2022年度の税制改正により、住宅ローン控除の制度に変更がありました。
旧制度からの変更により、損となるのか得になるのか、改正のポイントをまとめて紹介します。
住宅ローンの控除の改正ポイント
1 住宅ローン控除率の引き下げ、控除期間の見直し
今回の改正の中でも、みなさんの関心が高いのは、住宅ローン控除率の変更ではないでしょうか。
住宅ローン控除制度は、正式には「住宅借入金等特別控除」といいますが、毎年末の住宅ローン残高に応じて、一定割合が所得税額などから控除される制度です。所得税から控除しきれない場合は、住民税から控除することもできます。
これまでの制度では、年末の借入残高の1%が控除されていましたが、その控除率が今回0.7%に改正されています。
会計検査院は、「平成30年度決算検査報告の特色」の「租税特別措置(住宅ローン控除特例及び譲渡特例)の適用状況、検証状況等について」において、「住宅ローン控除特例の控除率である1%を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れている者の割合が78.1%となっている」と指摘しています。
これは、住宅ローンの借入金利が1%を下回っていると、支払利息より控除が上回り、税によって利益が出てしまうことを指摘したものです。
今回の改正は、それを踏まえ、適正な水準にしたものと考えられます。
例えば、年末の住宅ローン残高が3000万円だった場合で比較してみましょう。
従来の場合3000万円×1%=30万円
改正後の場合 3000万円×0.7%=21万円
これまでの制度では、控除率が1%で控除期間10年だと300万円の控除が受けられましたが、控除率0.7%で控除期間13年だと273万円になります。
2 環境性能などに応じた借入限度額の上乗せ
住宅ローン控除の計算のもととなる住宅ローンの借入限度額については、今回の改正では、新築か中古か、さらに対象住宅の省エネ性能によっても細かく借入限度額に差がもうけられています。
なお、省エネ性能の基準を満たさないその他の住宅については、入居年が2024年、2025年の場合には、2023年12月末までに新築の建築確認を受けていないと、住宅ローン控除を受けられなくなりますので、注意が必要です。
3 住民税からの控除限度額の引き下げ
加えて、住宅ローン控除のうち所得税で引ききれなかった分は住民税から控除できることになっていますが、その住民税からの控除限度額が、所得税の課税所得金額などの5%(最高9.75万円)に引き下げられています。
4 所得要件の引き下げ
さらに、控除対象者の所得要件についても、3000万円以下から2000万円以下に引き下げられています。
※その他、床面積要件などにも変更があります。
住宅ローン控除で損をする人、損をしない人
今回の改正を踏まえて考えると、控除率の引き下げ、住民税の控除限度額の引き下げ、控除対象者の所得要件の引き下げと、引き下げが続いていることから、「ほとんどの人が損をするのではないか」と考えてしまう人も多いのではないでしょうか。
確かに、そもそも所得要件を満たすことができなければ住宅ローン控除を受けることができません。今回の改正により、要件から外れてしまう人は損をすることになります。
しかし、国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年)」によれば、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は433万円、給与階級別分布をみると、2000万円超の給与所得者は0.5%(男性0.8%、女性0.2%)となっており、要件から外れる人は少数であると予測できます。
また、平均給与から考えると、住宅ローン控除が所得税、住民税をあわせても控除しきれなかった人も多数いると考えられ、控除額が少なくなっても、控除年数が13年となった方がお得になるケースも考えられます。
以上の点から考慮すると、今回の改正で損をする人は、全体的に所得が高い人に多い印象です。所得が平均的な人や、扶養控除など各種控除が多い人にとっては、それほど影響がない、またはむしろ得になる可能性もあります。
今回の改正により、いくつかの制度で引き下げがあったからと言って、単純に全員が損をするとは限りませんので、安易に惑わされないよう注意しましょう。
引用、参考元:国土交通省ホームページ、財務省ホームページ
※データは記事執筆時点での情報。公開後に制度や内容が変更される場合がありますので、最新の情報についてはホームページなどでの確認をお願いします。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
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文/DIME編集部