきたペアリングの法則(「一緒」「置換」「組合せ」「対比」、詳しくは連載【極上ビールを求めて】参照)。7種類のビールとのペアリングのうち、4種類を紹介する。
ラガー(COEDO-Ruri- )×筑前煮
私は「コンピニペアリング」というのを推奨しておりまして、今回、ペアリング提案するビールはできるだけ手に入りやすいもの、フードについてもなるべくコンビニなどで手に入るもので紹介していきます。
1番目は、「ラガー」です。日本のナショナルブランドのビールはほとんどこれで、いわゆる”爽快な味わい”が特徴。淡色ビール特有の美しい色も楽しめるビールです。これに合わせるのは、「筑前煮」。
実はこのラガービールと和食って、すごく相性がいいんです。鰹節とか出汁の優しい味わいとのバランスがいい組み合わせなんですね。ラガービールが日本で一番愛されている理由は実はそこにあるような気がしていて、やっぱり食文化というのは、美味しい組み合わせが残っていくのかなって感じています。では(会場にいる書店スタッフに)これを召し上がっていただいて、食レポお願いできますか?
書店スタッフAさん ビールの苦みはけっこう強いんですが、(筑前煮の)旨味とすごくバランスがいいですね。
素晴らしいコメントありがとうございます。カンペとかないですよね?(笑)。今おっしゃってもらった通りラガーの苦みと和食の旨みは、先ほどの法則でいうと、「味変の法則」で相性がいいのと、このラガー系のビールに使われているホップの香りなどが、土の香りや、ハーブを思わせる香りがするものが多いんですよ。ですから根菜や野菜ととても相性がいいわけです。(美味しそうにビールを飲んでいる書店スタッフを見て)私もそちらに行って飲みたい…(笑)。次に行きましょう!
淡色エール(よなよなエール)× オイルサーディン
2つ目は「淡色エール」です。皆さんがいわゆる「クラフトビール」と聞いてイメージされているのは、淡色エール系が多いのかなあと思います。
同じ淡い色合いのビールでも、先ほどの「淡色ラガー」はどちらかというと喉ごしがシャープで香りはそんなに強くないタイプですが、こちらの「淡色エール」は使っている酵母が違ったり、ホップを多く入れたりして味のバリエーションがあって、香りも味わいも華やかな物が多いんですね。最近人気のIPAもこちらに分類されます。今回用意したのは、コンビニでもよく見かけるようになった「よなよなエール」、それにオイルサーディンを合わせてみたいと思います。
(ビールを注ぎながら)この「よなよなエール」は私もすごく好きで、ちょこちょこ買っておうちでも飲むビールなんです。すごく完成度が高くて、本当にこれがコンビニで300円しないで買えるっていうのはすごく素晴らしいことだなあと思ってます。飲むたびに、「今の時代に生まれてよかったな」と思います。
ではこちらはさっきとは違う方に飲んでいただきましょう。まずビール自体を味わっていただけたらなと思います。私もいただきます(笑)。うん、柑橘やフルーツの香りがあって、ホップの苦味もほどよく効いて麦のコクもあって、非常にもう飲みやすくて、バランスの良いアメリカンペールエールですね。
ぜひオイルサーディンをちょっとある程度咀嚼したところで、よなよなエールを流しこんでもらえると、それぞれの味わいが重なって美味しく感じられるかなと思いますが、いかがですか?
書店スタッフBさん 美味しい!なんか海鮮系のものと合わせてビールを飲むと美味しくないな、と思うことがあるんですけど、なぜかこの組み合わせだったら全然いいな、と思いました。
本当にもう、全部先に解説していただいたみたいな感じ(笑)。いわゆる魚介類の生臭さを、この華やかな香りと柑橘の香りがマスキングして隠してくれるのと、コクがあり苦味もある程度強いのでオイルサーディンの旨みを受けとめてくれているんです。柑橘の香りはオリーブオイルと好相性なので、洋食系に併せてもらえると美味しい組み合わせになるかなあと思います。
白ビール(銀河高原ビール)×スモークサーモン
3番目は「白ビール」です。色がちょっと白っぽく濁っていてフルーティーな香りがあり、苦味が少な目のタイプです。ビールは基本的に原料に大麦を使うんですが、小麦を多く使うことで、まろやかな口あたりが生まれます。今回用意した「銀河高原ビール」もよくコンビニで見かけると思います。こちらは「ヴァイツェン」と呼ばれるスタイルで、バナナのような香りや、クリームのような口あたりも楽しめるビールになってます。こちらに合わせるのはスモークサーモンですね。
こちらのビールも私は大好きでよくコンビニで買うんですけど、って、さっきからそれしか言ってないですね(笑)。(注ぎながら)こんな感じで、少し薄濁りな感じがしてるかと思います。泡もすごくもっちりとしていて、見た目的にもおいしそうに見えますよね。では、試食をお願いいたします。
書店スタッフCさん 美味しい、、美味しいです!
美味しい2回いただきました(笑)。
書店スタッフCさん 実は白ビールが苦手なところがあったんです。でもスモークサーモンと合わせると、その若干嫌な部分が逆にすごく美味しく感じられるような…。
白ビール苦手克服ですね!ありがとうございます。白ビールは、特にこちらのヴァイツェンはそうなんですが、 “フェノール香”という特有の香りがあって、それが燻製の香りと非常に相性がいいんですね。他にも先ほどご紹介したオリーブオイルを使った料理や、また専門的な言葉で言うと「ラクトン」という、桃とかココナッツに含まれる香りを持つ食材ともすごく相性がいいです。
そしてまた白ビールは味わいが穏やかなので、スモークサーモンの優しい味わいを損なわないんですね。そして白ビール特有のクリーミーな口当たりが、サーモンのねっとりとした食感とすごく同調するので、口の中で一つにまとまる美味しい組み合わせになります。
琥珀色ビール(エチゴビール プレミアムレッド)×キャラメルポップコーン
4つ目はまた色が変わって、次は「琥珀色ビール」です。今回ご用意したのは、「エチゴビール プレミアムレッド」ですね。エチゴビールさんは、「地ビール元年」と言われてもいる1995年からずっとビールを造っていて、私もすごく尊敬しているビール会社さんです。琥珀色ビールというのは、売っているところは少ないし、製品数も例えばIPAとかと比べると少なめではあるんですけども、私はすごく好きな種類のビールですね。
いわゆるカラメルだったり、ビスケットだったり、ちょっと香ばしさが楽しめるビールになっています。こちらに合わせるのはキャラメルポップコーン。もうなんとなく「そりゃ美味しいでしょうね」っていうのはわかるかと思うんですけども(笑)、こちらもぜひ召し上がっていただこうかなと思います。
(注ぎながら)缶のデザインがまたかわいいんですよね、この女性が踊っている写真とかね。では、こちらとキャラメルポップコーン、ぜひ合わしてみてください。いただきます。(スタッフに)ビールの味はどうでしょうか。
書店スタッフDさん 美味しいです。フレッシュで、なんかフルーティーですね。
そうですね、エールなんでフルーティーな香りにちょっとよく優しく香ばしいニュアンスが余韻に感じられると思います。ポップコーンと合わせるとどうですか?
書店スタッフDさん すごい美味しいです。個人的にビールとカステラをよく合わせて食べていて、甘いのを合わせるのが好きなので、この組み合わせはすごくいいですね。
ありがとうございます。今日の皆さんは、喋り慣れているのですごくやりやすいですね(笑)。もう、本当にその通りで、ビールって甘いものとかスイーツとかと合わせるイメージはあんまりないと思うんですが、実はそういうものともすごく相性がいいんです。
このエチゴビール プレミアムレッドは、さっき「フルーティ」と感想をおっしゃっていただきましたけど、ちょっとキャラメルとか、完熟したフルーツのような香りがあるので、やっぱそういったキャラメルとかお砂糖を煮詰めたような味わいとすごく相性がいいんですね。本当に土曜日とかお休みの日に、ポップコーンをつまんで映画を観たりしながら飲んだら、楽しいんじゃないかなと思います。
黒ビール(ギネススタウト)× パウンドケーキ
黒ビールは焦がした麦芽を一部使っているので、見た目も真っ黒だし、味わいも麦芽由来のコーヒーやチョコのような香ばしいフレーバー効いてるビールになります。一度は飲んだことがあるという方が多いかなとは思うんですけれども、今回は「ギネススタウト」をご用意しました。こちらも今日は、スイーツで合わせてみようと思います。コーヒーやチョコってすごくスイーツとの相性がいいのでよく一緒に召し上がると思うんですけども、黒ビールも同じ感じで合わせることができます。
では注いでいきましょう。このギネススタウトは実は普通のビールとちょっと違って、中に特別なカプセルが入っているので、先ほど紹介した注ぎ方ではなく、上からドボドボ注ぐのが正解になります。
カプセルというのは、すごく専門的な言葉を使うと「フローティング・ウィジェット」というもの。通常のビールは炭酸ガスが充填されているんですけども、こちらは中に窒素が充填されていて、すごく口あたりがまろやかになる仕組みになっているんです。何はともあれ、1回注いでみましょう。
皆さん、見えますか? 「サージング(※)」っていうんですけど、泡と液体が綺麗にどんどん分離していっているんですよね。見ていて面白いので、ぜひご自宅でも買っていただけたら面白いかなと思います。
※注いだ後にグラス内で成分が対流を起こして上部へと立ち上り、クリーミーな泡へと変わる工程
(じっと見つめながら)見ているだけでもすごく楽しいんですけど、そうなっちゃうともうビール変態ですね(爆笑)。はい、こんな感じできれいに分かれました。口当たりが通常のビールと違うので、ぜひまず飲んでみてください。
書店スタッフEさん 美味しい!カラメルっぽい感じがします。
はい、コーヒーとかいチョコみたいなフレーバーの奥に、焦がしキャラメルみたいな、ちょっと甘い香りもあるので全体的にバランスがとれているというか。ただ単に苦いだけでなく重層的な奥行きがあるビールですね。
こちらに合わせていただくのが、パウンドケーキです。意外なんですけど、合うんですよ。
書店スタッフEさん (大きな声で)うーーーーん!
今日一番大きい「うーん」をいただきました(笑)。
書店スタッフE すっごく(味わいが)華やかになります。何だろう、この中に入ってるフルーツとの相乗効果で、苦みの奥からすごいフレーバーがこう湧いてきて、すごいびっくりしますよ!!(大興奮)初めて食べた味、バターとかが入っているのもいいんですかね?
すごい表現力ですね、もう席を変わってもらおうかな(笑)。本当に私が言いたいこと全部言ってくださったんで…。そもそもスイーツと黒ビールのコーヒーに似た苦みってすごく相性がいいんですね。でもほかにも、麦を焙煎した風味がついてるので、焼き菓子のようにちょっとロースト感があるフードと相性がいい。そしてギネススタウトは他のラガーとかに比べるとやっぱり味が濃いビールなので、やっぱり甘みの強いスイーツや、味わいが濃い料理に合わせてあげることで、バランスがとれます。
そしてこちら、エール系のビールですので、やっぱり他のエールビールと同じくちょっとフルーティーなニュアンスがあります。ですからやっぱりフルーツとの相乗効果になって出てくるっていうのもありますし、さらに口当たりがマイルドというか、炭酸感が非常に優しいので、パウンドケーキの優しい食感を邪魔しないんですね。
なので生地のホロホロ感が口の中でほぼ一体になって、いろんな香りが一緒に口の中に広がるという、面白い組み合わせになります。ギネススタウトは、コンビニで売っているところもあるし、パウンドケーキもコンビニで売っているので、一緒にちょっと合わせていただけたら、すごく面白いかなと思います。
配信イベントのフルバージョンを視聴できる!
今回のレポートは、約2時間の配信イベントの1/3ほどだが、フルバージョンが視聴できる見逃し配信が丸善ジュンク堂書店で販売中だ(2022年6月10日10:00~2023年1月10日)。
今回紹介できなかった残り3キャラクターのビールのペアリングも視聴できる(正直、最大の盛り上がりは今回紹介できなかった最後の部分)。最高の一杯を最短距離で手に入れるヒントがいっぱい詰まっているので、ぜひ視聴してみて欲しい。
「『うまいビールが飲みたい!』刊行記念 家飲みに役立つ!ビールの「うまい」飲み方&ずぼらペアリングのすすめ」見逃し配信はこちら
取材・文/桑原恵美子
取材協力/くっくショーヘイさん
https://www.jbja.jp/archives/author/sato
https://www.instagram.com/shoheisatoh/?hl=ja
丸善ジュンク堂書店
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